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気になる統計

+1.4%、これが過去30年間の平均だ。2005年のマーケットも、あと2ヶ月でお仕舞い。クリスマスラリーを待望しておられる方も多いことだろう。ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によれば、11月のマーケットは年間12ヶ月を通して、月別で2番目という好成績をあげている。

上記の+1.4%は、過去30年間、S&P500指数が記録した11月の平均伸び率だ。同時期のダウ指数は+1.3%、そしてナスダック指数は+1.9%だから、これでどのマーケットを狙うべきかが分かる。もう一つ、アルマナック社からの統計を付け加えよう。過去14回の大統領選挙を振り返ってみると、選挙翌年の11月に下げたことは、たった3回しかない。

「マーケットは先週底を打ったと思います。投資者たちは、かなり悲観的になっていますから、ラリーが起きやすい下地が出来上がっています」、とウィーデン&カンパニーでリサーチアナリストを務める、スティーブン・ゴールドマン氏は言う。しかし、氏はこんな警告もしている。「国債市場を見てみると、10年債の利率が上昇し、ここ6ヶ月間で最高の水準に来ています。金利や高い灯油などのエネルギー価格は、株式市場に大きなチャレンジになるでしょう。」

早速だが、11月1日にはFOMC(連邦公開市場委員会)が予定されている。0.25ポイント(25ベーシスポイント)の利上げが予想され、短期金利は4%になる、というのが大方の見方だ。最近のタカ派的な連銀関係者の意見で分かるように、金利引き上げは11月で終わりになる可能性は低い。フェドファンズ(短期金利)先物市場を参考にするなら、マーケットは12月と1月にも金利引き上げを予測している。

最後に、少し気になるデータを記しておこう。たしかに11月は2番目に成績が良い月なのだが、それにはある前提がある。年末ラリーは、1月から10月までの伸び率に大きく影響される。最初の10ヶ月間の上昇率が10%以上なら、強い年末ラリーが期待できる。しかし10ヶ月間の伸びが4%以下なら、大したラリーを望めない。ここまでのS&P500指数を見てみると、ほぼプラスマイナス0だから、クリスマスラリーは控えめなものになりそうだ。

正確な数字は分からない、しかし大きな被害があったはずだ。そんな理由で、オレンジジュースの先物は、1ポンドあたり1ドル19セントを記録し、1998年12月の高値を突破した。全米8割のオレンジはフロリダで生産され、ハリケーン・ウィルマは、かなりの打撃を与えたらしい。「ダメージを受けたことは間違いありません。しかし、はっきりした損害額が分かるのは、あともう1、2週間先になるでしょう」、とベーシック・コモディティーズのケビン・シャープ氏は言う。

オレンジ生産者も、シャープ氏と同様な発言をしている。ハリケーン・ウィルマが襲ったフロリダ州南部には、ヘンドリー郡とコリアー郡の2大オレンジ生産地がある。オレンジ協会の発表によれば、停電や通信網の破壊が原因となり、まだ多くの農園と連絡がつかない状態だが、ここまで分かった範囲でも、約15%のオレンジの木が吹き飛ばされたようだ。

「問題なのは、ハリケーンの被害ではありません。シトラスキャンカーの蔓延です」、とオレンジ協会のケイシー・ペース氏は語る。シトラスキャンカー、柑橘類癌腫症と呼ばれるオレンジを蝕むバクテリアだ。このバクテリアは、主に風と雨によって運ばれ、去年のハリケーンシーズン頃から頻繁に見られるようになった。ペース氏によれば、去年フロリダは、シトラスキャンカーで約40%のオレンジを失っている。

米農務省のデータによると、フロリダは1億6900万箱のオレンジを去年生産した。これはペース氏の言うように、前年度を40%下回る生産量だ。はたして今年はどうなるかだが、農務省は去年を12%上回る、1億9000万箱を予想している。CKフューチャーズのクリス・クラフト氏は、「ハリケーンは去年の生産量を減らしただけではありません。暴風雨は木にストレスを与え、一本の木に実るオレンジ数を減らす原因にもなっています」、と述べている。

ハリケーンの被害は大きいが、それは一時的なものだ。しかし、シトラスキャンカーは、そう簡単に消えない。オレンジの木を醜く変形させ弱らせるシトラスキャンカーには、今のところ治療方法が無い。オレンジ協会のペース氏によれば、一旦シトラスキャンカーに感染すると7年間の月日が無駄になる。消毒のため2年間土地は使えなくなり、苗木が成長するには更に5年の月日がかかる。溜め息の出そうな話だが、あとは季節外れの寒さが来ないことを祈るばかりだ。

業績悪化とトイレの使用時間

48分。これは自動車労働組合の契約書に記されている、従業員が一日で許可されているトイレの使用時間だ。デトロイト・ニュース紙の報道によると、フォード・モーターは次のようなメモを、ミシガン州ウェイン市の工場に勤務する従業員に配布した。「多数の従業員が、規定されている一日48分までのトイレ使用時間を守ることができない。無駄な時間がトイレに費やされ、そのため生産に悪影響が出ている。」

更にメモには、自動車産業界の厳しい競争が強調され、管理職者は従業員のトイレ使用時間を監視することも書かれている。早速、こんな反論が出ている。「売上が下がったのは経営陣の責任です。私たちのトイレ使用時間には、何の関係もありません。」先週発表された決算によれば、第3四半期、フォードは1億9100万ドルの赤字だった。まさか、この損額全てがトイレ使用時間が原因とは思われない。

さて、48分が長すぎるかどうかは別として、株と言えば、長期投資型の人が多い。できれば、あまり知られていない有望な成長株を発掘して、安いところで買い込みたい。やがてアナリストもその銘柄を発見し、買い推奨が連発される。テレビや新聞でも話題になり、大衆がドッと買いに押し寄せる。株価は棒上げ状態になり、簡単に2倍になってしまう。こう上手く話しが進んだら最高だ。

大きく伸びそうな、長期投資用の株を見つけるには、6つのルールがある、とフール・ドット・コムのトム・ガードナー氏は言う。「投資者なら、ピーター・リンチという名前を聞いたことがあると思います。リンチ氏の本は100万冊以上売れてますから、氏の投資方法をご存知の方も多いはずです。しかし、問題なのは、多くの投資者はリンチ氏の方法を応用していません。私の守っている6つの投資ルールも、リンチ氏の考え方が根底にあります。」

それでは、6つのルールを紹介しよう。

1、小型成長企業に的を絞ること。リンチ氏はこう説明する。「大型優良銘柄が、そう簡単に2倍3倍になることはない。大幅上昇が期待できるのは小型株だ。」もちろん、バランスシートのしっかりした会社であることも忘れてはいけない。

