昔、犬は残り物なら何でも食べた。ご飯に味噌汁でも問題はなかった。とにかく、残飯整理に犬は好都合だった。しかし、犬の健康に気が使われる時代になり、犬は栄養バランスのとれた、ドッグフードを食べるようになった。愛犬に滅多な物を食べさせるわかにはいかない、だからドッグフードは添加物無しだ。食後は犬と散歩に出かける。外は寒い。風邪をひいては大変だから、犬にはセーターを着せる。
ペットの健康管理に欠かせないのが動物病院だが、CNNの報道によれば、120億ドルにおよぶアメリカ獣医産業は、毎年7パーセントの割合で伸びているという。「アヒルの白内障手術、猫の腎臓移植、そんなことまでが動物病院で行われるようになりました。過去70年間を見てみると、ペットヘルスケア産業には不況がありません。人間の場合とは違い、獣医は医療過誤で訴えられるようなこともありません」、とペット産業アナリストのライアン・ダニエルズ氏は言う。
不景気知らずの産業、魅力的な響きだ。いったい、どんな銘柄があるのだろうか。ジェフリーズ&カンパニーのアナリスト、アーサー・ヘンダーソン氏の話を聞いてみよう。「ペットヘルスケアの主力は、ロサンゼルスに本拠地があるVCAアンテックです。積極的に動物病院の買収を展開し、現在経営する病院数は365にのぼります。第2四半期は22%の収益増を記録し、今月25日に発表される第3四半期決算では19%の伸びが予想されています。」
ペットヘルスケアを支えているのは、エンプティーネスターと呼ばれる子どものいない人たちだ。専門職につく若い世代から、子どもたちが家庭から去ったベビーブーマーが中心になり、皆ペットのためなら多額な金を使うことを拒まない。だからペットヘルス産業は、人間の病院も顔負けな設備を整えて、最新ペット医療にあたるわけだ。ダニエルズ氏は言う。「10年前なら、助かる見込みの無い犬は病院に連れていって永眠させてやったものです。しかし、ペット医療技術の発展で、飼い主たちはペットを難病から救うことが可能になりました。 人間とペットの結びつきが、よりいっそう深くなったかんじがします。」
エンプティーネスターの数は、これからも増えていくという。映画「ウォールストリート」の中で、マイケル・ダグラスの演じるゴードン・ゲッコーは、こんなことを言ったと思う。「友達が欲しければ犬を飼え。」ペットは単なる動物ではない。立派な家族の一員だ。旅行の時も、愛犬を同伴する人が増加しているから、ペットを許可するホテルも現れ始めた。米国ペット産業、ラッシーのようなブームは来るのだろうか。