先月5日、108円76銭だった米ドル/円相場だが、現在114円27銭で取引されている。ドル高になった理由として、ハリケーン・カトリーナがアメリカ経済に与える影響はごく限られていること。そしてシカゴ購買指数やISM指数を見て分かるように、下向きになると思われた米国製造業が、逆に予想以上の成長を示していること。更に短期的なドル買い理由としては、11月と12月に金利引き上げの可能性を示唆するフェデラルファンズ先物市場が挙げられる。
ドル買いを推奨するアナリストが多いことは言うまでもないが、ブルーンバーグ社の調べによると、47%におよぶ世界の主要銀行や証券会社のストラテジストは円買いを薦め、32%が円売りを薦めているという。特に「持続可能性が高い景気回復」、という3日に発表された日銀総裁の見解は、ディーラーたちの円に対する見方に変化を起こさせたようだ。リーマンブラザースのジェームズ・マコーミック氏は、「円は十分に下げ切ったと思います。日本経済も、順調な回復が始まったようです。あとは非正統的なゼロ金利政策の終わりを待つだけです」、と述べている。
47%の数字で分かるように、円買いは圧倒的主流意見というわけではない。「ここから円が買われたとしても、それは長続きしないでしょう」、とドイツ銀行のトレバー・ディンモア氏は言う。「たぶん円は、このレベルで横ばいすることになると思います。長期的に見れば、円は更に下がるはずです。たとえ一時的に円が上昇したとしても、日本の主要投資機関は米国債に資金を移すことでしょうから、どちらにしても円安方向に動くと思います。」
円買いか、それとも売りかで迷う人たちでも、話題が日本株になると態度は急変する。アイコンアジアパシフィックファンドのスコット・スナイダー氏を引用しよう。「現在の東京株式市場は、台湾に次ぐ割安市場です。株価収益率と金利に注目してください。経済回復の進む日本ですが、日銀総裁の話を聞く限り早急な金利引き上げはありません。現状のゼロ金利が継続されるわけですから、日本株はまだまだ上がります。オイル高が日本市場を崩す、そんな見方もありますが、それは日本の実情を知らない人の意見です。日本ほど節エネが徹底している国はありません。」
最後にスナイダー氏は、こんな注意をしている。「日本株が好調だからといって、日本株だけに投資をするミューチュアルファンドを買ってはいけません。大切なことは、日本も含めてアジアの国々に投資をするミューチュアルファンドを買うことです。これなら日本が下げても、他のアジアマーケットがクッションになります。」たしかに絶好調の東京市場、いつになったら消費者信頼感は上がるのだろう。