2、速い成長スピード。売上や一株利益は、年間20%から30%以上の伸びがあること。

3、ありふれた会社名、退屈な製品、見捨てられた業界。好例はマスコ・コーポレーションだ。マスコと聞いても、何の会社か見当がつかない。マスコは水道の蛇口ハンドルを作る会社で、大衆を魅了するだけの話題性がない。もちろん、アナリストからも見捨てられた業界だ。だが、株価は100倍以上になっている。

4、まだ大手証券会社のアナリストによるレポートが無いこと。

5、インサイダーによる買い、自社株買戻しがあること。

6、一銘柄だけに集中投資しないこと。

リンチ氏の本は、「ピーター・リンチの株で勝つ」というタイトルで販売されている。

マーケットは揉み合いが続いている。今月末で会計年度が終わる大手ミューチュアルファンドが多く、月末ラリーを期待している投資者もいるが、思ったように上がらない。かと言って、売り手が喜んでいるわけでもない。こんな状況だから、普段はファンダメンタルズだけの人たちも、なんとか方向性をつかもうと、テクニカルアナリストの意見を聞くことになる。

「もしS&P500指数が1168、そしてナスダック指数が2025を割ると、米国株式市場はベアマーケットに入ります」、と語るのはシェイファーズ・インベストメント・リサーチ社のクリス・ジョンソン氏だ。「今、一般個人投資家がしなければいけないことは、慎重な持ち株の検討です。処分するべきものは直ぐ売り、次回の買いチャンスに備えて、十分な現金を口座に蓄えておくことが必要です」、と氏は付け加える。

ファンダメンタルズ中心主義の投資家は、とにかく迷っている。金利引き上げ政策は既に8回の裏まで来ている、と信じていたが、度重なる連銀関連者の意見からは延長戦しか読み取れない。決算シーズンも大詰めとなったが、ほとんどの企業は予想以上の収益を発表している。しかし、グーグルなどの一部を除いて、株価は全く好反応を示さない。そんなわけで、大局的な立場から見た現在のマーケット、そして予想される今後の動きなどを、さらにジョンソン氏に聞いてみよう。

「最初に指摘したいのは、マーケットは長期サポートレベルをテストしています。ナスダック指数とS&P500指数は、20月移動平均線の位置にあり、テクニカルアナリシスを重視する投資者や投機家が買っているわけです。ベアマーケットを避けるためには、両指数とも現在の位置から下落することは許されません。」正にサポートライン上で、売り手と買い手が綱引き状態になっているわけだが、ジョンソン氏はこんなことを言う。「数週間前と比較してみると、強気から弱気に転向する投資者が少し増えています。これは買い手に不利になりますが、今の膠着状態が最終的にどう動くかが、次の数ヶ月間のマーケット方向を決定する大きな要素になります。」

予想は好きでない、と言うジョンソン氏だが、今後の動きについて最後に語ってもらおう。「20月移動平均線が上昇している限り、マーケットはアップトレンドです。しかし、現在の20月移動平均線は上向きに陰りが見え、ダウントレンドに方向転換しそうです。既にダウ指数は20月移動平均線を割っています。同様なことがナスダックとS&P500に起きれば、即刻持ち株を処分し、空売りに専念するだけです。」

ハロウィーンを見守る小売業者

10月31日はハロウィーンだ。コスチュームで変装した子どもたちが、チョコレートやキャラメルを目当てに、各家庭のドアを叩く。CNNの報道によれば、今年人気のコスチュームはダースベーダーとバットマンだという。もちろん、子どもに混じって変装姿で近所を練り歩く大人もいる。ここで質問。大人たちが最も好むコスチュームは何でしょうか?正解は、子どもと全く同じだ。「スターウォーズをテーマにした衣装は、根強い人気があります」、とバイ・コスチュームズ・ドット・コムのハレム・ゲッツ氏は言う。

子ども、大人、もう一つ忘れていた。ハロウィーンに参加するのは人間だけではない。家族の一員、犬たちも変装行事に加わる。ハレム・ゲッツ氏を、もう一度引用しよう。「今年のハロウィーンの特徴は、ペット用コスチュームの売上が大きく上がっていることです。去年と比較すると、約120%の上昇です。」

コスチューム、チョコレート、キャラメル、いったいアメリカ人は、どの程度の金をそれらに費やすのだろう。全米小売業協会からのデータを紹介しよう。53.3%の消費者はコスチュームを購入し、平均コスチューム価格は31ドル88セント(約3600円)だ。コスチュームとキャラメルやチョコレートを合わせると、売上は33億ドルにのぼり、去年の売上高を5.4%上回ることが予測されている。

ハロウィーンで最も金を使う世代は、18才から24才の若者たちだ。金額に直せば、一人あたり50ドル75セントの出費になり、これは去年の額を30%も上回っている。クリスマスセールを占う意味で、ハロウィーンの売上は小売業者にとって重要だ。ガソリンやエネルギー価格の値上がりで、悲観視されていたハロウィーンセールだが、小売店オーナーたちは、ほっと一息ついていることだろう。

さて、子どもはチョコレートで満足だが、大人はそうはいかない。練り歩きに疲れた後は、家に帰って冷たいビールだ。そこで、最後にビールの話題を紹介しよう。ビールメーカーのクワーズ・ブルーイングは、ガソリンの代用になる、エタノールの生産を開始した。ビール製造後に残った廃棄物を、約2時間精製することでエタノールができるらしいが、ガソリン高に目をつけた面白いビジネスアイディアだ。

マサチューセッツ大学教授、ナシム・ニコラス・タレブ氏には、株トレーダーというもう一つの顔がある。著書Fooled By Randomnessは14ヶ国語に翻訳され、単にウォールストリートだけでなく、氏を信奉するビジネスマンは多い。また、エンピリカ社の会長を務めるタレブ氏は、投資家たちの資金運用も行っている。

さて、ここで氏の投資理念を明確に表す実験をしてほしい。用意するものは1枚のコイン。先ず、どちらを表にするか、裏にするかを決めよう。50回のコイン投げをするわけだが、表が出たらA、裏だったらBの要領で、1回投げ終わる度に記録してほしい。実験を始める前に、あなたの予想も書いておこう。1回目はA、2回目はB、3回目もB、そんな具合に予想を紙に書きとめるのだ。

あなたの予想と、実験結果を比較してみよう。予想の方が実際の結果より、もっとランダム(無作為)だったのではないだろうか。タレブ氏を引用しよう。「私は人間の作った予想リストと、実際のコイン投げ結果を簡単に見分けることができます。一般的に、予想リストにはA、A、A、A、といった長く同じ物が連続することはありません。」言い換えれば、現実には20回連続で裏が出ることもあり、ランダムな事象結果は意外とランダムに見えないものだ。

