レフコ、耳慣れない名前だ。メリルリンチやゴールドマンサックスならまだしも、レフコでは返答のしようがない。最高経営責任者が不正を犯して首になった、そんな程度の認識だったが、米国株式市場に、レフコはどうやら悪影響を与えるらしい。説明に入る前に簡単に記しておこう。レフコは全米最大の、独立系先物ブローカーだ。
長い話を短くすれば、レフコは経営破綻の危機に瀕している。原因はレフコ最高経営責任者、フィリップ・ベネット氏が、少なくとも4億3千万ドルの負債を隠していたことにある。先週火曜、ベネット氏は逮捕され、そして木曜、レフコはレフコキャピタルマーケッツを15日間閉鎖することを発表した。
レフコのスキャンダルは、エンロンや大手ヘッジファンド、ロングタームキャピタルマネージメントが引き起こしたようなパニックをマーケットに与えることはない。しかし、ファイナンシャル・ポリシー・フォーラム(マーケット調査会社)のランドール・ドッド氏はこう語っている。「レフコに、多額な出資をしている金融機関は数社以上あります。ですから、何らかの影響を株式市場に与えることでしょう。」
レフコが抱える口座は、単に個人トレーダーだけでなく、民間企業、米国政府機関、ヘッジファンド、そして年金ファンドがあり、口座数は20万を超える。2004年を振り返れば、先物金融派生商品で有名なシカゴ・マーカンタイル取引所で、レフコは最も多くの売買を行い、更に国債の現先取引では9兆ドル、為替市場では6800億ドルにおよぶ取引を行っていた。
現在取り調べが進んでいるが、最も大きな被害を受けるのはバンク・オブ・アメリカ、クレディ・スイス、そしてドイツ銀行のようだ。三社合計の融資額は8億ドルにおよび、債券発行による資金調達を含めれば、合計金額は約14億ドルにのぼる。言うまでもないが、レフコが連邦破産法に基いて破産手続きをしてしまえば、上記三社は長期間、資金を取り戻せなくなるわけだ。
ウォールストリートジャーナル紙によれば、シカゴ・マーカンタイル取引所は、ゴールドマンサックスや大手銀行にレフコ買収を要求したらしい。しかし、こんな状況では、大多数のレフコの口座は他社に移って行くことだろう。まだレフコの将来は分からない。だが、顧客を失ったブローカーを買う金融会社など存在しないはずだ。