投資者たちに笑顔が戻ってきた。なんと言っても、ナスダック市場は4年半ぶりの高値だから、ハイテク銘柄が好調だ。売り手は完全にマーケットから撤退したのだろうか。もう空売りの心配は要らないのだろうか。ニューヨーク証券取引所のデータによれば、ショートインタレストと呼ばれる空売り残高が、2ヶ月連続で記録的なレベルに膨れ上がっている。もちろん、ナスダック市場も同様な状況だ。
マーケットが順調な時、空売り残が大きく増えることは不思議な現象でない。機関投資家やミューチュアルファンドなどのように大量な株を抱えるグループは、マーケットが上がるたびに空売りを入れて、万が一の時に備える。だから空売り残の増加は、必ずしもマーケットの下落要因になるとは断定できない。
レイモンド・ジェームズ社のジェフリー・サウト氏は、空売り残上昇について、こんな見方をしている。「最近ヘッジファンドはペアトレードを積極的に行っていますが、これが空売り残高を極端に増やしている一つの理由です。ペアトレードを簡単に説明しましょう。先ず好調な株を買います。たとえばトヨタ・モーターを買ったとしましょう。次は同業種で、低迷している銘柄を空売ります。ですから、不調のゼネラル・モータースが空売られることになります。こんなわけで、単に空売り残が増えただけで、マーケットの下げを予測するのは間違いです。」
ここで、基本的な質問をしよう。今週もマーケットが強ければ、売り手はどうするだろうか。目論見が外れるのだから、とうぜん空売った株を買い戻すことになる。買い戻しでも、買いは買いだ。これで更にマーケットの上げに弾みがつき、俗に言う踏み上げが起きる。
ストラテジスト、スボッド・クマー氏も踏み上げを予想している。「極端に高い空売り残高は、マーケットにとって好材料です。言い換えれば、現在展開されているマーケットラリーは、売り手にとって予想外な動きですから、株を買い戻すしかありません。売り手が買い手に参戦する形になりますから、これは大きな買いエネルギーになります。」
今年を振り返ると、高値が来るたびに売り手たちは空売りで成功していた。しかし、11月に入ってから様子が変わってしまった。今月もそろそろ終わりだが、12月はどんな相場になるだろうか。ストック・トレーダーズ・アルマナック社の調べによれば、1950年以来12月はS&P500指数が最も成績の良い月だという。売り手は動揺しているだろうか。