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適切な言葉を選ぶ重要性

あまり物事をはっきり言い過ぎると大変なことになる。いったん口から飛び出た言葉を、引っ込めることはできない。これが株と何か関係あるのだろうか。投資心理研究の第一人者として知られる、ブレット・スティーンバーガー氏の意見を紹介しよう。

「たとえ言論の自由なアメリカでも、言ってはならことがあります。たとえば、あなたが住宅を買おうとしているとしましょう。間違っても、不動産セールスマンに、こんなことを言ってはいけません。「周囲に黒人家族が住んでいる所は困る。最近アメリカに来たばかりの、移民者の多い場所もご免だ。上流階級の白人だけが住んでいる場所で物件を探してほしい。」これでは、あなたが単なる人種差別主義者であることを告白しているだけです。

ですから、あなたは不動産セールスマンに、こう頼むべきです。「極めて治安の良い、安全な地域で家を探してください。子供の教育はとても重要ですから、家の近くには優秀な先生が揃った、トップクラスの小学校があることも条件に入れてください。」これで、ほぼ確実にあなたの求めている住宅が購入できることでしょう。

もう一つ例を挙げましょう。小学校3年生のあなたの息子が、学校で6年生から嫌がらせを受け、つかみ合いの喧嘩になりました。その結果あなたの息子は、6年生の顔面にパンチをあびせて、前歯を一本折ってしまいました。さっそく担任の先生から、あなたは学校に呼び出されます。その時、間違っても、あなたはこんなことを言ってはだめです。「私は息子を、真の男になれるように教育している。上級生と喧嘩して勝った息子を、私はとても誇りに思う。」

あなたは嫌でも、黙って担任の先生の言うことを聞かなくてはいけません。そして、もう二度とこのようなことを起こさないように、家に帰ったら息子を厳重に注意する、と約束するべきです。もちろん、家に帰ったら息子にニッコリと微笑んであげれば、それで十分です。

株や先物トレードにも、同様なことがあてはまります。ある為替トレーダーから相談を受けた時のことです。中々利益を上げることができない、と言うので私はこう質問しました。「ニューヨークとロンドンの寄付き直後を比較した場合、損が出ているのはどちらの方ですか?」

これは相手を侮辱する、最低な質問でした。このトレーダーの回答が、「私はニューヨークの時間帯だけでトレードしている」、というものだったから、私の質問が間違っていたわけではありません。結果的には、私の質問は全く質問ではなく、私の意見を明確に言っただけにすぎなかったのです。

為替トレーダーは、私の質問をこう解釈したはずです。「為替トレードで成功するためには、ニューヨークとロンドンの両方の時間帯でトレードする必要がある。」現に、この相談の後、二度とこの為替トレーダーから電話がかかってくることはありませんでした。」

損が続くと、どうしても悩んでしまう。そんな時こそ、自問自答する言葉は慎重に選ばないといけない。どうやったら適切な言葉を、自分に発することができるだろうか?スティーンバーガー氏は、次の原則をいつも頭に入れておくことを推薦している。「苦しんでいる時は、常に慰めになる言葉を選び、有頂天な時は、戒めの言葉を選ぶことです。」これを聞いたら、有名なセリフを思い出した。「タフじゃなければ生きていけない。しかし、タフなだけでは生きている資格がない。」

息を呑むマーケット関係者

これだけ材料があれば、一波乱あってもおかしくない。マーケット関係者には、忙しい一週間になりそうだ。最大の関心事は、火曜(31日)にやってくるFOMC(連邦公開市場委員会)だ。14回目の金利引き上げになることは誰も疑わないが、会議後の声明文が徹底的に分析されることだろう。

先週金曜に発表された、第4四半期米国GDP(国内総生産)は、予想に満たなかっただけでなく、ここ3年間で最低の成長率、+1.1%だった。さっそく財務長官、ジョン・スノー氏はこう記者団に語った。「発表されたGDPは、2005年度の強い米国経済が、正確に反映されていないようです。今回の数値を、あまり重要視するのは間違いです。第4四半期だけに限られた特殊要因が、GDPを下落させたと思われます。」

スノー氏ほど楽観的でない、バーナード・バウモール氏(エコノミック・アウトルック・グループ)の意見を紹介しよう。「2005年の最終段階で、アメリカ経済は大きく減速しました。引力の法則は健在です。米国消費者は、大きな借金を抱えています。上昇する金利、高いガソリンやオイルが好影響であるはずがありません。おまけに、消費者の貯蓄率は0です。GDPが下がって当然です。」

一方、金曜のマーケットは弱いGDPニュースを歓迎した。ダウ指数は+0.90%、ナスダック指数+0.93%、そしてS&P500指数は+0.78%だった。米国経済の失速は、金利引き上げを完全に終了させる、と解釈したわけだ。「予想を下回ったGDPに、投資家たちは歓声をあげました。1月31日の利上げが、金利引き上げサイクルに終止符を打つ可能性があります」、とJPモルガンのアンソニー・チャン氏は言う。

GDPが衰えた原因は何だろうか?自動車と航空機の不調が、一番のマイナス材料となったようだ。ボーイング社でのストは航空機発送を遅らせ、社員割引の廃止は自動車の売上を大幅に後退させた。「自動車業界が不調なことは、別にめずらしいことではありません。意外だったのは、政府があまり軍事関連物資を購入しなかったことです。イラクでの戦争が終わりになり、政府は軍事費の調整をしているようです」、とエコノミストのデービッド・ワイス氏は述べている。

アナリストたちの、もう一つの見方を付け加えておこう。「+1.1%のGDPは無視です。それは既に去年の話です。31日のFOMC(連邦公開市場委員会)ばかりが注目されていますが、今週の金曜には雇用統計が発表されます。暖かい冬の影響もありますが、強い雇用状況が明瞭になることでしょう。結局またインフレ懸念がマーケットに戻り、投資者たちは失望することでしょう。31日のFOMCで、金利引き上げが最後になることはありません。」今週の相場は荒れそうだ。

「心配で眠れない夜が続いています」、と語るのはナイト・キャピタル・グループのラルフ・アカンポラ氏だ。ベテランアナリストとしてファンの多い氏だが、今年ダウ指数は、20%の大幅下落になる可能性があると言う。悲観論者が少ないだけに、さすがにアカンポラ氏の意見は目立つ。ほとんどのアナリストの見方は、次の三人に要約される。ゴールドマン・サックスのアビー・コーエン氏、シティ・グループのトビアス・レブコビッチ氏、そしてリーマン・ブラザースのヘンリー・ディクソン氏は、それぞれ+10%という今年のマーケット成長率を予測している。

少数派のアカンポラ氏に賛成するのは、スタンダード・アンド・プアーズ社のマーク・アーベター氏と、モルガン・スタンレーのリック・ベンシグナー氏だ。アーベター氏は、10%から20%の下げを予想し、ベンシグナー氏は今年の中頃に大きな下げがやって来る、と強調する。

ベンシグナー氏、アーベター氏、そしてアカンポラ氏の三人に共通する点は何だろうか?答えは、三人ともテクニカルアナリストだ。古い言い方をすれば罫線師、ということになる。テクニカルアナリストは、ファンダメンタルアナリストのように、収益、売上、キャッシュフローといったことを一切考慮しない。テクニカルアナリストにとって重要なのは、株や指数の値動き、出来高、移動平均線、そしてストキャスティクスなどのオシレーターから得られる情報だ。

楽観的なファンダメンタルアナリスト、悲観的なテクニカルアナリスト。はたしてどちらが正しいか、ということは問題にならない。皆が強気な時に、アカンポラ氏のような意見は貴重だ。ひょっとしたら、テクニカルアナリストの言うことは本当かもしれない。そんな疑問が投資者の中に芽生えれば、次の買いにもっと慎重になるはずだ。

テクニカルアナリストが活用する一つに、周期(サイクル)がある。今年、特に注目されているのが、大統領選挙サイクルだ。大統領の任期二年目は、米国株式市場が低迷する傾向がある。今年、ブッシュ大統領は二期目の二年目を迎える。1970年以来、1986年を除いて、任期の二年目はいつも株が下がった。1962年、1974年、そして2002年にベアマーケットが訪れたが、これも大統領任期の二年目だ。

