しばらくおとなしくしていたオイルが、先物市場で1ドル43セントも上がっている。何かと思えば、カリブ海に熱帯性低気圧が発生し、またフロリダやルイジアナ州が襲われる可能性があるからだという。「明らかに過剰反応です。こんな薄っぺらなニュースでの急騰ですから、投機家たちが単に買い煽っているだけです。長続きすることはないでしょう」、とマーケットストラテジスト、マイケル・カーティ氏は言う。
インフレ懸念が強いだけに、オイル価格上昇のニュースは、投資者にとって嬉しくない。人によっては、クルードオイル値上がり、と聞いただけで株式市場はダメだ、と結論してしまう。なぜか今日はやたらと弱気論が多いが、そんなに米国株式市場は見込みがないのだろうか。さっそく両者、ベアとブルの意見を聞いてみよう。
弱気になるのは難しくない。度重なる金利引き上げ、長期インフレ懸念、本格的な冬を前に暖房用灯油の値上がり、そして借金に首を絞められる消費者たち。探せば悪材料はまだいくらでもあるようだが、「私たちは今、ベアマーケットの入り口に立っています」、と語るのはR.W.ウェントウォース社のファイナンシャルアナリスト、トム・アウ氏だ。「歴史的に見ると、大統領選挙の翌年は、株式市場が低迷する傾向があります。特に1973年と1929年は大幅な下落となり、今回予想されるベアマーケットは深刻な下げになるだけでなく、2007年まで続くことでしょう。」
アウ氏と同様に悲観的なのは、ユーロ・パシフィック・キャピタル社のピーター・シフ氏だ。「暴落がありそうです。インフレは予想以上に大きな問題になるはずです。連銀は執拗に金利を引き上げ、そのため不動産マーケットは冷え込み、米国経済は不況に落ち込むことでしょう。」更にサイバートレーダー社のケン・タワー氏は、個人投資家たちの株に対する無関心を挙げている。「需給関係が株価を動かす基本ですが、こんな無関心な態度では、株は下がるしかありません。」
さて最後に、一人で十人分の力がある、ジム・クレーマー氏(ストリート・ドット・コム)の強気論を紹介しよう。「最近発表されたデータによれば、個人投資家による空売り量が、プロ(ディーラーやスペシャリスト)の空売り量の4倍に達しているという。素人の空売りが圧倒的に多いわけだが、ご存知のように素人が正しいことは滅多にない。インフレ、エネルギーコストなど心配事なら沢山あるが、もうこれ以上ブルからベアに転向する投資者は残っていないようだ。ここからマーケットは1000ポイント上がるとは思わないが、P&Gやマイクロソフトなどの優良株を中心に買っていきたい。」