江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ、と言われたが、金ばなれのよさならアメリカ人も負けない。2005年、米国消費者は収入以上の金を使った。貯蓄率0どころではなく、マイナスに落ち込んだわけだが、こんな事が起きたのは大恐慌時代が最後というから、もう70年も昔の話だ。
何故こんなに威勢良く金を使えたのだろうか。理由は低金利、住宅ローンの借り換え、そして急騰する住宅価格の三つだ。低金利だから、クレジットカードの利子は気にならない。住宅の値段は面白いように上がるから、ローンの借り換えをして、簡単に現金を手に入れることができる。もちろん、それらは既に過去の話となった。連銀による、13回連続の金利引き上げ。不動産ブームも去り、もはや住宅は自動現金引き出し機ではなくなった。
こんな状況だから、今年消費者から去年のような金の使い振りを期待するのは無理だ。となると、誰かが消費者の代わりに大きく金を使わないといけない。連邦政府にそれを期待できるだろうか。膨大な財政赤字を抱えるアメリカだから、まずそれはありえない。それなら、連銀から助けが来るだろうか。火曜に発表されたFOMC議事録には、金利引き上げサイクル終了が近いことが記されていた。しかし、まだあと数回の利上げが予測されているから、今年の中頃まで金利上昇は止まりそうにない。
消費者、連邦政府、連銀があてにならないなら、はたして企業はどうだろうか。大胆な設備投資などで、米国経済を成長させてくれるだろうか。エコノミスト、アーウィン・ケルナー氏は、こんな見方をしている。「去年の9月だったと思います。多くのアナリストが、2006年度は企業からの支出が大きく伸びるため、消費者の低迷は気にすることはない、といった意見を発表しました。本当にそうでしょうか。
企業の支出だけでは、消費者と住宅セクターをカバーすることはできません。アメリカのGDP(国内総生産)の3/4は、住宅セクターと個人消費が占めています。企業支出は、たった11%にすぎません。忘れてはいけないのは、企業が必要な機器や装置を買うのは海外からです。ですから、GDPには何の影響もおよぼしません。」
そして、ケルナー氏はこう付け加える。「常識的に考えてみてください。消費者が節約を始めたら、どんなことが起きるでしょうか。物を買わなくなるのですから、企業の収益は上がると思いますか、それとも下がると思いますか。」こんなことを聞かされると、投資資金はますます米国市場から逃げて行きそうだ。