退屈な銘柄は投資者の味方だ、と経済コラムニストのチェット・クリヤー氏は言う。「株がセクシーであればあるほど、株価は割高になります。そのような銘柄に投資をすると興奮するものですが、興奮は投資の敵です。長期投資で大切なことは、地味な株の中から格安なバーゲン銘柄を見つけ出すことです。」
地味で格安なら、人気株の正反対だ。そんな株に投資して、本当に儲かるのだろうか。310億ドルの資金を運用する、クリス・デービス氏は、こんなことを語っている。「私が投資対象にする銘柄は分かりにくくて複雑、それに味気が無くて華やかさに欠けるものばかりです。保険、砂と聞いて刺激される投資者はいません。しかし味気ない、ガイコやマーチン・マリエッタ・マテリアルズは大きな投資利益を生み出してくれました。」
過去10年間、S&P500指数を常に上回る成績を上げているデービス氏は、更にこう付け加える。「名門大学を卒業した若い優秀なアナリストは、保険などの退屈な業界には全く目もくれません。ですから、今のアメリカ証券業界には地味な銘柄を徹底的に調べるアナリストの数はごく限られています。これが、私たちファンドの強味です。」
地味な株には弾みや勢いが乏しいから、いったん買ったら、そう簡単に手放すことはない。違った言い方をすれば、退屈な銘柄投資で成功するには、強い忍耐力が必要だ。シニア・インベストメント・ストラテジスト、ティム・プライス氏を引用しよう。「プロと呼ばれる人たちも含めて、今日の投資家は売買が非常に頻繁です。隣の芝生はいつも青く見えるように、他人の持っている株は自分の持ち株よりずっと魅力的に映ります。証券会社からは絶えず情報が入ってきますから、投資者たちは自然に活発な売買をしてしまうわけです。」
インターネットのおかげで、株の情報は簡単に手に入る。一般的なビジネスニュースだけでなく、掲示板やチャットルームもあるから、有望そうな銘柄はあちこちに氾濫している。ジックリと腰をすえた投資などしていたら、ファンドマネージャーとしての職を失ってしまう。とにかく皆、手っ取り早い結果がほしい。
私たちは今日、長期投資の難しい時代に生きている。即席結果が求められる証券業界は、アナリストやファンドマネージャーを華やかなスター銘柄に集中させる。もちろん、地味な銘柄のレポートは極端に少ないから、個人投資家もスター銘柄に飛びつく。こうなると、重要なのは売買のタイミングだ。退屈な銘柄を狙う必要はない。必要なのは、テクニカルアナリシスを利用した、適切な売買技術だ。これが無いと、全ての投資が塩漬けになってしまう。