2006年度の米国相場を悲観する必要は無い、とウォール・ストリートのブルたちは言う。あたりまえだ。ブルが弱気になったらベアになってしまう。ブルの言いたいことは、ある程度見当つくが、ひょっとしたら見落としていることがあるかもしれない。そんな訳で、最後まで話を聞いてみることにした。
マーケットは5年来の高値を記録するだけでなく、企業収益も堅調に4年連続の伸びとなるだろう。今年の夏、70ドルに達したオイルも下降基調になり、インフレを主張していたアナリストたちの声も聞こえなくなるはずだ。それに、心配されている住宅市場の大幅下落も有りえない。これがブルの要点だ。
現実を無視した夢物語だろうか。ゼネラル・モータースに代表される不振米国自動車産業、経営破たん続出の航空会社、南部を襲ったハリケーン、クレジットカードの借金に苦しむ消費者、そしてオイル価格の上昇、とにかく嫌なニュースの多い2005年だった。しかし、それらの悪材料には、株式市場を脱線させるだけの力は無かった。それだけではない。13回連続の金利引き上げにもかかわらず、第3四半期アメリカ経済は、予想を超える4.3%の成長を記録した。
「多くの投資者は、横ばいマーケットに不満の声をあげていますが、この厳しい環境での横ばいは、マーケットの底力が表れています」、とメロン・ファイナンシャルのロナルド・オーハンリー氏は語る。11月からのラリーで高値を更新する銘柄が増えているが、S&P500指数に属する銘柄の平均株価収益率はまだ16だから更なる成長が望める、と言うアナリストも多い。
ウェストウッド・ホールディングズの、デービッド・スパイカ氏も強気な一人だ。マーケットは比較的割安なレベル、と述べる氏は、2006年度のS&P500指数に約7%上昇を予測している。終了が近い金利引き上げ、エネルギー価格の安定が好材料になるようだが、同じテーマが2006年度の相場を崩す可能性もある。クレジットカードの借金に苦しむ消費者のことは上記したが、これは個人破産増加の原因になるから、小売セクターは投資対象から外した方が良さそうだ。
小型株に遅れていただけに、来年は大型株の年になる、という見方が多い。だから、推奨されている銘柄を見ると、ゼネラル・エレクトリック、コカコーラ、それにゼロックスといった消費者に馴染みの深いものばかりだ。ウォール・ストリートのブルたちとは裏腹に、個人投資家たちは極端に悲観的な来年の相場を予想している。シティグループの調べによれば、個人投資家がこれほど弱気になったのは、1994年以来初めてのことだという。これもプロを強気にさせる一因だ。