中国とデフレ、今では縁遠い二つの言葉だが、デフレが中国を襲う、と真剣に考えている人たちがいる。過熱する中国経済がよく話題になったものだが、シャンハイで経営コンサルタントを務めるジョン・チャン氏が言うように、最近は中国経済がニュースになっても、過熱という表現は使われることがなくなった。
「先ず、適切な中国政府の対処を称賛したいと思います」、と経済ジャーナリストのウィリアム・ペセック氏は語る。「バブル経済が懸念されていましたが、中国政府関係者はうまくバブルをしぼませることに成功しました。更に今年中国は、2.1%の人民元切り上げも問題無く実行しましたから、リーダーたちは経済状況を正確に把握しているようです。」
しかし、現在の中国にはデフレを招く危険性があるという。モルガン・スタンレーのアンディー・シェイ氏を引用しよう。「アジアで第二番目の中国経済は、早ければ来年中に物価の低下が始まると思われます。最大の原因は超過生産です。中国はセメント、アルミニウム、繊維などの例に見られるように物を余分に作り過ぎです。同じように、工場やビルも建て過ぎです。」中国政府は行き過ぎな設備投資を避けようとしているが、経済を適当な速度に減速させるような積極的な措置ではない。だから、たとえ中国経済の成長率が9%落ちたとしても、超過生産を解消するのは無理だ。
アメリカ人が貯金をしないのとは正反対に、一般中国人の貯蓄率は極めて高い。この貯蓄率も、中国をデフレに導く原因になる。「中国政府は国民に、もっと消費を奨励しなくてはいけません。そのためには、国有されている資産を私営化する必要があります。さらに、年金制度、医療システム、それに学校教育の近代化も重要な課題です」、とシェイ氏は言う。北京大学教授、ジャスティン・リン氏も2006年デフレ論に賛成だ。「このような形で、中国が経済を成長させていくことは危険です。物があまりにも生産され過ぎですから、デフレ経済に逆もどりすることは十分考えられます。」
中国がデフレに襲われたら、米国経済に悪影響を与えるだろうか。ウイリアム・べセック氏の意見を要約しよう。「必ずしもアメリカが被害を受けるとは限りません。デフレに陥るということは、政府が健全な消費経済育成に失敗したことを意味します。ただでさえ金を使わない国民ですから、中国は米国への輸出を大幅に増やそうとすることでしょう。そのため貿易摩擦が深刻化することも予想されます。もちろん、デフレに苦しみ状況を改善させた日本の実例もありますから、中国に同様なことができるかもしれません。」