野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。これを逆にすれば、皆が強気なら買うな、ということになる。正にそれを実証することが起きた。
棒上げ状態だった天然ガスが、ここ一ヶ月で40%以上の暴落になった。2005年8月と9月、アメリカを襲ったハリケーン・カトリーナとリタは、メキシコ湾岸州に大きな被害を与えた。これは天然ガス生産量を16%減少させる結果となり、12月3日、天然ガスは100万英サーマルユニットあたり15ドル78セントの新高値を記録した。
今月12日、天然ガスは8ドル90セントで取引を終了し、去年7月以来の安値となった。だが、一年前の同時期と比較すると、まだ3ドルほど高い位置にある。「メキシコ湾岸の大打撃がありましたが、最悪な事態は避けることができました」、とファースト・エネキャストのアグベリ・アメコ氏は言う。季節外れな暖かい気候が備蓄量の不安を無くし、これが天然ガス売りの一因になった。
実際に発表された数字を見てみると、12月30日現在、天然ガス備蓄量は10億立方フィート上昇という、冬には考えられない伸び方だった。ティム・エバンス氏(IFRマーケット)の話によれば、1年前の同時期の備蓄量は880億立方フィートの下げ、5年前はなんと1280億立方フィートの大幅減になったという。
こんな状況に関係なく、家庭用暖房費は4割近い値上がりだ。暖冬異変で、あまりヒーターを使わないのだから、4割高は許せない、という声も聞こえてくる。「先物市場価格が、消費者の暖房費に反映されるには時間がかかります」、とガス会社は説明しているが、皆あまり納得できないようだ。
「よほどの寒波に長期間襲われないかぎり、天然ガスは6ドルに向かって下げて行くでしょう」、とアナリストのマイケル・アームブラスター氏は言う。更にグランディック・パブリケーションズのピーター・グランディック氏によれば、トレーダーたちはそろそろガソリンに焦点を合わせるため、天然ガス相場は既に終わっている、という見方をしている。
ここで、また上の言葉に戻りたい。野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。弱気ムードが漂う天然ガス市場。ここで買っている人たちは、どんな根拠があるのだろうか。理由はハリケーンだ。2006年も去年と同様に、多くのハリケーン発生が予報されている。どちらにしても、天然ガスの運命は天候が握っているようだ。