それでは、コイン投げと株投資を比較してみよう。もしあなたが、15回連続で表を出したとしよう。16回目は裏になるだろうか、それともまた表だろうか。確率は半々、しかし、あなたは自分には表を出す才能がある、と思い込むかもしれない。「ある投資家が、10年連続で好成績を上げたからといって、11年目もうまく行くとは限りません。同様なことが、企業の収益や経済についても言えます。過去の結果は、決して将来を予測しているわけではありません」、とタレブ氏は言う。

このように、タレブ氏の投資スタイルは、予測できない事態を想定することが基盤になっている。個別銘柄オプションを頻繁に利用するタレブ氏の手法は公表されていないが、氏はこんな例を挙げている。「現在60ドルのオイルですが、三年後は400ドルになっているでしょうか、それともたったの10ドルでしょうか。もちろん、そんな極端な数値を考えている人たちはいませんから、オプションを活用するわけです。」今まで見た白鳥が全て白だったからといって、黒い白鳥はいない、と結論できない。もう一つ、最後にタレブ氏を引用しよう。「川の平均深さが1メートルなら、その川を歩いて渡らないことです。」

投資者たちは、総立ちの拍手大喝采でグーグルの好決算を称賛した。339ドル90セント、+12.1%、で終了ベルを迎え、見事な高値の更新だ。グーグルがナスダック市場にデビューしたのは14ヶ月前、株価は85ドルだった。次々と新アイディアを発表し、収益は驚くペースで上昇している。こんな状況だから、アナリストたちは早速グーグルの目標株価を引き上げている。例を挙げれば、UBS証券は375ドルから430ドル、そしてファーストアルバニーは363ドルから450ドルに新ターゲットを設定だ。

決算シーズン真っ最中のアメリカ、S&P500指数に属する企業の160社が既に決算発表を終えている。110社はアナリストの予想を上回り、25社は予想以下、そして残りの25社は予想どおりだった。テクノロジー銘柄だけに焦点を合わせると、20社は予想以上の収益、5社は予想と一致の伸び、ガッカリな結果だったのはインテルの1社だけだ。しかし、これらのアップビートな決算報告にもかかわらず、肝心なマーケットは前向きな反応を示さない。正に投資者は、悪材料だけに注意を払っているわけだ。

多くの心配事を抱えたマーケットだが、ストック・トレーダーズ・アルマナック社の統計によれば、10月のマーケットが苦しいと、11月は一転反発ラリーが起きやすいという。「月末から来月にかけて、マーケットが上昇することは十分に考えられます。現在のマーケットは極度に売られ過ぎなレベルにあり、季節的にも、ここからは買い手が有利になる時期です」、とウィンダム・ファイナンシャル社のポール・メンデルソン氏は言う。

はたして年末ラリーは本当に訪れるのだろうか。メンデルソン氏は、更にこう付け加える。「一つ問題があります。マーケットの主役、ファンドや機関投資家から、まだサインが見えないのです。マーケットが上がるためには、成績の悪いセクターに属する株を売って、その資金を有望なセクターに移す必要があります。これがセクターローテーション、と呼ばれるものですが、今のところ明確な動きを機関投資家から読み取ることができません。」

金利、インフレ、エネルギーコスト、これらが積極的なセクターローテーションを阻んでいる理由だが、今週は重要な週になりそうだ。火曜には住宅販売数が発表される。不動産冷え込みを懸念する声が聞こえるようになった今日この頃だが、アナリストたちは年間ベースで住宅売上は、729万件から720万件への下落を予想している。さらに火曜には、消費者信頼感指数も控えている。木曜は耐久消費財、金曜は最も注目される第3四半期のGDP(国内総生産)がある。今年のマーケットも、残すところ2ヶ月と少し。ウォールストリートにサンタクロースは現れるだろうか。

ウォールストリートで最も熱狂的な男、人はそうジム・クレーマー氏を呼ぶ。とにかく型破りなのだ。半分禿げ上がった頭は汗で光り、全くおとなしく話すことができない。いきなり椅子を床に叩きつけたり、とんでもない奇声を上げる。これが株番組なのだから、本当に世の中は変わった。

今年50歳になるクレーマー氏、ウォールストリートの表も裏も知り尽くしている。80年代、ゴールドマンサックスで経験を積んだ後、ヘッジファンドマネージャーに転向した。4億5000万ドルの資金を14年間運用し、成績は毎年24%のリターンを下ることはなかったという。これだけの好成績だから、クレーマー氏の個人資産も大きく増えた。しかし、優雅な隠居生活など、氏の頭にはない。

クレーマー氏の一日は午前3時45分に始まる。人気テレビ番組「マッド・マネー」、それ以外にもラジオ、コラムの執筆に追われ、仕事に一段落がつくのは午後7時頃だ。今、アメリカで投資と言えば、だれもが不動産を話題にし、株は厳しい環境におかれている。それにもかかわらず、なぜクレーマー氏は株式市場に異常な情熱を燃やすのだろうか。

ビジネスウィークとのインタビューで、氏はこんなことを語っている。「今日のアナリストたちは無色無臭、何の味もありません。テレビやラジオの株番組も同じです。企業の悪を暴くことばかりに夢中になり、大衆に役立つ情報を全く流していません。」少し説明しよう。アナリストがそうなってしまったのは、90年代のブルマーケットが原因になる。特にエンロンに見ることができるように、正当評価額を無視して、アナリストはエンロンが倒産する直前まで買い推奨を連発した。当然な結果として、アナリスト=嘘つき、の公式が出来上がってしまったわけだ。クレーマー氏の話に戻ろう。

「よくアナリストは、ニュートラル(中立)という格付けを発表します。そんなものは格付けではありません。」そのとおりだと思う。長いレポートを読まされて、その結果が「ニュートラル」では時間の浪費と言うしかない。アメリカだけに限らず、大衆が求めているのは使える情報だ。株の世界だから、当たり外れがある。しかし、クレーマー氏が人気者になった秘密は単刀直入に「買え」、「売れ」、と叫ぶからだ。「まだそんなモノ持っているのか、売れ!」スタイルに問題があるかもしれない。だが優等生アナリストの多い今日、一段と光るクレーマー氏だ。

超弱気論、少し強気論

ダウ指数の第2波は4時間前に終了し、第3の下げ波動が始まろうとしている。この波動は暴落へと続き、ハロウィーン頃がクライマックスになる。そして、ダウ指数は第4波、劇的な3日間のラリーを展開する。しかし次の第5波は、ハロウィーンに記録した安値を割ることになるだろう。投資者に勧告する。株を現金化せよ。投機家に勧める。空売りを実行せよ。これは、水曜午前9時、エリオットウェーブセオリスト(株情報誌)のボブ・プレクター氏が出した警報だ。

