アウトソーシングと呼ばれる外部委託が当たり前の時世になった。おかげで職を失った、と憤慨する人たちが増えているが、企業側から見れば経費削減につながる重要な一対策だ。外注の行き先は、何と言ってもインドが圧倒的に多いが、AP通信からこんな報道があった。
テキサスに本拠地を置く、イフェクティブテレサービス社は、インドにコールセンターを設けて顧客サービスを行っている。コスト削減の一環として、米国企業は顧客サービス部門を、イフェクティブテレサービスのような会社に外注することが多い。
インドのイフェクティブテレサービスに勤務するマドハビ・パテルさんは、米国クレジットカード会社の顧客サービスを担当している。こんな物を買った覚えはない、請求書は間違っている、カードを失くしてしまった、そんな苦情や相談に応じるのがパテルさんの仕事だ。そしてハリケーン・リタが起きた。
ハリケーンに備えて、上陸が予想される州民のために、ハリケーン情報センターが急きょ設置されたのだが、何とその仕事を任されたのはパテルさんの所だった。総勢240名が働くパテルさんの職場へ、遠いアメリカから助けを求めて電話が殺到する。「救助隊はいつ来るのですか」、「近くの避難場所をおしえてください」、「近所のガソリンスタンドは、どこも売り切れでガソリンがありません。どこに行ったら手に入りますか」、「妹が行方不明です、、、」
もちろん、アメリカ人たちは電話がインドにかかっていることなど知らない。正確な情報さえ提供できれば会社の場所など問題ない、と言われる方もいると思うが、はたして何の支障も無かったのだろうか。ハリケーン情報センターの責任者の話によれば、2時間におよぶ説明会で、従業員には十分な情報が渡されたという。
突如のハリケーンで残業の続いたパテルさんだが、最後に彼女の言葉を記しておこう。「とても良い勉強になりました。チームワークの大切さをあらためて学んだだけでなく、困っている人々を助ける喜びも感じることができました。しかし世の中の人たちは、こんな私たちの働きがあったことなど全く知りません。」