もう一つサイクルの例を挙げよう。上げ相場が始まったのは2002年の10月だから、既に39カ月が経過している。そろそろ終わりが来てもおかしくない頃だ。なぜなら、大二次世界大戦以来、平均的なブルマーケットは39カ月で幕を閉じている。「最近のマーケット内容は悪化しています。新高値、新安値を記録した銘柄数を二年前と比べてみると、マーケットは明らかに上げ基調の最終段階に入っています」、とアーベター氏は言う。

ボラティリティ指数という、マーケットと正反対の動きをする指数がある。現在の数値は12.4を示し、過去13年間を振り返ると、こんなに低いレベルに達することは滅多にない。投資者たちが安心しきり、マーケットが天井近辺にある時ボラティリティ指数は極めて低い数値を示すから、ここからの積極的な買いは控えた方が良い、というのがテクニカルアナリストの見解だ。

よく眠れない、と心配するアカンポラ氏だが、こんなことを付け加えている。「今年中に起きる大きな下げは、マーケットを4年来の安値に落とすことでしょう。しかし、そこが最高の買い場になります。とにかく今はあまり動かないで、十分に資金を蓄えてください。」なるほど、アカンポラ氏は短期的な弱気論者だが、長期的には強気な姿勢だ。

「桐一葉、落ちて天下の秋を知る。読者よ、二年有半に亘っての進撃一路から退却の時期は近づいた。」これは昭和28年2月11日、独眼流の異名を持つ石井久氏(江戸橋証券創立者)が株式新聞に載せた警報だ。強気な独眼流が、ごく少数意見の弱気に転じた。さすがに当たり屋の相場観だけに、完全に無視することができなかった。まるで氏の記事がキッカケになったようにマーケットは下げ始め、3月5日、東京市場はスターリン暴落に襲われた。

話をアメリカに移そう。「金持ち父さん貧乏父さん」の著者、そして不動産投資第一人者として知られるロバート・キヨサキ氏は、2005年夏、米国不動産冷えこみを警告した。株のような急落は無いが、水曜に発表された中古住宅販売数はアナリストの予想に満たなかっただけでなく、3カ月連続の下落となった。キヨサキ氏が住宅市場を低迷させた犯人とは思わないが、不動産セールスマンから「商売の邪魔をするつもりですか!」、と非難のメールが殺到したそうだ。

火曜日、キヨサキ氏はこんなことを語っている。「値段が上がっているから買おう、と不動産投資家は言います。ようするに、値段の動きに焦点をおいているわけです。ここで考えてほしいことがあります。デパートに行ったとしましょう。商品はどれもこれも値上がりしています。よし、高くなっているから買おう。あなたはそんな判断をするでしょうか?

他の例を挙げましょう。あるスーパーマーケットが、全商品25%割引セールを実施しました。店内は買い物客で大混雑です。しかし、不動産や株式市場が25%割引セール(一般的には暴落と呼ばれる)をすると、買い手はほとんど現れません。

私の推測ですが、投資者の90%は値動きだけに注意を払い、肝心な価値を考慮していません。これは「大馬鹿理論(より馬鹿論)」です。説明しましょう。20万ドルで物件を買ったとしましょう。もちろん、儲けることが目的ですから25万ドルで売ることを計画します。不動産市場は割高ですが、投資者の全てが賢いわけではありません。ですからあなたは、物件を25万ドルで買ってくれる愚か者を待つわけです。

不動産市場が暴落するなら、それは絶好の買いチャンスです。売り手はとにかく物件を処分することだけに集中しますから、物件の価値などまるで頭にありません。完全に捨て鉢状態ですから、買い手はかなり有利な条件で、きっと正当評価額以下で物件を手に入れることができるはずです。暴落は大衆を強烈な悲観論者に変えますが、こんな時に買う勇気を持つことが重要です。

私は今、1990年代の終わりに、金を1オンス275ドルで買ったことを思い出しています。アナリストは、金をゴミ扱いしていました。しかし現在、金は500ドル以上で取引されています。興味深いことに今日、同じアナリストたちは口を揃えて金投資を推奨しています。」

値動きではなく、価値を重視しろ、というキヨサキ氏だが、氏は更にこう付け加える。「ウォーレン・バフェット氏は、潮が引いた時、だれが裸で泳いでいたかが分かる、と言います。それが現在のアメリカ不動産状況です。既に下降が始まっていますが、まだ多数の投資者が裸で泳ぎ回っているようです。」

注:江戸橋証券は現在、立花証券として営業している。

情報量と判断力

コーラは何種類あるかご存知だろうか?コカコーラとペプシコーラの二つだけで十分だ、と言う人もいるが、フール・ドット・コムのロビン・ギーリー氏によれば、世の中には少なくとも20種類以上のコーラがある。ここで疑問になるのは、選択肢の数と売上だ。

実際にこんなテストが、カリフォルニア州のスーパーマーケットでおこなわれた。一口にジャムと言っても、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、と色々ある。そこでこのスパーマーケットは、日によって販売するジャムの種類数を変えてみた。ある日には6種類のジャムを棚に並べ、ある日には24種類のジャムを置いた。

結果はどう出ただろうか?6種類だけ販売した日と、24種類を販売した日を比べたら、ジャムの売上が良かったのはどちらの日だろうか?24種類は、圧倒的に6種類の選択数を上回っている。豊富な選択数は、ジャムの売れ行きに好影響となっただろうか?

6種類だけ並べた日には、店を訪れた36%の客がジャムを買った。24種類が置かれた日は、買い物客のたった3%がジャムを買った。多種類のジャムを取り揃えることは、売上にはマイナスだったわけだ。ブリンクの著者、マルカム・グラッドウェル氏はこう説明する。「あれもこれもと選択肢が多すぎると、私たちは適切な判断ができなくなります。大量な情報は私たちの判断能力を麻痺させ、けっきょく何も選択せずに終わってしまうのです。」

現在アメリカには、7000種類のミューチュアルファンドがある、とロビン・ギーリー氏は言う。7000!?豊富どころか、これでは種類が多すぎて、どれに投資するべきかが分からない。正に判断能力の麻痺だ。一々丹念に調べていたら、どんなに時間があっても足りない。7000、本当に恐れ入る数だ。

情報の集めすぎは株投資にも悪影響だ。よくこんな話を聞く。「O社の収益はここ6カ月で30%も上がっています。新製品の売上は絶好調ですし、来年はヨーロッパに進出するようです。現在の株価ですが、月足チャートはまだ下げ基調です。週足は上げ基調ですが、日足チャートは横ばいです。60分足チャートにも大したトレンドは見れませんが、15分足チャートは素晴らしいアップトレンドです。」これでは迷ってしまう。

チャート分析について、一つ付け加えておこう。アレキサンダー・エルダー氏は、著書「投資苑」の中でこう注意している。「5分足、30分足、日足、月足、と多くのチャートを見てはいけません。分析ばかりに時間をとられ、肝心なトレードができなくなってしまいます。使うチャートは2つで十分です。日足で売買する人は日足と週足の組み合わせ。5分足のトレーダーなら、その5倍にあたる25分足でトレンドを確認します。」やはり、物事シンプルな方が分かりやすい。

米国消費者の知恵

毎週日曜だけ、ロサンゼルス・タイムズを買う人たちがいる。記事を読むためではなく、大量に折り込まれている広告が目当てだ。10ページ、20ページなどという半端な広告ではない。朝日新聞(朝刊)を10部くらい重ねた厚さだから、ロサンゼルス・タイムズの日曜版は、バラバラにならないように、しっかりと紐で結えられている。

これだけの広告量だから、一通り見るだけでも結構な暇つぶしになる。真剣な人たちは、単に目を通すだけでなく、広告に付いているデパートやスーパーマーケットの割引券を切り取るから、正に半日作業になるらしい。国は違っても、良い品物を安く手に入れたい消費者心理は、日米共々変わりは無い。

あの店が安い、という場所情報も重要だが、もう一つ覚えておきたいのが「いつ」に相当する時間的要素だ。株を例にすれば、良い銘柄でも買いのタイミングが遅れてしまえば利益が減ってしまう。それと同様に、電気製品も間違った日に買うと割高になる。ここで賢い米国消費者が語る、正しい買い物のタイミングを紹介しよう。