さらに、エリオットウェーブファイナンシャルフォーキャスター紙も、プレクター氏と同様な発表をしている。現在、ダウ指数チャート上にはダイヤモンドが形成され、もし10300ドルを割ってしまうと、ダウは数千ドル下げる、というのが要点だ。しかし、水曜、ダウは猛烈なラリーを展開し、128ドル高という勢いを見せた。さっそく上記二者を批難する声が上がっているが、何故そこまで悲観的な見方をするのだろうか。経済ジャーナリスト、ピーター・ブリムロー氏の話を聞いてみよう。

「極端な弱気論は、五つの事が原因になっていると思われます。

1、最近増え続けている下げ銘柄数。
2、好調だった電気ガスセクターの一転反落。
3、2003年から始まった上げ波動の終了。
4、重要なフィボナッチ比率に達している指数。
5、いまだに強気すぎる個人投資家。

もう一つ付け加えれば、テクニカル分析の古典、テクニカルアナリシス・オブ・ストックトレンドには、ダイヤモンドは極めて稀なパターンであり、これは非常に大きな下げの前に形成される、と書かれています。」

上記二者ほど極論ではないが、最後に以前フィデリティーでヘッドトレーダーを務めた、ケビン・ハガティ氏の見方を記しておこう。「S&P500指数の月足チャートですが、上昇するウェッジパターンからのブレイクダウンが見られます。ミューチュアルファンドは、株を売ってポートフォリオ内の株が占める比重を減らしていることでしょう。これでマーケットは更に売られ過ぎの状態にまりますが、11月からは株の上がりやすいサイクルが始まります。けっきょく機関投資家の参入となり、年末ラリーが展開されることでしょう。」

インフレ、膨大な財政赤字、エネルギー価格、ハリケーン、支持率低下の大統領、上昇する金利、差し迫るグリーンスパン氏の任期切れ、と不安材料ばかり並べたが、米国株式市場はこんな憂鬱な状態から簡単に抜け出すことができるのだろうか。ここで紹介したいのが、ビジネスウィーク誌が行った、ベンチャーキャピタリストとして知られるトム・タウリ氏のインタビューだ。

「これほど株に対して悲観的になったは、もういつのことだったか覚えていません」、とタウリ氏は言う。「アメリカがインフレに悩んだのは70年代、まだ私がティーンエージャーになる前ですが、まさに今のアメリカは、その70年代に戻ろうとしています。こんな時は守備に力を入れることが大切ですから、私は多数の持ち株を処分してマネーマーケットファンドに移しました。」

さすがに警戒論を唱えるタウリ氏、株の現金化を進めているようだが、全ての持ち株を売りました、とは言っていない。現在のようなマーケット環境で、買える銘柄があるのだろうか。「強調したいのは、現状で小型株に手を出すことは控えなければいけません。今は大型株だけに焦点を合わせるべきです。もちろん、マーケットが崩れてしまえば、大型株にも被害が出ます。ですから、個別銘柄を選ぶ前に、どの業種が良いのかを見極める必要があります。」

さて、タウリ氏は実際にどんな銘柄を投資対象として考えているのだろうか。「全体の流れとして、オイルは上昇基調です。競争相手も少ないですから、エクソン・モービルのような巨大オイル会社は買いです。単に株価の上昇だけでなく、エクソン・モービルの場合、配当金も魅力的です。簡単に言えば、テーマは商品です。とにかく、商品市場に関連した銘柄を選ぶことが重要です。」

最後に、もう一つ注目される分野を記しておこう。先週のトルコやルーマニアからのニュースで分かるように、鳥インフルエンザが問題になっている。人間に感染した場合、二人に一人の割合で死者が出る、といわれる恐ろしい病気だ。もし人間への伝染が始まれば、間違いなく経済に大きなダメージを与える。そんなわけで製薬会社を狙うわけだが、今回の鳥インフルエンザではGilead Sciences、Roche、Biota、そしてGlaxoSmithKineなどが有力候補だ。

ここ15年間で最悪、そんな見出しで卸売物価指数の大幅上昇が報道されている。アナリストは1.2%増を予想していたが、ガソリン、天然ガス、そして灯油の急騰を受けて、実際に発表された数値は+1.9%だった。先週出された消費者物価指数も大きな跳ね上がりだったから、これでますますインフレ懸念が高まってしまった。

このような状況では金利引き上げに終わりは来ない、と思ってしまうが、ピムコ(大手債券ファンド)のビル・グロス氏はCNBCのインタビューでこんなことを言った。「連銀は短期金利を4%から4.25%に上げた時点で、金利引き上げ政策を一時停止することが考えられます。」現在の短期金利は3.75%だから、次回(11月1日)の連邦公開市場委員会が最後の利上げになる可能性があるわけだ。

グロス氏がそんな見方をするのも、昨夜東京でのスピーチで、グリーンスパン氏が高エネルギーコストが世界経済に与える悪影響を言及したのが理由の一つかもしれない。さてこのエネルギーコスト、具体的に言えば高くなったガソリンだが、フランスでも大きな頭痛になっている。信じられないような話だが、USAトゥデイからのニュースを紹介しよう。

フランスでは、料理に使う油を車のガソリンタンクに入れることが法律で禁止されている。しかし、1ガロン(3.785リットル)5ドル90セントにまでガソリンが値上がってしまった今日、エリック・ニアキサさん(学生)は、この法律を破る決心をした。「最初は心配だったので、1リットルの料理用油で試してみました。数週間運転してみましたが、車は大丈夫です。今はガソリンと料理用油半々で走っています。これで少なくとも、月々30ドルのガソリン代が節約できます。」

しかし、料理用の油で車が走るとは知らなかった。それにしても、どんな経緯でフランスに、そんな法律ができたのだろう。さて、ここで質問。ニアキサさんの使っている料理用油の名前は何でしょうか。そして運転している車の名前は何でしょうか。解答、Colzaが料理用油の名前、ニアキサさんは2002年型のSkoda Fabiaを運転している。月々30ドルの節約、何か膨大な修理費が待っているような気がする。

ブルの言い分、ベアの言い分

しばらくおとなしくしていたオイルが、先物市場で1ドル43セントも上がっている。何かと思えば、カリブ海に熱帯性低気圧が発生し、またフロリダやルイジアナ州が襲われる可能性があるからだという。「明らかに過剰反応です。こんな薄っぺらなニュースでの急騰ですから、投機家たちが単に買い煽っているだけです。長続きすることはないでしょう」、とマーケットストラテジスト、マイケル・カーティ氏は言う。

