7ヶ月前のことだった。ゴールドマンサックスのアナリストは、1バレル105ドルのオイル価格を予想した。テロ活動、中東政治情勢、それにハリケーン、まったく不安定な状態だったから、オイルの急騰は、ほぼ間違いないかに見えた。しかし、8月の71ドルをピークに、現在オイルは58ドル台で推移している。100ドルは単なる感情的な意見だったのだろうか。
「1バレル100ドルは、短期的な予想ではありません。オイルがそこまで上昇するためには、オイル設備がテロリストによって、壊滅的な打撃を受ける必要があります」、とワコビア社のジェーソン・シェンカー氏は語る。「100ドルという価格ですが、これは極めて起きる確率の低い事件を基にたてられた、大げさな予想です」、とストラテジック・エネルギー社のマイケル・リン氏は付け加える。
思い出してほしいのは、アメリカの海底油田地域を襲った3つのハリケーンだ。カトリーナ、リタ、そしてウィルマの被害から、オイル産業はまだ完全に回復していない。重要なオイル供給ラインが閉鎖されてしまったのにもかかわらず、オイルは100ドルに達することはなかった。二桁から三桁にオイル価格が暴騰するには、三つのハリケーン以上の災害が要るわけだ。
しかし、ファースト・エネキャスト・ファイナンシャル社、アグベリ・アメコ氏の見方は変わらない。「1バレル100ドルは、いずれやって来ます。時間の問題です。次のハリケーンシーズン、あるいは大きな地政的突発事件が、オイルを100ドルに上昇させることでしょう。テロ懸念があるかぎり、オイル価格は常に100ドルへの射程圏内にあると言えます。」
リサーチアナリスト、ダン・ハッセー氏は、こんな警告をする。「オイルの供給量に注意を払わなくてはいけません。現在、全世界には1兆バレルのオイルがあります。その60%は政治不安が付きまとう中東です。ハリケーンが証明したように、アメリカのオイル供給にも弱点があります。最大の産油国はサウジ・アラビアですが、大きく伸びる需要量を考えると、あと73年でサウジのオイルは空になるでしょう。」
ここで注目されるのが次世代エネルギーだが、最後にハッセー氏の言葉を記しておこう。「オイルに代替するエネルギーが開発されたら、本当にオイルの需要ば無くなるのでしょうか。生物体燃料などが研究されていますが、オイルに比べると割高です。2年から5年後に、大きな世界的経済成長が予測されていますが、それまでに低価格な代替エネルギーは間に合わないことでしょう。」