航空券:安い航空券を見つけるのは意外と手間がかかる。割引航空券専門のウェブサイトも多いが、出発日や時刻を変えるだけで料金も大きく動くから、なかなかおいそれと思ったような航空券が手に入らない。しかし、そんな悩みも水曜日に航空券を買うことで解決することができる。

アメリカの航空会社は、毎週水曜に空席状況を発表するため、チケットを買うなら水曜が一番良いようだ。また、航空券は少なくとも出発の2週間以上前に買う方が割安になる。最も割高になるのは、出発日の14日から7日前になるから、もし2週間前に購入が不可能ならギリギリになるまで待った方が良い。

テレビ:クリスマスなどの大きな休日前にテレビは安くなる傾向があるが、アメリカでテレビを買うなら4月だ。なぜ4月なのだろうか?テレビと言えば「ソニー」が最高、と思っている人が多いだけに、日本製品に対する信頼度が高い。日本企業の営業年度は3月で終わるところが多く、4月から新型テレビが発売される傾向がある。そのため4月には、旧型テレビが安売りされることになるわけだ。

オモチャ:これもクリスマスシーズンに安売りされるが、Eトイズ・ドット・コムのシリア・ギランド氏によれば、子供にオモチャを買うなら8月だ。夏本番の8月にはオモチャが安くなる。水鉄砲、浮き袋、水中メガネ、玩具店ではプールに関連した品物を中心に売上アップを狙うから、店のスペースを空けるために他のオモチャが大幅割引になるようだ。

日本でテレビを買うのも、アメリカのように4月が最適なのだろうか?

勝利、敗北、ブレイクイーブン。30年のトレード経験、そしてシカゴ商品取引所メンバーとして活躍したジョン・モールディン氏は、こんなことを語っている。「トレードで最も大切なことは、自分で決めたルールに従って売買することです。損をするのは、いい加減な理由をつけてルールを破るからです。」さっそくモールディン氏の、トレードルールをいくつか紹介しよう。

ルール1:どんなことがあっても、損が出ているポジションの買い増し、売り増しをしないこと。

「投資資金を無くす確実な方法は難平買いです。買い足しをして損失を平均化し、回復しようとする。もっともらしい理論ですが、これは先ず成功しません。そんなに簡単に損が取り戻せるなら、ロングターム・キャピタル・マネージメントが破綻することはなかったでしょう。

どうしても買い増しをしたいなら、儲けが出ているポジションだけに限ることです。株価が上がる度に買っていくのです。永久に上昇することはありませんから、一番最後に買った株に損が出たら、持ち株を全て処分するのです。この買い足し方法は、売りのタイミングを知るのに役立ちます。」

ルール2:傭兵になれ。

「買いばかりに固執したり、売りだけに徹する必要はありません。トレーダーは金で雇われた傭兵です。強い方に付けば良いのです。状況が変わり、自分が不利になったら、早々に相手側に乗り換えることが肝心です。ジェシー・リバモアも、強気弱気を主張するのではなく、勝者はどちらなのかを見極めることの重要性を指摘しています。」

ルール3:安く買って高く売ることを目標にしてはいけない。

「高く買ってより高いところで売る。それが正解です。割安割高などとよく言われますが、いったい何が根拠になるのでしょうか?好例を挙げましょう。ノーテルは1980年代たった1ドルでしたが、2000年90ドル弱まで上げました。当たり前ですが、90ドルに到達するには、10ドル、30ドル、50ドルを通過する必要があります。高いものが更に高くなっていったわけです。私達には、適切に割高割安を判断することはできません。」

ルール4:ブルマーケットでは買いに徹せよ。ベアマーケットなら売りに徹せよ。

「急激な上昇の後、持ち株を処分し直ぐ空売りを試す人がいます。しかし、ブルマーケットでそんなことをするのは危険です。高値圏で揉み合い、更なる上昇になることが多いですから、いきなり空売るのではなく、一時的に中立姿勢の立場をとることが大切です。既に述べたように、私達に正確な割高判断はできません。マーケットはいつも行き過ぎになるものです。高いものはもっと高くなり、安いものは更に安くなります。」

ルール5:トレード方法は簡単で分かりやすいこと。

「難しい理論を応用したトレード方法が脚光を浴びますが、トレード方法は簡単なものほど役にたちます。複雑な方法は、トレーダーを迷わせる原因になります。しかし、簡単明瞭な手法なら的確な判断が素早くできます。ある有名なトレーダーは、抵抗線と支持線を使うだけで確実に利益を上げています。多額な金を払って、分かりにくいトレードソフトを買う必要はありません。エレガントなトレードは、簡単な手法だけが可能にします。」

二つの心配事

一月の相場は強い。しかし、金曜の株式市場は投資者たちを大きく動揺させた。ダウ平均は213ドル(1.96%)の下げとなり、今月の上げ幅を吹き飛ばしただけでなく、マイナスに転落してしまった。出来高は50日平均を35%上回り、単なる利食いというよりも狼狽売りだ。

何故こんな下げ方をしたのだろうか?上昇するオイルが原因だ、という意見があるが、下の日足チャートを見てほしい。

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オイル指数だが、たしかに急騰するオイル価格と同様に上げが続いていた。しかし、注目は金曜の引け方だ。瞬時高値を記録したが、失速してしまった。ローソク足の実体はほとんど無く、上に長く伸びた尻尾が目立つ弱気な形だ。イランやナイジェリア情勢、それにテロなどのニュースに大きく左右されるオイルだが、この終了を見るかぎり月曜には利食いがありそうだ。

もし本当に月曜からオイルが下げたとしよう。株式市場には好材料だが、問題はオイルの押し目買いを狙う投機家だ。乗り遅れた人たちは、十分な下げを待つことができるだろうか。浅い修正で積極的な買い手が登場なら、株式市場の回復に水を注されてしまう。どちらにしても、オイル市場の監視が必要だ。

もう一つ気になるのは、マーケットリーダーが崩れてしまったことだ。株式市場には、いつも牽引車が存在する。これが叩かれてしまえば、自然と他銘柄へ被害が広がって行く。リーダー株、グーグルが投げられてしまった。約9%の極端な下げだ。下は日足だが、サポートレベルだけでなく、心理的に重要な400ドルを割ってしまった。

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ブレイクダウン、そしてパニック売りの見本チャートだが、グーグルに関する気がかりな報道があった。ご存知のように、グーグルはサーチエンジンだ。だから多数の人々が訪れて、車、音楽、不動産、スポーツ、映画、と多岐多様なテーマが検索される。

いったい誰がどんなことを検索しているのだろうか?もし政府に、あなたがグーグルで何を調べているかが筒抜けなら、それでもグーグルを使うだろうか?ブッシュ政権は、グーグルに召喚令状を発した。ユーザーたちが、何を検索しているかを司法省に報告しろ、というものだ。プライバシーの侵害を理由に、グーグルはブッシュ政権の要求を受け入れる意思がないことを、早速発表した。

プライバシーが侵害されてしまっては、言論情報の自由が脅かされてしまう。違反ポルノを取り締まることが、今回の召喚令状という運びになったようだから、政府側の言い分も理解できる。既にブッシュ大統領は、テロ対策の一手段として、裁判所の許可無く電話盗聴をしていたことが問題になっている。これも米国の安全にかかわることだから、プライバシーの侵害とはいえ、大統領を100%悪いと言うことはできない。悲しいことだが、少数犯罪者のために国民からプライバシーが奪われてしまったようだ。

フール・ドット・コムのリチャード・ギボンズ氏によれば、大投資家ウォーレン・バフェット氏には、二つの鉄則があるという。第一は、決して損を出さないこと。二番目のルールは、第一のルールを守ることだ。このやり方でバフェット氏は400億ドル以上の利益を手に入れたが、損を出すなと言われても、具体的にはどうしたらいいのだろうか?