インフレ懸念が強いだけに、オイル価格上昇のニュースは、投資者にとって嬉しくない。人によっては、クルードオイル値上がり、と聞いただけで株式市場はダメだ、と結論してしまう。なぜか今日はやたらと弱気論が多いが、そんなに米国株式市場は見込みがないのだろうか。さっそく両者、ベアとブルの意見を聞いてみよう。

弱気になるのは難しくない。度重なる金利引き上げ、長期インフレ懸念、本格的な冬を前に暖房用灯油の値上がり、そして借金に首を絞められる消費者たち。探せば悪材料はまだいくらでもあるようだが、「私たちは今、ベアマーケットの入り口に立っています」、と語るのはR.W.ウェントウォース社のファイナンシャルアナリスト、トム・アウ氏だ。「歴史的に見ると、大統領選挙の翌年は、株式市場が低迷する傾向があります。特に1973年と1929年は大幅な下落となり、今回予想されるベアマーケットは深刻な下げになるだけでなく、2007年まで続くことでしょう。」

アウ氏と同様に悲観的なのは、ユーロ・パシフィック・キャピタル社のピーター・シフ氏だ。「暴落がありそうです。インフレは予想以上に大きな問題になるはずです。連銀は執拗に金利を引き上げ、そのため不動産マーケットは冷え込み、米国経済は不況に落ち込むことでしょう。」更にサイバートレーダー社のケン・タワー氏は、個人投資家たちの株に対する無関心を挙げている。「需給関係が株価を動かす基本ですが、こんな無関心な態度では、株は下がるしかありません。」

さて最後に、一人で十人分の力がある、ジム・クレーマー氏(ストリート・ドット・コム)の強気論を紹介しよう。「最近発表されたデータによれば、個人投資家による空売り量が、プロ(ディーラーやスペシャリスト)の空売り量の4倍に達しているという。素人の空売りが圧倒的に多いわけだが、ご存知のように素人が正しいことは滅多にない。インフレ、エネルギーコストなど心配事なら沢山あるが、もうこれ以上ブルからベアに転向する投資者は残っていないようだ。ここからマーケットは1000ポイント上がるとは思わないが、P&Gやマイクロソフトなどの優良株を中心に買っていきたい。」

レフコ、耳慣れない名前だ。メリルリンチやゴールドマンサックスならまだしも、レフコでは返答のしようがない。最高経営責任者が不正を犯して首になった、そんな程度の認識だったが、米国株式市場に、レフコはどうやら悪影響を与えるらしい。説明に入る前に簡単に記しておこう。レフコは全米最大の、独立系先物ブローカーだ。

長い話を短くすれば、レフコは経営破綻の危機に瀕している。原因はレフコ最高経営責任者、フィリップ・ベネット氏が、少なくとも4億3千万ドルの負債を隠していたことにある。先週火曜、ベネット氏は逮捕され、そして木曜、レフコはレフコキャピタルマーケッツを15日間閉鎖することを発表した。

レフコのスキャンダルは、エンロンや大手ヘッジファンド、ロングタームキャピタルマネージメントが引き起こしたようなパニックをマーケットに与えることはない。しかし、ファイナンシャル・ポリシー・フォーラム(マーケット調査会社)のランドール・ドッド氏はこう語っている。「レフコに、多額な出資をしている金融機関は数社以上あります。ですから、何らかの影響を株式市場に与えることでしょう。」

レフコが抱える口座は、単に個人トレーダーだけでなく、民間企業、米国政府機関、ヘッジファンド、そして年金ファンドがあり、口座数は20万を超える。2004年を振り返れば、先物金融派生商品で有名なシカゴ・マーカンタイル取引所で、レフコは最も多くの売買を行い、更に国債の現先取引では9兆ドル、為替市場では6800億ドルにおよぶ取引を行っていた。

現在取り調べが進んでいるが、最も大きな被害を受けるのはバンク・オブ・アメリカ、クレディ・スイス、そしてドイツ銀行のようだ。三社合計の融資額は8億ドルにおよび、債券発行による資金調達を含めれば、合計金額は約14億ドルにのぼる。言うまでもないが、レフコが連邦破産法に基いて破産手続きをしてしまえば、上記三社は長期間、資金を取り戻せなくなるわけだ。

ウォールストリートジャーナル紙によれば、シカゴ・マーカンタイル取引所は、ゴールドマンサックスや大手銀行にレフコ買収を要求したらしい。しかし、こんな状況では、大多数のレフコの口座は他社に移って行くことだろう。まだレフコの将来は分からない。だが、顧客を失ったブローカーを買う金融会社など存在しないはずだ。

株投資で最も重要なルールは何だろうか。機関投資家のコンサルタントとして知られるドナルド・ラスキン氏は、多数意見の逆を行くことだ、と言う。そんなことを聞くと、「人の行く裏に道あり、花の山」、を思い出される方もいることだろう。言葉、文化の違いはあっても、相場の基本は共通のようだ。ラスキン氏の話を続けよう。

「市場を独占する意見と正反対な行動をとることが鍵ですが、だからといって、私は大衆を愚か者扱いしているわけではありません。個人投資家たちは、情報の収集にとても熱心です。良い投資結果を上げるために、出来る限りの情報を集めようとします。しかし問題なのは、情報分析の結論が直ぐ株価に反映されてしまうことです。ですから、材料の織り込まれた株を買うことになり、大した利益を得ることができません。」

簡単に言えば、ラスキン氏は好材料を売って、悪材料を買うことを勧告しているわけだ。「ある会社の来期収益を懸念するニュースが流れたとしましょう。良くない材料ですから、当然この株は売られます。しかし、そんな時こそ買うべきなのです。たとえ一時的に大衆の見方が正しかったとしても、材料は株価にほとんど織り込み済みですから、まず大きな損を出すことはありません。株は素早く底を打ち、一転反発になることでしょう。」

現在のアメリカ株式市場を独占している話題は、オイルやガソリンに代表されるエネルギーセクターだ。個人投資家たちは、口を揃えてこんなことを言う。「オイルの需給バランスが直ぐに正常になることはありえない。大量に原油を消費する中国、製油所不足のアメリカ、ハリケーンによって破壊された海底オイル掘削装置、どう見てもOPECの供給する量だけでは現状を改善できない。だから、まだまだオイル銘柄は買える。」皆が知っているのだから、それらの情報は既に織り込み済みだろう。

