有機栽培。この表示で野菜は高くなる。普通の野菜より高価なのだから、とうぜん体に良いと思われるが、どうやらそうでもないらしい。「現在の科学では、有機野菜が普通に栽培された野菜より、人体に大きな好影響を与える、ということは証明できません」、とカリフォルニア州立大学デービス校のクリスティーン・ブルーン氏は言う。
殺虫剤を使わないのは、有機栽培の一条件だが、これも大した意味がないようだ。ブルーン氏によれば、普通に栽培された野菜に付いた農薬は微々たる量であり、米国消費者が農薬のために健康を害している、という事実は無い。
科学的に有機野菜の持つ特別な利点は証明されていないが、野菜だけに限らず、有機食品の売上が上がっている。マーケット・リサーチ・ドット・コムからのデータを紹介しよう。2004年、有機食品の総売上は154億ドルにのぼり、2003年の128億ドルを20%上回った。更に、マーケット・リサーチ・ドット・コムによれば、2009年の売上は323億ドルに達することが予測される。
現在アメリカには、3つの有機食品シールがある。もし野菜に「100%有機栽培」のシールが貼られていれば、これは2002年、農務省によって定められた条件を全て満たしている。100%が抜けて、単に「有機栽培」なら、95%の条件が揃っている。95%未満、70%以上なら「有機食品原料使用」、のシールが貼られる。
コンシューマリポーツ誌の調べによると、有機食品は普通の食品より50%高い。なぜこんなに割高になるのだろうか?もう10年以上も昔になるが、環境を破壊しない農業が、有機野菜誕生の発端になった。殺虫剤を使用しないだけなら事は楽だが、栽培用の土や肥料も自然なものを使わなくてはいけないから手間がかかるわけだ。
格べつ体に良いわけでないなら、有機食品を無理して買う必要はあるのだろうか?「フルーツや野菜は、有機栽培されたからといって栄養分が優れていることはありません。普通に栽培された野菜も、有機野菜と同等です」、と米国栄養士会のキャサリーン・タルマッジ氏は言う。マサチューセッツ大学のファーガス・クライズデール氏を引用しよう。「有機食品を絶賛する根拠はありません。しかし、有機食品で気が休まるのでしたら買うことを止めません。」
人体に与える悪影響ではないが、有機食品はこんな弊害を起こしている。有機食品イコール健康食品のイメージが定着し始め、低所得家庭の主婦たちが後ろめたさを感じているようだ。子供のために、体に良い有機食品を買ってあげたい。しかし、有機食品ばかりで食卓を飾ったら家計がなりたたない。
ブルーン氏の言葉を付け加えよう。「有機食品を買えないことに、罪悪感を感じる必要はありません。普通の食品で十分であることを知ってほしいと思います。有機栽培の欠点は、定められた厳しい栽培方法が逆効果になっています。例えば、遺伝子の組み換えです。この組み換えを取り入れさえすれば、作物から自然に発生する毒素を、大幅に減らすことが可能になります。」 どうやら有機食品は、あまりに自然という言葉にこだわりすぎるようだ。