ギボンズ氏を引用しよう。「人々はバフェット氏がこれを買った、あれを買ったと話題にします。資金を減らさないためには、バフェット氏がどんな株を避けるかを探る必要があると思います。」というわけで、バフェット氏が嫌う銘柄の共通点をいくつか見てみよう。

1、一か八かに賭ける企業:業績の向上を狙って、無謀な博打にでる企業がある。当たれば満塁ホームランになるが、失敗なら会社は大打撃を受ける。例はボーイング社だ。ライバルのエアバス社は、スーパー・ジャンボ機を発表した。既に150機の注文を受け、好調なスタートを切った。一方ボーイングは市場調査の結果、小型機787製造に踏み切った。もし、この判断が間違いなら、ボーイングの収益は極端な減少になるだろう。

2、研究開発だけに頼る企業:好例はボーランド・ソフトウェアだ。90年代、Turbo Pascal、Paradox、dBase、それにQuattro Proの開発で脚光を浴びたボーランドだが、マイクロソフトが全てを変えてしまった。現在もボーランドは存在するが、15年前の面影は無い。対照的なのが、大手小売のコストコ・ホールセールだ。ディスカウント店だから、研究開発などしないが、今日も快調なビジネスを展開している。

3、巨額な債務を抱える企業:大量な負債があったのでは、現金を有効に使うことができない。債権者への支払いが優先され、配当金など期待できない。最悪な場合は倒産だ。

4、不審な経営陣:株主を犠牲にして、自分たちの利益だけを求める経営者なら、そんな企業に投資してはいけない。分かりやすい例は破綻したエンロンだ。あなたが投資する企業に、次のようなことが顕著なら警戒した方がいい。いつもバラ色なニュースばかりを発表する。経営陣のボーナスやストックオプションが、同業種企業と比較すると破格に良い。収益が減ると、その理由はいつも外的要素であり、自社には何の落ち度も無いことを主張する。

5、常に資本投資が要る企業:代表的な例はエネルギー会社だ。新しい油田を求めるオイル会社は、掘削機などの設備投資が絶えず必要になる。コノコフィリップスは2004年、95億ドルを設備投資にあてた。これは5年間で51%も上昇している。最近のオイル高で設備投資が話題にならないが、オイル価格の下落が始まれば状況は一変だ。もうひとつ、半導体企業も頻繁な資本投資を要求されることを付け加えておこう。

経営者が語る黄金律

トップ経営者として活躍するビジネスマンたちは、どんな人生哲学を持っているのだろうか?業界をリードする49人の信条が、ビジネス2.0誌に載っている。早速いくつか紹介しよう。

ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイ、最高経営責任者):大投資家として知られる氏は、毎日こんなことを心がけている。「朝、目を覚ましたら、今日は何をしたいかを直ぐ考えることです。そして、今日自分のしたこと全てが、明日の朝刊に載ると想定してください。きっと違った生き方ができることでしょう。」

アンディ・グローブ氏(インテル、最高経営責任者):「被害妄想の無い経営者は生きのびることができない。これが私の信じている言葉です。ようするに、マーフィーの法則です。うまく行かなくなりうるものは何でも、うまく行かなくなる。これが基本ですから、被害妄想無しで企業経営はできません。」

リチャード・ブランソン氏:「部下が失敗したら、第二のチャンスを与えよ、をモットーにしています。企業のリーダーとして成功するためには、どうしたら部下たちの能力をフルに発揮させることができるかを、常に考える必要があります。失敗を一番悩むのは、失敗した本人です。上司は必要以上に、部下の失敗を責めてはいけません。

私にはこんな思い出があります。たしか7才か8才の頃です。父親の机から盗んだ金を持って、近くのキャンディー屋に行きました。しかし、不審を感じた店主に捕まってしまい、父親が店によばれました。「息子さんが、こんなに沢山のお金を持ってきましたが、本当にあなたがあげたのですか?」これを聞いた父は怒りました。もちろん、私が盗んだことは承知です。「あなたは人の息子を泥棒呼ばわりする気ですか!」その後、私は二度と盗みをしたことがありません。」

ジェラルディーン・レイボーン氏(オキシジョン・メディア、会長):氏の信条は、「競争相手の成功を妬むな」だ。「テレビ業界は、いつも他のネットワークのことを気にしています。高い視聴率を上げるには、ヒット番組が必要です。ある番組が他のチャンネルで大人気だからといって、似た番組を制作しても失敗するだけです。私もそれで痛い目にあっています。競争相手を調べるのは、どこに盲点があるかを探るためです。相手の真似をするためではありません。」

ポール・プレスラー氏(ギャップ、最高経営責任者):「自分の直感を信じろ。この大切さを伝説的なビジネスマン、バーニー・ルミス氏から学びました。ルミス氏も他の経営者のように様々な情報を検討するのですが、時々ルミス氏が会議で下す最終判断は、皆の意見と正反対なのです。何故あのような決定をしたのですか?会議後、そんな質問を氏にすると、「直感だ」、の答えが返って来ました。私は優秀なアドバイザーの意見をいつも聞いていますが、最終的な判断は自分の直感が決め手です。」

クレッグ・ニューマーク氏(クレッグズリスト、創立者):「間違いを全て同様にあつかってはいけない。それが大切です。人から間違いを指摘されたら、すぐ否定してはいけません。会社を始めた頃ですが、私は不適格な人たちを雇ったために、とても苦しい思いをしたことがあります。自分に経営能力が欠けていることを痛感しましたが、おかげで優秀な最高経営責任者を雇うことができました。」

有機食品を買う理由

有機栽培。この表示で野菜は高くなる。普通の野菜より高価なのだから、とうぜん体に良いと思われるが、どうやらそうでもないらしい。「現在の科学では、有機野菜が普通に栽培された野菜より、人体に大きな好影響を与える、ということは証明できません」、とカリフォルニア州立大学デービス校のクリスティーン・ブルーン氏は言う。

殺虫剤を使わないのは、有機栽培の一条件だが、これも大した意味がないようだ。ブルーン氏によれば、普通に栽培された野菜に付いた農薬は微々たる量であり、米国消費者が農薬のために健康を害している、という事実は無い。

科学的に有機野菜の持つ特別な利点は証明されていないが、野菜だけに限らず、有機食品の売上が上がっている。マーケット・リサーチ・ドット・コムからのデータを紹介しよう。2004年、有機食品の総売上は154億ドルにのぼり、2003年の128億ドルを20%上回った。更に、マーケット・リサーチ・ドット・コムによれば、2009年の売上は323億ドルに達することが予測される。

現在アメリカには、3つの有機食品シールがある。もし野菜に「100%有機栽培」のシールが貼られていれば、これは2002年、農務省によって定められた条件を全て満たしている。100%が抜けて、単に「有機栽培」なら、95%の条件が揃っている。95%未満、70%以上なら「有機食品原料使用」、のシールが貼られる。

コンシューマリポーツ誌の調べによると、有機食品は普通の食品より50%高い。なぜこんなに割高になるのだろうか?もう10年以上も昔になるが、環境を破壊しない農業が、有機野菜誕生の発端になった。殺虫剤を使用しないだけなら事は楽だが、栽培用の土や肥料も自然なものを使わなくてはいけないから手間がかかるわけだ。

格べつ体に良いわけでないなら、有機食品を無理して買う必要はあるのだろうか?「フルーツや野菜は、有機栽培されたからといって栄養分が優れていることはありません。普通に栽培された野菜も、有機野菜と同等です」、と米国栄養士会のキャサリーン・タルマッジ氏は言う。マサチューセッツ大学のファーガス・クライズデール氏を引用しよう。「有機食品を絶賛する根拠はありません。しかし、有機食品で気が休まるのでしたら買うことを止めません。」

人体に与える悪影響ではないが、有機食品はこんな弊害を起こしている。有機食品イコール健康食品のイメージが定着し始め、低所得家庭の主婦たちが後ろめたさを感じているようだ。子供のために、体に良い有機食品を買ってあげたい。しかし、有機食品ばかりで食卓を飾ったら家計がなりたたない。

ブルーン氏の言葉を付け加えよう。「有機食品を買えないことに、罪悪感を感じる必要はありません。普通の食品で十分であることを知ってほしいと思います。有機栽培の欠点は、定められた厳しい栽培方法が逆効果になっています。例えば、遺伝子の組み換えです。この組み換えを取り入れさえすれば、作物から自然に発生する毒素を、大幅に減らすことが可能になります。」 どうやら有機食品は、あまりに自然という言葉にこだわりすぎるようだ。

人口と投資判断

年間45回。一カ月に直せば3.75回だ。ブルームバーグからの報道だが、コンドームで知られるデュレクス社が、41カ国の31万7000人を対象に性生活の統計を取った。それによると、平均的な日本人は、年間に45回のセックスをするという。