最後に、もう一つラスキン氏の言葉を引用しよう。「あなたがどんなに多くのオイルや天然ガスの情報を集めても、それらは投資の好結果には結びつきません。極端に言えば、情報量が増えるほど、投資にはマイナスです。言うまでもありませんが、あなたがそこまで情報を集めることができたのですから、他の投資家も同様な情報を手に入れていることでしょう。もう全ては周知の事実です。株価に織り込まれていない材料は、もう無いのです。ですから、エネルギーセクターは買いではなく、売りです。」

全米平均の30年住宅ローン利子が6.03%に達し、とうとう6%を上回った。これで不動産マーケットの冷え込みが確実だ、そんな声も聞こえてくる。一年前の利子は5.74%だったから、5%台が6%台に入ると、何か途方も無く上がったような感じがする。「二つのハリケーンにもかかわらず、先週発表された雇用統計には、予期されたような悪い結果は見られませんでした。逆に2006年度の経済成長速度は上がりそうですから、オイルなどのエネルギーコストを重ねて考えると、住宅ローン金利はさらに上昇することでしょう」、とエコノミストのフランク・ノサフト氏は言う。

2006年の終わりまでに、住宅ローン金利は6.7%になる、といった見方が多いようだが、はたしてこの金利は高すぎるだろうか。歴史を振り返ってみよう。1990年代、30年住宅ローン金利の平均は8.12%だった。80年代は12.70%という高い水準にあり、インフレが横行した81年には18.45%という高レベルが記録された。言うまでもなく、80年代の住宅売上は最悪な状態だった。

インフレ懸念が住宅ローン金利上昇に弾みをつけている、ということになるが、度重なる金利引き上げにもかかわらず、なぜ住宅ローンは低金利を保つことができたのだろう。全米不動産業協会のエコノミスト、ローレンス・ユン氏の説明によれば、インフレ予防は万全と信じきっていた投資者たちが、ここに来て高騰するエネルギー価格に動揺してしまったためだという。

実際のところ、住宅ローンは何パーセントになったら売上に響くのだろう。エコノミー・ドット・コムのジェスター氏は6.5%をキーポイントに設定している。8月、全米の中間住宅価格は21万9400ドルだった。この住宅を現行の6.03%の金利で30年ローンを組むと、月々の支払いは1320ドルになる。もし金利がジェスター氏の言う6.5%に上がると、支払額は1387ドルに上昇する。円に換算すれば、毎月約7600円余分に要ることになるが、この額は不動産市場を減速させるだけの重荷になりえるのだろうか。

金利ばかりを話してしまったが、最後にもうひとつ指摘したいのが、上昇の続く住宅価格だ。特にカリフォルニアの値上がりが激しく、86%の人たちには住宅を購入できるだけの収入がない。若い世代にとって、マイホームは単なる夢になってしまった。金利の上昇、そして上がりすぎた住宅価格、やはり米国不動産は天井のようだ。

昔、犬は残り物なら何でも食べた。ご飯に味噌汁でも問題はなかった。とにかく、残飯整理に犬は好都合だった。しかし、犬の健康に気が使われる時代になり、犬は栄養バランスのとれた、ドッグフードを食べるようになった。愛犬に滅多な物を食べさせるわかにはいかない、だからドッグフードは添加物無しだ。食後は犬と散歩に出かける。外は寒い。風邪をひいては大変だから、犬にはセーターを着せる。

ペットの健康管理に欠かせないのが動物病院だが、CNNの報道によれば、120億ドルにおよぶアメリカ獣医産業は、毎年7パーセントの割合で伸びているという。「アヒルの白内障手術、猫の腎臓移植、そんなことまでが動物病院で行われるようになりました。過去70年間を見てみると、ペットヘルスケア産業には不況がありません。人間の場合とは違い、獣医は医療過誤で訴えられるようなこともありません」、とペット産業アナリストのライアン・ダニエルズ氏は言う。

不景気知らずの産業、魅力的な響きだ。いったい、どんな銘柄があるのだろうか。ジェフリーズ&カンパニーのアナリスト、アーサー・ヘンダーソン氏の話を聞いてみよう。「ペットヘルスケアの主力は、ロサンゼルスに本拠地があるVCAアンテックです。積極的に動物病院の買収を展開し、現在経営する病院数は365にのぼります。第2四半期は22%の収益増を記録し、今月25日に発表される第3四半期決算では19%の伸びが予想されています。」

ペットヘルスケアを支えているのは、エンプティーネスターと呼ばれる子どものいない人たちだ。専門職につく若い世代から、子どもたちが家庭から去ったベビーブーマーが中心になり、皆ペットのためなら多額な金を使うことを拒まない。だからペットヘルス産業は、人間の病院も顔負けな設備を整えて、最新ペット医療にあたるわけだ。ダニエルズ氏は言う。「10年前なら、助かる見込みの無い犬は病院に連れていって永眠させてやったものです。しかし、ペット医療技術の発展で、飼い主たちはペットを難病から救うことが可能になりました。 人間とペットの結びつきが、よりいっそう深くなったかんじがします。」

エンプティーネスターの数は、これからも増えていくという。映画「ウォールストリート」の中で、マイケル・ダグラスの演じるゴードン・ゲッコーは、こんなことを言ったと思う。「友達が欲しければ犬を飼え。」ペットは単なる動物ではない。立派な家族の一員だ。旅行の時も、愛犬を同伴する人が増加しているから、ペットを許可するホテルも現れ始めた。米国ペット産業、ラッシーのようなブームは来るのだろうか。

応用したい投資実験結果

デルタ航空、ノースウエスト航空、デルファイ、どれも連邦破産法に基いて、会社更生手続きの申請をした企業だ。ミシガン州に本拠地を置くデルファイ社は、従業員数18万5000人の大手自動車部品メーカーだが、この破綻でゼネラルモータースが向こう2年間で倒産する確率は、10%から30%に上がったという。

会社と心中を覚悟して、奇跡的なカムバックに賭けることもできるが、それでは投資としてリスクが大きすぎる。それよりも大切なのは、最初からデルタ航空のような企業を避けて、経営内容の優れた会社を選ぶことだ。一口に経営内容といっても、売上高、収益、人事、製品開発などと、調べなくてはいけないことが山とある。もちろん、全ての事項を一つ一つ検討していたら膨大な時間がかかってしまう。そこで紹介したいのが、ある指標を使った単純な投資実験だ。

事の発端は、投資アドバイザー、ロブ・ハンナ氏が発表したデータにある。テストに使われたのはS&P500指数、そしてテスト期間は2005年9月30日までの過去15年間だ。テストを具体的に説明しよう。

