正確な数字は分からない、しかし大きな被害があったはずだ。そんな理由で、オレンジジュースの先物は、1ポンドあたり1ドル19セントを記録し、1998年12月の高値を突破した。全米8割のオレンジはフロリダで生産され、ハリケーン・ウィルマは、かなりの打撃を与えたらしい。「ダメージを受けたことは間違いありません。しかし、はっきりした損害額が分かるのは、あともう1、2週間先になるでしょう」、とベーシック・コモディティーズのケビン・シャープ氏は言う。
オレンジ生産者も、シャープ氏と同様な発言をしている。ハリケーン・ウィルマが襲ったフロリダ州南部には、ヘンドリー郡とコリアー郡の2大オレンジ生産地がある。オレンジ協会の発表によれば、停電や通信網の破壊が原因となり、まだ多くの農園と連絡がつかない状態だが、ここまで分かった範囲でも、約15%のオレンジの木が吹き飛ばされたようだ。
「問題なのは、ハリケーンの被害ではありません。シトラスキャンカーの蔓延です」、とオレンジ協会のケイシー・ペース氏は語る。シトラスキャンカー、柑橘類癌腫症と呼ばれるオレンジを蝕むバクテリアだ。このバクテリアは、主に風と雨によって運ばれ、去年のハリケーンシーズン頃から頻繁に見られるようになった。ペース氏によれば、去年フロリダは、シトラスキャンカーで約40%のオレンジを失っている。
米農務省のデータによると、フロリダは1億6900万箱のオレンジを去年生産した。これはペース氏の言うように、前年度を40%下回る生産量だ。はたして今年はどうなるかだが、農務省は去年を12%上回る、1億9000万箱を予想している。CKフューチャーズのクリス・クラフト氏は、「ハリケーンは去年の生産量を減らしただけではありません。暴風雨は木にストレスを与え、一本の木に実るオレンジ数を減らす原因にもなっています」、と述べている。
ハリケーンの被害は大きいが、それは一時的なものだ。しかし、シトラスキャンカーは、そう簡単に消えない。オレンジの木を醜く変形させ弱らせるシトラスキャンカーには、今のところ治療方法が無い。オレンジ協会のペース氏によれば、一旦シトラスキャンカーに感染すると7年間の月日が無駄になる。消毒のため2年間土地は使えなくなり、苗木が成長するには更に5年の月日がかかる。溜め息の出そうな話だが、あとは季節外れの寒さが来ないことを祈るばかりだ。