45回は多いのか、それとも少ないのだろうか?最も活発なのがギリシャの138回。日本の三倍だ。総合して言えることは、アジアの国々におけるセックス回数は西洋諸国に劣り、最下位を含めて下9位は全てアジアの国々だ。ちなみに、アジアでセックスが一番多いのはタイ。年間平均97回というから、日本のほぼ二倍に相当する。

どの程度デュレクス社の統計が信頼できるか分からないが、東洋ではなぜセックスの回数が少ないのだろうか?ストレスや狭い住宅事情が原因だ、という人たちもいるが、アジア最大の経済国家日本は人口減少が顕著になり始めている。

2005年、日本では死亡者数が出生者数を上回った。出産率の低下、それに厳しい移民規制にも影響され、1899年以来初めて日本の人口が減った。人口減少が大きく加速することは考えられないが、この傾向はゆっくりとしたペースで進み、簡単に逆転させることは難しいようだ。

人口統計が投資判断に使われることは滅多にないが、ジム・ロジャース氏は(ジョージ・ソロス氏とヘッジファンド共同設立)こんなことを語っている。「先進諸国の中で日本の出産率は最低です。この状況が継続すれば、経済を支える就業者の数が減り、とうぜんですが納税者数も減少します。さらに国家債務の支払いにも支障をきたすことになりそうですから、日本株の比重を増やすことは考えていません。」

ウィリアム・ぺセック氏(経済コラムニスト)も、ロジャース氏に賛成だ。「現在日本には、約800兆円の国家債務があります。これを返すためには納税者たちからの協力が要りますが、人口が減ってしまっては一人当たりの負担が大きくなるだけです。テクノロジーが埋め合わせになる、という見方もあるようですが、労働人口の縮小はGDP(国内総生産)の低下を引き起こす可能性もあります。」

日本はどうするべきか?いきなり政府が大量な移民を受け付けることは無いから、何とか女性たちを説得して2人以上の子供を生んでもらうことだ。と言ってもキャリアウーマンの活躍する今日、そう簡単に女性が、たとえ一時的でも、職から遠ざかることなど期待できそうにない。

ここでぺセック氏は、こんな皮肉を言う。「もしデュレクス社の統計が正しいとすれば、日本人はほとんどセックスをしない国民です。これは人口減少より、もっと大きな問題です。政府が真剣に、この人口問題に取り組まない限り、現在回復中の経済も長続きすることはないでしょう。」早速、ぺセック氏に反論メールを書こうと思う。

米国不動産投資家たちは思案している。住宅市場が冷え込み始め、ここで不動産に資金をつぎ込むことは賢明でない。安全確実に行くなら、4.13%の定期預金という手もあるが、やはり妙味に欠ける。どこに資金を移すべきか?南カリフォルニアの不動産で、大きな利益を上げたブルース・マクマイケン氏は、こんなことを語る。「不動産が、いきなり大暴落になるとは思いませんが、今年は株投資を考えています。まだ多くの割安株を掘り出すことができるはずです。」

PNCファイナンシャルのジェフ・クライントップ氏によれば、去年の終わり頃から、個人投資家たちの株に対する関心度が高まっているという。特に先週、ダウ指数が瞬時1万1000を突破したニュースは、更に投資家たちを刺激する結果になった。

振り返ってみれば、2000年3月、ナスダック指数は5132ドルの新高値を記録した。しかし翌月、インターネットバブルがはじけ、2002年10月には1108ドルにまで落ち込んでいた。この間、マクマイケン氏が投資していた南カリフォルニア不動産は2倍以上の伸びとなり、本格的な不動産ブームが訪れたわけだ。

全米不動産業協会の発表によれば、2006年度の住宅販売数は4.4%減が予想されている。また、住宅建築数も去年を6.6%下回るようだ。2005年、中間住宅価格は12.9%の上昇だったが、今年は5.1%ほどの伸びになるらしい。どちらにしても、積極的な不動産投資時代は終わった。

ベビーブーマーたちが60才になる。退職後のために、不動産やそれに関連したミューチュアルファンドに金を入れていたが、新しい投資先を見つけなければならない。普通なら大企業の社債が選ばれるのだが、倒産が噂されるゼネラルモータース、そして破綻してしまった大手先物ブローカー、レフコの件もあるから社債投資に尻込みしてしまう。それなら国債、という手もあるが、利回り逆転現象が起きているから不安になってしまう。

「残されたものは株しかありません」、とクライントップ氏は言う。「2001年から今日まで、S&P500指数に属する銘柄は、平均で46%の成長です。しかし、株価収益率は逆に22.2から13.8に下がっています。」投資者は、人気株に集中する傾向があるから、必ずしも割安株に資金が集まるとは限らない。だが、間違いなく個人投資家は株式市場に戻り始めている。現に、マンハッタンのEトレードに足を運ぶ投資者数は、去年の同時期を50%上回っているそうだ。2006年は株、さぞ証券会社が喜んでいることだろう。

野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。これを逆にすれば、皆が強気なら買うな、ということになる。正にそれを実証することが起きた。

棒上げ状態だった天然ガスが、ここ一ヶ月で40%以上の暴落になった。2005年8月と9月、アメリカを襲ったハリケーン・カトリーナとリタは、メキシコ湾岸州に大きな被害を与えた。これは天然ガス生産量を16%減少させる結果となり、12月3日、天然ガスは100万英サーマルユニットあたり15ドル78セントの新高値を記録した。

今月12日、天然ガスは8ドル90セントで取引を終了し、去年7月以来の安値となった。だが、一年前の同時期と比較すると、まだ3ドルほど高い位置にある。「メキシコ湾岸の大打撃がありましたが、最悪な事態は避けることができました」、とファースト・エネキャストのアグベリ・アメコ氏は言う。季節外れな暖かい気候が備蓄量の不安を無くし、これが天然ガス売りの一因になった。

実際に発表された数字を見てみると、12月30日現在、天然ガス備蓄量は10億立方フィート上昇という、冬には考えられない伸び方だった。ティム・エバンス氏(IFRマーケット)の話によれば、1年前の同時期の備蓄量は880億立方フィートの下げ、5年前はなんと1280億立方フィートの大幅減になったという。

こんな状況に関係なく、家庭用暖房費は4割近い値上がりだ。暖冬異変で、あまりヒーターを使わないのだから、4割高は許せない、という声も聞こえてくる。「先物市場価格が、消費者の暖房費に反映されるには時間がかかります」、とガス会社は説明しているが、皆あまり納得できないようだ。

「よほどの寒波に長期間襲われないかぎり、天然ガスは6ドルに向かって下げて行くでしょう」、とアナリストのマイケル・アームブラスター氏は言う。更にグランディック・パブリケーションズのピーター・グランディック氏によれば、トレーダーたちはそろそろガソリンに焦点を合わせるため、天然ガス相場は既に終わっている、という見方をしている。

ここで、また上の言葉に戻りたい。野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になって米を買うべし。弱気ムードが漂う天然ガス市場。ここで買っている人たちは、どんな根拠があるのだろうか。理由はハリケーンだ。2006年も去年と同様に、多くのハリケーン発生が予報されている。どちらにしても、天然ガスの運命は天候が握っているようだ。

ハリウッドが不調だ。なぜ人々は映画館に足を運ばなくなったのだろう?派手な銃撃戦、超迫力な爆発シーン、高速道路に繰り広げられるカー・チェイス、高度な技術を使った特殊効果。しかし、そんなものに大衆はすっかり飽きてしまったようだ。

CNNで映画業界を担当するポール・ラ・モニカ氏には、こんなメールが聴取者から送られている。「ハリウッドは現状を全く把握していません。ですから、大衆が何を求めているかが分からないのです。例を挙げれば、家族が皆揃って観れる映画を、ハリウッドはほとんど制作しません。アクション物やセックスばかりに重点がおかれ、最も大切なストーリーがおろそかにされています。」

低迷を打破するために、今年ハリウッドは少し違ったテーマを取り入れるようだ。ラ・モニカ氏を引用しよう。「最近のアメリカには、あるトレンドが起き始めています。宗教を取り扱ったものが売れるのです。ですからハリウッドは、宗教を題材にして、映画産業の好転を試みることでしょう。」

