打撃を受けた株を買え、しかし打撃を受けた企業を買ってはいけない。これは、ジム・クレーマー氏がよく口にする言葉だ。ウォールストリートはデパートとは違う。買った製品に欠陥があっても、全額払い戻しなど期待できない。だから、慎重な銘柄選びが必要になる。
打撃を受けた株、打撃を受けた企業、この二つを混同したら大変だ。どうやって二つを見分けるのだろうか。クレーマー氏は、こんな例を挙げている。1998年、ニューヨークに本拠地がある不動産サービス会社、センダント・コープが36ドルから12ドルに大暴落した。ほぼ一直線の下げだったから、超割安な株価に魅せられて買った投資者も多かった。しかし、下げの原因はインチキな会計報告だから、この株を買うのは間違いだ。
2005年が始まって間もない頃、イーストマン・ケミカルは収益がアナリストの予想以下になることを発表した。悪いニュースだから売り物が殺到し、株価は簡単に4ポイントの下げとなった。実情を正確に把握してない大衆のパニック売りだから、この場合は明らかに買いだ。イーストマン・ケミカルの収益減少は、施設の一部に問題が起きたためで、経営陣も早い修復の可能性を語っていた。その後株価は、施設正常稼動ニュースで8ポイントのラリーを展開した。
宿題を忘れるな、というのもクレーマー氏の好きな言葉だ。銘柄を大して調べもせず買ってしまう投資者が多い。その原因は二つある、とクレーマー氏は言う。先ず、ほとんどの投資者は、長く持ちさえすれば、株は上がると信じている。そして二番めの理由は、時間が無い、というものだ。
1990年代のようなブルマーケットなら、トレンドに乗って株を保持し続けることは正しい。しかし、マーケットはいつも同じトレンドにあるわけではない。宿題を怠っていたら、トレンドの波に飲み込まれてしまう。時間が無い、と言い訳する人に、クレーマー氏はこう警告する。「時間が無いからピアノの練習はしない。時間が無いからゴルフの練習はしない。そんな態度では、何も身に付けることはできないでしょう。」