株投資で最も重要なルールは何だろうか。機関投資家のコンサルタントとして知られるドナルド・ラスキン氏は、多数意見の逆を行くことだ、と言う。そんなことを聞くと、「人の行く裏に道あり、花の山」、を思い出される方もいることだろう。言葉、文化の違いはあっても、相場の基本は共通のようだ。ラスキン氏の話を続けよう。
「市場を独占する意見と正反対な行動をとることが鍵ですが、だからといって、私は大衆を愚か者扱いしているわけではありません。個人投資家たちは、情報の収集にとても熱心です。良い投資結果を上げるために、出来る限りの情報を集めようとします。しかし問題なのは、情報分析の結論が直ぐ株価に反映されてしまうことです。ですから、材料の織り込まれた株を買うことになり、大した利益を得ることができません。」
簡単に言えば、ラスキン氏は好材料を売って、悪材料を買うことを勧告しているわけだ。「ある会社の来期収益を懸念するニュースが流れたとしましょう。良くない材料ですから、当然この株は売られます。しかし、そんな時こそ買うべきなのです。たとえ一時的に大衆の見方が正しかったとしても、材料は株価にほとんど織り込み済みですから、まず大きな損を出すことはありません。株は素早く底を打ち、一転反発になることでしょう。」
現在のアメリカ株式市場を独占している話題は、オイルやガソリンに代表されるエネルギーセクターだ。個人投資家たちは、口を揃えてこんなことを言う。「オイルの需給バランスが直ぐに正常になることはありえない。大量に原油を消費する中国、製油所不足のアメリカ、ハリケーンによって破壊された海底オイル掘削装置、どう見てもOPECの供給する量だけでは現状を改善できない。だから、まだまだオイル銘柄は買える。」皆が知っているのだから、それらの情報は既に織り込み済みだろう。
最後に、もう一つラスキン氏の言葉を引用しよう。「あなたがどんなに多くのオイルや天然ガスの情報を集めても、それらは投資の好結果には結びつきません。極端に言えば、情報量が増えるほど、投資にはマイナスです。言うまでもありませんが、あなたがそこまで情報を集めることができたのですから、他の投資家も同様な情報を手に入れていることでしょう。もう全ては周知の事実です。株価に織り込まれていない材料は、もう無いのです。ですから、エネルギーセクターは買いではなく、売りです。」