先月から上映が始まった「ナルニア国物語」は、宗教をテーマにした映画の一例だ。原作者はクリスチャン作家のCSルイス氏。全7巻の大作だが、ディズニーが映画化した。ボックス・オフィス・モージョー社の調べによれば、ナルニアは既に2億5000万ドルのチケット売上を記録している。

「ナルニアは宗教色が強すぎる。こんな映画はヒットしないだろう。」封切り前は、そんな意見も聞かれた。しかし、結果はディズニーに大きな収益をもたらせた。少し古くなるが、宗教映画の可能性を実証したのは、メル・ギブソン監督の「パッション」だ。アメリカ国内だけで3億7000万ドルの売上があり、これは2004年度、第3位の成績だ。

「パッション」、「ナルニア国物語」、次は何だろうか?5月、ベストセラーになった「ダ・ヴィンチ・コード」がソニーのコロンビア映画から封切られる。主演はトム・ハンクス、そして監督はロン・ハワードだ。まだ数ヶ月先の話だが、今から大きな期待が寄せられている。

この宗教ブームに投資できないだろうか?もう一度ラ・モニカ氏の言葉を記そう。「トーマス・ネルソン社は、聖書やキリスト教関連書籍の出版社です。2005年度は10%以上の伸びでしたが、これは一般の出版社を上回る成績です。セーラム・コミュニケーションズは、キリスト教音楽を中心にしたラジオ局です。今年の収益は33%増が見込まれています。」宗教ビジネス、単なる一時的なブームだろうか?

1250億ドル。これは2005年、米国消費者が家庭用電化製品購入に使った金額だ。テレビ、コンピュータ、携帯電話、次々と新モデルが発表されるから、買っても直ぐ古くなってしまう。新品が手に入れば、使い古したテレビは要らない。捨てるのも気が引けるから、物置にしまったり、慈善団体に寄付することになる。

しかし、ABCニュースの報道によれば、慈善団体にとって、古いコンピュータなどの電気製品は貰っても迷惑なだけだ。実例を挙げよう。有名な慈善団体、サルベーション・アーミー(救世軍)に不要なコンピュータを寄付しようとすると、断られることが多い。たとえ受け取ってくれたとしても、最終的にはゴミ箱行きになる。

廃品所に山積みとなった家電製品はどうなるのだろうか?あまり気にする人はいないが、平均的なコンピュータのモニターには約2200グラムの鉛が含まれている。更にコンピュータには、環境汚染になるカドミウムや水銀も入っているから始末に悪い。

一般消費者には適用されていないが、法律上、企業はコンピュータなどの環境破壊につながる電気製品を、単にゴミ箱に捨てることが禁止されている。だから専門の回収業者を使うことになるのだが、実はこの回収業者に問題がある。

本来なら業者は、廃棄された電子機器を解体して、部品をリサイクルする。だが、大手回収業者、ボブ・グラビン氏は、こんなことを語る。「回収業者のほとんどは、本来するべき業務を怠っています。部品がリサイクルされるのは20%ほどです。残りの80%は、こっそりと海外に送られているのです。」

実は、グラビン氏も廃品電子機器を中国へ送っていた。「実際に現地へ行って、自分の目で信じられない光景を見るまで、私は廃棄されたコンピュータなどを中国へ送り続けていました。」信じられない光景とは何だろうか?廃品の山に集まった農民たちは、コンピュータから部品付きのボードを抜きとり、それをフライパンの上でボードが溶けるまで熱する。これで半導体が手に入る。

次に、強力な酸を使って半導体から目当ての微々たる金を取り出す。この工程で使った危険な酸、溶かされたボード、そして不要な部品は全て近くの川に投げ捨てられる。中国には、厳しい環境保護法がないから、農民たちが逮捕されることはない。

アメリカのゴミが、結果的に中国を汚しているわけだが、うまい解決方法はあるだろうか。ヨーロッパが手本になるかもしれない。ヨーロッパでコンピュータを買うと、要らなくなったコンピュータは、製造者が引き取ってリサイクルすることが義務付けされている。どちらにしてもリサイクル観念の低いアメリカ、問題解決には時間がかかりそうだ。

ファンも興醒め

一気に四ケタに行ってしまった。新年早々、パイパー・ジャフレイのサファ・ラシチ氏が、グーグルの目標株価を445ドルから600ドルに引き上げ、投資者たちを驚かせた。この数字を超える目標価格は、たぶんそう簡単に出ないだろう、と誰もが思った。しかし、700ドル、900ドル、1000ドルを一息に飛び越えて、2000ドルの予想が発表された。

ラシチ氏の600ドル論は、全ての投資家に受け入れられたわけではない。現に、冷笑するマーケット関係者もいる。だが、今回の2000ドル予想には、さすがに皆、適切な言葉が見つからない。ようするに、呆れて物が言えない状態だ。

とにかく、発表した本人、カリス社のマーク・スタルマン氏に説明してもらおう。「先ず断っておきますが、2000ドルはカリス社からの公式予想ではなく、私個人の意見です。グーグルの市場は、私たちが予想する以上に大きく広がることでしょう。急ピッチでマーケットを拡大していくでしょうから、年間売上1000億ドル達成もそう遠いことではないでしょう。

グーグルは広告収入だけに頼った会社ではありません。次世代の金融サービス、ヘルスケア、それにデジタルサービス部門へ急速に進出していくことでしょう。90年代のインターネットバブルと、グーグルを同一視してはいけません。グーグルは本物です。」せめて1000ドルくらいなら話題性があったかもしれないが、2000ドルでは、グーグルファンも興醒めしたようだ。

さて、ここで質問。アナリストはなぜ目標株価を発表するのだろうか。こんな意見がある。以前、ヘッジファンド・マネージャーとして活躍した、アンディー・ケスラー氏を引用しよう。「目標株価ゲームが、また流行っています。何も知らない投資者たちが餌食になることでしょう。面白いニュースが無い時、アナリストは目標株価を発表します。これがウォールストリートのやり方です。」

クリスマスや感謝祭は休みでも、株式市場が連休になることは滅多にない。年間250日の取引日があるから、新鮮な話題が常に必要だ。今週から決算シーズンが始まり、アナリストたちは忙しくなるが、半面ホッとしていることだろう。本当のニュースが出てくるのだから、しばらく無理に目標株価ゲームをする必要がなくなった。

目の前にある割安株

安いところで買って高く売る。高いところで買って、より高いところで売る。後者はブレイクアウト型の買い、前者は割安株を狙った買い方だ。どちらが効果的な投資方法だろうか?過去20年間のデータを調べれば、面白いことが分かるかもしれない。

一昔前なら大変な作業だったが、インターネットのおかげで、割安株探しが簡単になった。たとえばヤフーのストック・スクリーナーを使えば、ほんの数秒で割安成長株リストが手に入る。実際に見てみると、パターソンというオイル株を筆頭に55の銘柄が並んでいる。

ところで、なぜ株は割安になるのだろうか?売られたからだ、と即答されるかもしれないが、株は売られなくても割安になる。公認証券アナリスト、パット・ドーセー氏の説明を引用しよう。「頻繁に起きることではありませんが、株は私たちの目の前で、静かに割安になることがあります。ただ私たちが気がつかないだけなのです。これは今日の証券業界が引き起こす一つの現象です。

ウォールストリートは常にホットな物を求めます。ほとんど値動きが無い銘柄はニュースにもなりませんから、とうぜん多くのアナリストを引きつけることができません。ですから、マネー・マネージャーから無視されるだけでなく、大衆の話題にもなりません。しかし、こんな企業が順調に収益を伸ばすと、たとえ株価が横ばいでも割安になります。

現在のマーケットでは大型株が好例です。派手な動きを展開する小型株ばかりに人気が集まり、投資者は完全に優良大型企業を忘れています。コカコーラを知らない投資者は、先ず皆無と言っていいでしょう。ここ5年間で株価は3割近い下げですが、キャッシュフローは80%も上がっています。小売業大手のウォルマートにも、同じことが言えます。5年間で10%ほど株価は下落しましたが、キャッシュフローは2倍に成長です。」

キャッシュフローが出たところで、少し付け加えておこう。株価純資産倍率(1.5以下)、株価キャッシュフローレシオ(0以上)、総資産収益率の向上、それに負債比率の減少などを検討することでも割安銘柄を掘り出すことができる。更に出来高や株価も条件に入れることも重要だ。早速スクリーンしてみたら、UNUMプロビデントという会社がまっ先に出てきた。さて、後でチャートを見てみよう。

