250億ドルにおよぶ巨額な自社株買戻しを発表したのはインテルだ。これだけの金額だから史上最高、と思われるかもしれないが、ナンバー1はマイクロソフトの300億ドルになる。トムソンファイナンシャルの調べによれば、2003年、ハイテク企業による自社株買戻し総額は197億ドル、2004年は723億ドル、そして今年は607億ドルにのぼる。
「自社株買戻しは、投資者にとって本当に良いニュースでしょうか」、と疑問を投げかけるのは、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。「自社株買戻しを発表した企業の株は、マーケット全体の伸び率を上回る、という学術的なレポートがあります。有名なものでは、イリノイ大学のデービッド・アイケンベリー教授とジョセフ・ラコニショック教授が発表したレポートです。」
しかし、ハルバート氏は、両教授によって出されたレポートを鵜呑みすることができない。「ウォールストリートは、自社株買戻しは株価に好影響、というイリノイ大学の研究結果を信じていますが、二教授によって出されたレポートは10年以上も前の話です。ご存知のように、投資方法はあまりに多数の人たちに知れ渡ってしまうと、その効力が失われる傾向があります。」
早速ハルバート氏はアイケンベリー教授をインタビューした。教授の言葉を要約すれば、自社株買戻しニュースは、今日もほぼ10年前と同様な好影響を株価に与えている、ということだが、こんな付け加えがある。「単に自社株買戻しを発表した企業を買うだけなら、リターンはマーケット全体の成績を4年間で平均3.53%上回ります。これ以上の利益を得たいのであれば、次の二点を考慮する必要があります。
先ず、自社株買戻しが発表される前の株価推移を見てください。大きく下落しているものほど、買戻しニュースは好材料になります。第二の要素は、買戻しの理由です。会社側は、株価がいかに大きく正当評価額を下回っているかを、株主たちに納得できるように説明しなければいけません。」
それでは、膨大な額の自社株買戻しを発表したインテルは買いだろうか。買戻しニュース以前の株価はパッとしないが、最近ダウントレンドから抜け出ているから、他社と比較して格別悪いとは言えない。記者会見でも、インテルは現在の株価と正当評価額については一切触れなかった。ようするに、インテルの買戻しニュースは、特に美味しい話ではないようだ。