ついに500ドルを超えた。こんなレベルで金が取引されるのは1987年以来だ。好調なのは金だけでない。銀、パラジューム、プラチナ、それぞれ高値の更新だ。「世界経済はフルスピードで走っています。まるで金属を食い散らすモンスターのようです」、とマネー&マーケット誌のショーン・ブロドリック氏は言う。
金属市場の中で、最も身近に感じられるのが金だ。なぜ金が買われているのだろうか。ほとんどの人が指摘するのがインフレだ。9月の数字を上回ることはなかったが、消費者物価指数10月分は+4.3%だった。これほど高い数値を記録するのは14年ぶりになる。ご存知のように、物価上昇は紙幣の価値を下げる。歴史を振り返ると、金には究極的な貨幣としての価値があり、インフレ対策投資として常に選ばれてきた。
2004年1%だった米国短期金利は、連銀の執拗な引き上げで4%になった。これも、金人気を作り上げている一因だ。4%になった金利だが、これはまだインフレ率より低い。インベストメント・オフィサーのフランク・ホルムズ氏に説明してもらおう。「各国の中央銀行は、短期金利を実際のインフレ率以下に設定します。そうすることで、経済成長に勢いをつけることができるからです。しかし、結局これがインフレ原因になり、金が買われることになるのです。」
中国、インド、そして他アジア諸国からの金需要が増大している。金が伝統的な投資となっているこれらの国々は、最近目覚しい経済発展を遂げ、資金が豊富になった。しかし、需要が増えても肝心な供給が追いつかない。フランク・ホルムズ氏によれば、金精錬所を建てるには30億ドルの費用がかかり、約10年の建築期間が必要だという。また、環境保護を叫ぶ団体も多いから、そう簡単に精錬所用の土地を確保することもできないようだ。
止まる気配を見せない金需要、極めて限られている供給量。まだまだ金は買える、と思われるかもしれないが、ここでファイナンシャル・アドバイザー、ウィリアム・バーンスタイン氏の言葉を聞いてほしい。「金に投資する理由はインフレ対策ですが、本当にインフレ率以上の成績を上げているのでしょうか。答えは「ノー」です。インフレ率を考慮すると、金の実質利益はゼロです。」
インフレ対策にならないのなら、無理して金を買うことはない、と早合点する前に、もう一度バーンスタイン氏の話に耳を傾けよう。「株式投資の一部に、金鉱銘柄を入れておくことで好結果を得られます。金鉱銘柄は全体のポートフォリオの10%で構いません。残りの90%は成長株です。100%成長株だけのポートフォリオと比較すると、金鉱株を含めたポートフォリオの方が優れたリターンを得られます。もちろん、問題が一つります。たとえ成長株と金鉱株をミックスしても、売買タイミングを間違えていたら何の意味もありません。」