米国投資家が語る5つの目標

新年は気迫に満ちた投資者、トレーダーが多い。毎月1万ドルの利益を達成したい。毎日200ドル確実に取りたい。様々な目標があることだろう。ゴールに到達するためには、まず自分の悪い癖を知る必要がある。

2005年度を振り返ってほしい。特に注目したいのは損を出したトレードだ。何か共通点がないだろうか。10回損があった場合、一つ一つが違った原因であることはほとんど無い。言い方を変えれば、同じ間違いを繰り返しているはずだ。アメリカの投資者達はどんなことを反省し、どのような目標を立てているのだろうか。さっそく紹介しよう。

1、ダメな銘柄は直ぐ切ること: 「銘柄と結婚したなどと思ったことはないのですが、どうも損切りができません。これだけ買い推奨があるのだから、そろそろ反発するはずだ。そんな期待をするだけで、結局なにもできないのです。いつも後悔する自分が嫌になりました。今年は早目に損切りしていくつもりです。」ボストン在住、フランクさん。

2、他人の意見に左右されないこと: シカゴ在住のブライスさんは、こう語る。「アナリストや、アドバイザーの話を参考にするのは良いことだと思います。しかし、株価の浮き沈みで彼らの資金が減るわけではありません。被害を受けるのは私の口座です。損を出したからといって、アナリストは穴埋めなどしてくれません。自分の資金を大切にできるのは、私以外にいません。ですから、投資判断は自分でして、アナリストに頼ることは止めようと思います。」

3、分からないことをあまり気にしないこと: サンフランシスコ在住のスティーブさんの言葉。「ギャンの理論を勉強したのですが、全く理解できません。自分は馬鹿かもしれない、と悩みました。そんなある日、友人が移動平均線とトレンドラインを使っただけの、簡単な方法を教えてくれました。これだけで十分だったのです。分からないものは、今の自分に必要ない。そう割り切ることの大切さを痛感しました。」

4、逆行動に徹すること: ダラス在住、キムさん。「自分も大衆の一人ですから、先ず自分の見方を疑ってみることです。これは絶対に買いだ。もし自分がそう思っているのでしたら同意見の人たちが多数いることでしょう。乱暴な言い方ですが、そんな銘柄は買いでなく売りです。考えてみてください。ディーラーやマーケット・メーカーはいつも大衆の逆トレードです。しかし、彼らはいつも利益を上げています。」

5、あれこれと株ニュースレターを購読しないこと: 「11種類のニュースレターを購読していました。ためになる情報を多く入手できたのですが、頭が混乱してしまいました。A紙はIBMを買えと言う。しかしB紙は売り推奨です。読んでみると、両紙とも説得力があるので中々判断ができません。こんなに多くのニュースレターを購読してしまった本当の理由は、プロの意見を聞けば簡単に儲かると思ったからです。もちろん、そんな考えは間違いでした。他人に頼るのではなく、自己判断のできる投資家を目指したいと思います。」サンディエゴ在住、ジョンさん。

上記5つ以外に目だった回答は、「手数料の安い証券会社に乗り換える」、そして「感情的な売買をしないこと」の二つだ。2006年、納得のいく一年にしたい。

滑り出しは上々。ナスダック、S&P500は揃って4年半ぶりの高値更新だ。金曜に発表された、非農業部門新規雇用者数は、予想の20万人に満たない10万8000だった。もし、予想を超える30万だったら、マーケットは大幅下落になっていたことだろう。とにかくマーケット関係者は、金利引き上げ終了を確信するために、弱い数字が欲しかったわけだ。

このラリーは本物だろうか。それとも短命だろうか。毎年1月の前半に、資金がマーケットへ流入する傾向があるから、時期的には上昇サイクルだ。投資アドバイザーの、ジム・ダニガン氏はこう語る。「株式市場は、とても良いスタートを切りました。心配なのは、ここで行き過ぎてしまうと、期待ハズレに終わった12月のような結果になってしまうことです。」

クリスマスラリーを望んでいた投資者にとって、たしかに12月はガッカリだった。マーケットは10月と11月で上げきってしまい、肝心のクリスマスには燃料が無くなっていた。結局2005年度、S&P500とナスダックは5%に届かない伸び。大衆が最も関心を寄せるダウ指数は、わずかだがマイナスで一年を終了した。

あと数回で金利引き上げが終わる。これがマーケット好調の原因、と報道されているが、はたして先物市場はどう反応しているのだろう。短期金利先物、フェドファンズの予測はこうだ。1月31日のFOMCでは、92%の確率で0.25ポイントの利上げがある。3月の会議では54%の確率だ。今月の利上げはほぼ間違いない。しかし、それ以降の利上げはマーケットに悪材料だ。

調子の良い時ほど気がゆるんでしまう。ここで警戒論も耳に入れておこう。先ず、サイバー・トレーダー、ケン・タワー氏の言葉を記そう。「投資者はあまりにも楽観的です。金利引き上げが終われば、全てが上向く、と単純に考えています。FOMC議事録を読んで利上げサイクル最終段階、と判断したようですが、そのようなことは明確に記されていません。とにかく、皆安心しすぎですから、マーケット急落が起きやすい状況です。」

もう一つ、ニューヨーク証券取引所の、テッド・ワイスバーグ氏の意見を書いておこう。「1月は資金がマーケットに押し寄せる月です。マーケットは1月だけではありません。今月だけ好成績を上げるのではなく、年間を通じて好結果を残すことが重要です。」

今年インターネットセクターで行けそうなものは、と尋ねれば、「グーグル」の答えが返ってくる。アップルに次ぐ人気銘柄だけに、ファンの数は圧倒的に多い。2005年、197ドル40セントでスタートしたグーグルは414ドル86セントで一年を終え、約2.1倍の成長を記録した。

まだ2006年度のマーケットは始まったばかり。さっそく、強気な見方がアナリストから発表されている。1月4日、ロバート・ペック氏(ベア・スターンズ証券)は、グーグルの格付けをピア・パフォームからアウトパフォーム(マーケット以上の伸び)に引き上げた。そして、目標株価も360ドルから550ドルに上方修正した。

マーケット関係者を驚かせたのは、前日1月3日のパイパー・ジャフレー証券からの発言だ。格付けのアウトパフォームに変更はなかったが、株価ターゲットが445ドルから600ドルに大きく見直された。

600ドル?妥当な数値だろうか、それとも法外な数字だろうか?先ず言った本人、サファ・ラシチー氏、の話を聞いてみよう。「グーグルはマイクロソフトのような、米国を代表する企業になりました。2007年度の一株収益は、11ドル91セントを予想しています。ですから、株価収益率(PER)は50です。PERの50は高すぎる、と思われることでしょう。しかし、グーグルはサーチ市場を独占し、更に他の分野にも積極的に挑戦していることを考えれば、株価収益率の50は決して不当な数字ではありません。」

先月グーグルはマイクロソフトの裏をかいて、アメリカ・オンライン(インターネット・プロバイダー、タイム・ワーナー社の一部門)の5%買収に成功した。これでますますグーグルの市場が広がったが、メリル・リンチのアナリストは、こんな見方をしている。「この買収は、サーチエンジン会社の勢力地図を変えるほどの打撃はありません。アメリカ・オンラインとのパートナーシップが成立しましたが、実際どのていど広告収入に影響するかが疑問です。ヤフー、それにマイクロソフトは、グーグルの後ろにピッタリとついています。」メリル・リンチがグーグルに与えた格付けは「ニュートラル」だ。

グーグルの売上や一株収益などを予想するのは難しい、と多くのアナリストは言う。理由の一つは、インターネット業界は激しい速度で変化するためだ。しかし、一番の原因は他社と違って、グーグルは四半期の売上や収益見通しを発表しない。

35人中26人のアナリストが買い推奨のグーグル。成績の方も、3四半期連続でアナリストの予想を上回っている。勢いのある会社には、とうぜん高い期待が寄せられるわけだから、予想どおりの決算では投資者を失望させてしまう。とにかく、見込まれている数字以上の結果を常に出すこと。今年もグーグルは全力で走りそうだ。

今回も同じパターン!?