テスト1、

A、今日の終値は少なくとも5日前の終値より2パーセント低いこと。
B、今日の終値は200日移動平均線のにあること。

上記A、Bの両条件が満たされたらS&P500指数を買って、五日後の終値で売る。

テスト2、

A、今日の終値は少なくとも5日前の終値より2パーセント低いこと。
B、今日の終値は200日移動平均線のにあること。

以上2つの条件が揃ったらS&P500指数を買って、五日後の終値で売る。

結果を見てみよう。

テスト1、

総トレード回数:96
勝率:70%
総利益:825.78ポイント

テスト2、

総トレード回数:83
勝率:53%
総利益:165.32ポイント

たしかに両方とも利益が出ている。しかし、指数が200日移動平均線の上か下かで儲けが大きく違う。もし日足チャートに一つだけ指標を入れるなら、それは200日移動平均線だ。

インフレより怖いもの

米国短期金利は予想以上に上がる。それが大手銀行、証券会社のアナリストが出した結論だ。「たしかにインフレ懸念はあるのですが、マーケットはそれを無視し続けてきました。しかし、ここに来て、投資心理に変化が見られます」、と語るのはウィンダムファイナンシャルのポール・メンデルソン氏だ。今週から本格的な決算シーズンが始まるが、メンデルソン氏は、更にこう付け加える。「企業は、上昇するエネルギーコストに、これ以上耐えるのは難しくなってきました。製品の値上げに踏み切るところが増えることでしょう。」

ロイターの報道によれば、14人の著名アナリストは、少なくともあと三回の金利引き上げを予測している。これは現行3.75%のフェデラルファンズが、4.5%になることを意味し、一ヶ月前に出された4.25%、という予想を上回っている。ゴールドマンサックスのジャン・ハットジウス氏は、「連銀の態度は明白です。金利引き上げ政策が、そう簡単に終わることはありません」、と述べ、金利が4.5%で止まらない可能性を示唆している。

しかし、今日のアメリカはインフレよりも怖いものを抱えている、と経済コラムニストのマーシャル・ローブ氏は言う。その結果、2006年、米国経済は不景気に陥ることもあるらしい。「財政浪費が、米国経済を大きく減速させることになるでしょう。連邦政府の赤字は、一世帯あたり45万ドルにもおよぶのです。毎年平均で、3%から4%の経済成長のあったアメリカですが、2006年に同様な伸びを期待するのは無理です。」

財政浪費という言葉をローブ氏は使っているが、これは大統領の不適切な国家予算の割り当て方を指しているようだ。「イラク再建のためにアメリカは、2005年の終わりまでに、2000億ドル以上の金を使うことになるでしょう。更に大統領は、ハリケーン被害のあった州に、約1500億ドルの援助も実行しようとしています。これで連邦政府の負債額は、7兆3000億ドルから8兆2000億ドルに跳ね上がることでしょう。金利の上がり続ける今日、政府は膨大な赤字を抱えているのです。経済学者でなくても、これがどんな結果になるかは想像できると思います。」

お先真っ暗な話だが、ローブ氏によれば、上昇する金利の影響を受けて、不動産バブル破裂も近いようだ。値上がりの大きかった物件だけに、下げ方は2000年に襲った株式ベアマーケットに匹敵する可能性もあるらしい。とにかく、節約と適切な投資で赤字の穴埋めが先決だが、今のアメリカ、全く具体的な対策が無い。まだ先になるが、ブッシュ大統領の共和党、このままだと中間選挙は大きく負けそうだ。

株投資最高の武器

プルーデンシャル証券が、テクニカルリサーチ部門の閉鎖を発表したのは先週のことだった。広報担当のジム・ゴーマン氏は、現在の米国株式市場環境、そして変化する顧客ニーズが閉鎖の原因、と説明している。おかげで、人気テクニカルアナリスト、ラルフ・アカンポラ氏が失業してしまったが、これでプルーデンシャル証券は、ファンダメンタルズだけで株を分析することになった。

チャートやインディケーターを使って株を分析するテクニカルアナリシスを嫌う投資家もいることは事実だが、テクニカルリサーチ部門が存在しない証券会社では、適切なマーケット分析をすることはできない。アカンポラ氏が有名になった理由は、1997年、ダウ指数1万ドルを、だれよりも先に予測したからだ。(その時ダウは7200ドル台だった。)

ここで紹介したいのが、テクニカルアナリシスのベテラン、ロバート・コルビー氏だ。早速、氏の言葉を引用しよう。「今日でも、多数の投資者はファンダメンタルズを重要視する傾向があります。ファンダメンタルズを利用することで、安く買って高く売ることが可能と考えているようですが、彼らのしていることは正反対です。正当評価額より現在の株価は低いから買いだ、そんな事を言って買いに走るのですが、株価はますます下がる一方です。どんなに魅力的なファンダメンタルズでも、トレンドを無視していたのでは利益を上げることはできません。」

一口にテクニカルインディケーターと言っても、MACD、ストキャスティクス、RSI、モメンタム、と数多くある。はたして、どれが一番使いものになるのだろうか。コルビー氏の意見を聞いてみよう。「たとえば人気のある200日移動平均線ですが、これは今日でも投資にとても有効な移動平均線です。買いは200日移動平均線の上にある銘柄だけに限る、こんな単純なルールを守るだけで、いつも大きなトレンドに乗ることができます。」

さらに氏の分析結果によれば、5日エクスポネンシャル移動平均線が、株投資最高の武器だ。5日エクスポネンシャル移動平均線を利用した投資家は、単に買って持ち続ける投資家の利益を76万6千倍も上回った。また、出来高の上昇度を分析するだけでも、2万4000倍の利益を得ることができた。テクニカルインディケーターを無視した株投資などありえない。しかしプルーデンシャル証券は、こともあろうにテクニカルリサーチ部門を廃止してしまったのだ。

まだ10月だ、と言われるかもしれないが、米国小売業界はクリスマスシーズンの売上を心配している。主な小売銘柄を見てみると、ホームデポは7月の頂点から13%の下落、ウォルマートは7月の高値から15%の下げ、そしてターゲットもホームデポと同様な動きを示し、投資者たちも小売業界には悲観的な態度を表している。

クリスマスの売上が懸念されるのは、オイルの値段が大きく上がり、燃料費が各家庭に負担となり始めているためだ。そろそろ冬がやって来る。灯油の値段も上昇しているから、間違いなく、今年の暖房費は昨年を大幅に上回ることだろう。おまけにガソリンも高い。これでは出費が重なるばかりで、クリスマスプレゼントどころではない。

「ちょっと待ってください、その考え方はあまりにも短絡的です」、というのは経済ジャーナリストのマイケル・ブラッシュ氏だ。「確かに消費者は、ガソリンスタンドへ行く度に、値段を見て溜め息をついていることでしょう。しかし実際は、燃料費が消費者に与える影響は、さほど大したものではありません。ガソリン代、灯油代などで出費がさらに10%増えたとしても、それは単に6.1%の手取り収入にすぎません。」

