なぜこんな安いところで売ったのだろう。報道によれば節税対策ということだが、どうも納得できない。経済新聞などで読まれた方もいると思うが、大株主のカーク・カーコリアン氏が、ゼネラル・モータース(GM)を1200万株売却した。10%近いGM株を買い占めていた氏だったが、これで率が7.8%に下がった。
一口に節税対策と言っても、水曜に23年来の安値をつけたGMだけに、カーコリアン氏の損額は少なくとも5億ドルにのぼる、と見られている。メリーランド大学のピーター・モリキ教授は、「これは、カーコリアン氏の本格的なGMからの撤退開始です。たぶん、全く姿勢の変わらない経営陣に見切りをつけたのだと思います」、と述べている。
カーコリアン氏の真意は分からないが、GMに非難を浴びせる投資者は多数いる。単に最高経営責任者の能力を疑問視するだけでなく、GMをダウ銘柄から削除せよ、という声も聞こえる。今年、GMの株価は半分以下になった。この下げは、ダウ指数を160ドル下落させ、もしGMが無ければ指数は2%以上の上昇だった。
著しい売上の低下、減少が続くマーケットシェア、おまけに社債はジャンクボンドと呼ばれる、屑社債に格下げされてしまった。会社側は、その心配は無いと断言するが、アナリストはGM倒産の可能性を真剣に語っている。
ダウ銘柄は、誰が選ぶかご存知だろうか。ダウ指数は1896年に生まれ、指数に入れる銘柄は、ウォール・ストリート・ジャーナルの編集者たちが決定する。「銘柄の入れ替えは滅多にありませんが、企業収益の悪化を理由に、銘柄が削除された実例もありますから、GMがリストから落とされても不思議ではありません」、とダウ・セオリー・フォーキャスツのリッチ・モロニー氏は言う。
50%以上の株価下落、貧弱な経営内容、GMがダウ指数から外される日が本当に来るかもしれない。しかし、単なる大幅な下げなら、2002年インテルとホーム・ディポが5割以上の下げを記録したが、指数から取り除かれることはなかった。経営危機ならデルタ航空とノースウエスト航空があるが、これら二社が実際にダウ輸送指数から削除されたのは倒産が発表されてからだ。
もしGMを外した場合、どの銘柄と入れ替えるのだろうか。フォード・モーターもGMと同様な内容だから、まずそれはありえない。ならトヨタ・モーター、それともダイムラー・クライスラー?もちろん、そんなことが起きるはずがない。言うまでもなく、両社とも外国企業だ。それとも、グローバル化する社会を反映させて、ダウ銘柄に外国企業が組み込まれる日が訪れるのだろうか。