確率は85.7%だという。この数値は今年米国株式市場が上がるパーセンテージなのだが、これを実現するには、あることを達成しないといけない。ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によると、1月最初5日間の相場が強ければ、その年は85.7%の確率でマーケットが上昇する。

しかし、今年は中間選挙がある。これもストック・トレーダーズ・アルマナック社の調べだが、中間選挙の年には、強い1月の初週があまりマーケットの予想に役立たない。過去14回の中間選挙を見てみると、好調な1月初週どおりの結果になったのは、半数にも満たない6回だけだ。

火曜日、マーケットは強力なラリーを展開した。起爆剤はFOMC議事録だ。これによれば、あと数回で短期金利引き上げが終了する可能性が高く、やっと明確な金利見通しを立てることができるようになった。ジェフリーズ社のアート・ホーガン氏はこう語っている。「議事録を見る限り、金利引き上げサイクルは最終段階に来ています。これは今年の株式市場に好材料です。」

1月の最初5日間に勢いがあれば、その年は強い。しかし、それは中間選挙の年に当てはまらない。だが、利上げはほぼ終わりだから、今年は行ける。何かもっと説得力のある話が欲しい。ここで、トミー・キルゴア氏の意見を紹介しよう。

「マーケットの予測は、過去のパターンを注意深く分析することから始まります。最近、利回りのことが話題になっていますが、10年物国債利回りが2年物利回りを下回る、という事態が約6年ぶりに起きました。このような利回り逆転現象が不景気の前ぶれになる傾向があり、過去30年間で利回り逆転が不況に結びつかなかったのは、たった一度しかありません。」

最後に国債利回りの逆転があったのは1999年だ。2000年1月、バブルが弾けてブルマーケットが終焉した。この時の情勢が今日と似ている。キルゴア氏の言葉を借りれば、連銀は利回りの逆転を見ても金利引き上げを止めなかった。必要以上に上げてしまったわけだ。そろそろバーナンキ氏が、次期連邦準備理事議長に就任する。同じ間違いだけは避けてほしいものだ。

アメリカ経済の牽引車は誰

江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ、と言われたが、金ばなれのよさならアメリカ人も負けない。2005年、米国消費者は収入以上の金を使った。貯蓄率0どころではなく、マイナスに落ち込んだわけだが、こんな事が起きたのは大恐慌時代が最後というから、もう70年も昔の話だ。

何故こんなに威勢良く金を使えたのだろうか。理由は低金利、住宅ローンの借り換え、そして急騰する住宅価格の三つだ。低金利だから、クレジットカードの利子は気にならない。住宅の値段は面白いように上がるから、ローンの借り換えをして、簡単に現金を手に入れることができる。もちろん、それらは既に過去の話となった。連銀による、13回連続の金利引き上げ。不動産ブームも去り、もはや住宅は自動現金引き出し機ではなくなった。

こんな状況だから、今年消費者から去年のような金の使い振りを期待するのは無理だ。となると、誰かが消費者の代わりに大きく金を使わないといけない。連邦政府にそれを期待できるだろうか。膨大な財政赤字を抱えるアメリカだから、まずそれはありえない。それなら、連銀から助けが来るだろうか。火曜に発表されたFOMC議事録には、金利引き上げサイクル終了が近いことが記されていた。しかし、まだあと数回の利上げが予測されているから、今年の中頃まで金利上昇は止まりそうにない。

消費者、連邦政府、連銀があてにならないなら、はたして企業はどうだろうか。大胆な設備投資などで、米国経済を成長させてくれるだろうか。エコノミスト、アーウィン・ケルナー氏は、こんな見方をしている。「去年の9月だったと思います。多くのアナリストが、2006年度は企業からの支出が大きく伸びるため、消費者の低迷は気にすることはない、といった意見を発表しました。本当にそうでしょうか。

企業の支出だけでは、消費者と住宅セクターをカバーすることはできません。アメリカのGDP(国内総生産)の3/4は、住宅セクターと個人消費が占めています。企業支出は、たった11%にすぎません。忘れてはいけないのは、企業が必要な機器や装置を買うのは海外からです。ですから、GDPには何の影響もおよぼしません。」

そして、ケルナー氏はこう付け加える。「常識的に考えてみてください。消費者が節約を始めたら、どんなことが起きるでしょうか。物を買わなくなるのですから、企業の収益は上がると思いますか、それとも下がると思いますか。」こんなことを聞かされると、投資資金はますます米国市場から逃げて行きそうだ。

なんの躊躇もせず、瞬時に大量な株売買を完了するロボトレーダーが、ウォールストリートの主役になろうとしている。ロボトレーダーと言っても、ロボコップのようなサイボーグが、ニューヨーク証券取引所に出現したわけではない。ロボトレーダーとは、最新機能を備えたトレード専用コンピュータのことだ。

既にCSファースト・ボストン、ゴールドマン・サックス、それにパイパー・ジャフレイでは、ミューチュアルファンドやマネーマネージャーなどの機関投資家のために、積極的にロボトレーダーを使って有利な株価での取引を実施している。成績が全てのヘッジファンドでは、上記大手証券会社以上に高性能なコンピュータを導入して、常に最善な株価をつかもうと必死だ。

「専門的流行語はアルゴリズムです」、とフランクリン・ポートフォリオ・アソシエーツのメリー・マクダーモット・ホランド氏は言う。計算や問題を解決するための手順や方式をアルゴリズムと呼ぶが、ロボトレーダーの命がこのアルゴリズムだ。現在市場で取引される株の14%がアルゴリズムをベースにしたロボトレーダーによって行われているが、セレント社の調べによれば、2008年までには25%に達することが推定される。

アルゴリズムが注目されている大きな理由は二つある。先ず第一は、2000年から株式市場に採用された小数点の導入だ。それ以前は、25ドル1/4といった形で、分数が株価に使われていたが、これが25.25と表記されることで、アルゴリズム適用が楽になった。もう一つは、スピードと効率の良さだ。一々人間の目で確かめていたら時間がかかってしまうが、ロボトレーダーは一瞬のうちに、複数取引所での株価を取得できる。

二つと言ったが、アルゴリズムを求める第3の理由が最近顕著になり始めた。証券会社のリサーチをもとにした、従来の株式投資結果に不満な機関投資家が増えている。そんなわけで、アルゴリズムにスポットライトが当たったわけだ。このまま行ったら、トレードは完全にロボトレーダーに支配されてしまうのだろうか。今のところ人間が無用になることはない。ロボトレーダーには、まだテロ事件やハリケーンなどのニュースに適切な判断を下す能力に欠けている。

+3%。100万円の投資なら利益は3万円だが、これが2005年度S&P500指数が記録した伸び率だ。そんな数値は伸びたうちに入らない。東京市場は40.24%の大上昇だ。1年物国債の利回りだって4.3%ある。もうアメリカ株はやめだ!と結論する前に下の日足チャートを見てほしい。

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デイブ・ランドリー氏(ファンドマネージャー)が指摘したことだが、一年全体で見るとS&P500指数は3%の上げ幅しかない。しかし現実は、顕著な3回の上げ波動と3度の下げ波動があった。もちろん、器用に全ての波に乗ることは不可能かもしれないが、単に株を持ち続けるだけでは効率の良い投資ができない。

さて、2006年度を占う1月相場が始まるが、はたしてどんな展開になるだろうか。1月が強ければ、その年は行ける、と言われるだけにマーケット関係者は真剣だ。「先週の弱い引け方が気になります」、とジョセフ・スティーブンス社のドナルド・セルキン氏は言う。「ヨーロッパや日本に比べるとアメリカは全く勢いがありません。」米国市場は天井を形成しているのだろうか?

ウィンダム・ファイナンシャルのポール・メンデルソン氏はこんな見方をしている。「1月の上昇は難しいと思います。S&P500指数は、いったん1210辺りまで下げそうです。また、投資者たちは依然と同じ問題に直面しています。いつ連銀は金利引き上げを止めるのだろうか?住宅市場の低迷は不況の原因にならないだろうか?オイル価格は本当に安定するだろうか?これでは積極的に株を買えません。2006年度相場は横ばいでしょう。」

横ばい?2005年の繰り返し?ここでもう一度見てほしいのが、上のチャートだ。大きな動きが期待できないなら、単に持ち続ける投資は通用しない。2006年、ますますチャートが重要になったようだ。

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