エコノミストのエド・ヤーデニ氏は、こんな見方をしている。「エネルギー価格の上昇は一部の業界、特に航空会社に打撃を与えることは目に見えています。一般消費者ですが、影響を受けるのは低所得家庭です。ですから低価格商品を専門に扱う、ローエンド小売業者の売上が落ち込むことになるでしょう。低所得家庭を除けば、現在のエネルギー価格は全く問題にならないと思います。」

ガソリンやオイルが思ったほどの悪影響でないなら、小売株は買えるのだろうか。ここで考慮しないといけないのが、個人消費を支えてきた不動産バブルだ。物件が値上がっているから、銀行からは簡単に金を借りることができる。その借りた金で、車や大画面のデジタルテレビが購入されてきたわけだが、ヘッジファンドマネージャーのビル・フレッケンスタイン氏によれば、不動産マーケットは6月が天井になった可能性があるという。

なら、小売銘柄には手を出さない方がいいのだろうか。今は待つのが正解だと思う。小売セクター指数は、下げ基調の見本のような日足チャートだ。とにかくトレンドラインが突破できるまで、焦らずに様子を見たい。

ワールドシリーズへの出場権をかけて、火曜から大リーグのプレーオフが始まった。水曜の試合ではシカゴ・ホワイトソックスの井口選手が逆転3ラン本塁打を放ち、あと1勝でリーグ優勝決定シリーズに進出できる。以前は野茂選手の姿しか見られなかった大リーグだが、松井選手のいるヤンキースを、日本から応援している人たちもいることだろう。

さて人気のプレーオフだが、CNNの報道によれば、これは企業側にとって一時的に嬉しくないイベントのようだ。振り返ってみると、火曜の第一試合、セントルイス対サンディエゴは開始時間が午後1時9分だった。そして同日の第2試合、レッドソックス対ホワイトソックスは夕方の4時9分に始まった。「問題なのは、プレーオフの試合が会社の就業時間と重なっていることです」、とチャレンジャー・グレイ&クリスマス(人材派遣会社)のジョン・チャレンジャー氏は言う。

理屈は高校野球と同じだ。地元チームの試合は、たとえ仕事中でも見たい。テレビがダメでも、上司の目を盗んで、インターネットで試合経過を10分おきに確かめることだろう。これでは仕事がはかどらない。チャレンジャー氏によれば、プレーオフのために仮病をつかった欠勤や早退、社内でのテレビ観戦などで会社の生産性が低下する。金額にすれば、企業側は約2億2500万ドル相当のダメージを受けるようだ。

もう少しチャレンジャー氏の話を聞いてみよう。「さきほど、試合と就業時間が重なるのが問題、と言いましたが、勤務時間後の試合も会社側に影響を与えます。たとえば、ロサンゼルス・エンゼルス対ニューヨーク・ヤンキースの第2戦は、ニューヨーク時間の夜10時9分が開始時刻です。ということは、試合の終わるのは午前2時頃です。」多くのヤンキースファンは、スポーツバーや友人宅でビールを飲みながらゲームを見ることだろう。自宅に着くのは、たぶん3時過ぎだ。完全な寝不足は明らかだから、間違いなく生産性は落ちるはずだ。

最後に、チャレンジャー氏からの断りを記しておこう。2億2500万ドルの企業が受ける被害は、プレーオフの開催される8つの都市だけを考慮して計算された数字だ。年間を通じれば、これら8都市からの総合生産高は1兆6000億ドルにのぼり、プレーオフが与えるダメージは、ほとんど経済に影響をおよぼすことはない。「全ての人が野球ファンではありません。ファンが仕事をサボっても、ファンでない人たちが、十分に穴埋めをしてくれます。数週間プレーオフが続かない限り、アメリカ経済が低下することはありません」、ということだ。

金は800ドルを超える!?

金は先週、ここ17年間の高値を突破した。と言うと、猫も杓子も金買いに奔走しているように思われるが、実際はとても静かだ。正確に言えば、アメリカのマスコミは金をほとんど話題にしない。なぜ大衆は金に飛びつかないのだろうか。グリーンブックインベストメントの、ジョン・マークマン氏はこう語る。「一般に金と言うと、ネックレスやコイン、それに金庫に保管されている金塊などが想像されます。今日のように不動産が好調なときは、なかなか金に人気が集まりません。」

しかし、金の値段が現在の1オンス468ドルを更に大きく上回った場合はどうだろう。きっと毎晩、テレビのニュースで報道されることになるだろう。それだけでなく、新聞の一面記事、雑誌の表紙に載るかもしれない。こうなれば大衆が動き始め、速いテンポで金は一時的な天井をつける。「向こう12ヶ月から36ヶ月間ほどになると思いますが、たとえ米国の金利引き上げ政策が終わっても、金の上昇は続くはずです。ただでさえ取引高の少ない金ですが、ヘッジファンドなどの大きな資金が流入し、金は1オンス800ドルを超えることでしょう」、とマークマン氏は言う。もっと氏の話を聞いてみよう。

「金の真の価値を理解することは簡単なことではありません。金は生活必需品でもなく、株のように株価収益率を使って、現在の値段が割高か割安かを判断することもできません。以前は金が上昇するとドルは逆に下がったのですが、最近はこの公式が崩れ、金はドルといっしょに上がっています。

金は稀な物だから価値がある、と言う人がいますが、それは正確ではありません。金に価値があるのは、その供給量に限りがあるからです。また歴史を振り返ってみると、金には通貨としての役割がありました。たとえばですが、テロリストが全米の銀行コンピュータシステムを破壊したとします。おかげで人々は口座から現金を引き出すことができません。そんな時でも金貨を持っていれば、食料を売ってくれる店があるはずです。」

結局のところ、金の値段は需給関係が決定するわけだが、個人投資家には直接先物市場で金を売買するより、金鉱株を買う方が無難だろう。小型株ならGolden Star ResouresとAgnico Eagle Mines、大型株ならNewmont Mining、Barrick Gold、それにPlacer Domeが有名だ。個別銘柄投資を避けたいなら、Fidelity Select Goldのようなミューチュアルファンドもある。さて、肝心な買いのタイミングだが、マークマン氏は今すぐ買うのではなく、次回の下げで買うことを薦めている。

円買い47%、円売り32%

先月5日、108円76銭だった米ドル/円相場だが、現在114円27銭で取引されている。ドル高になった理由として、ハリケーン・カトリーナがアメリカ経済に与える影響はごく限られていること。そしてシカゴ購買指数やISM指数を見て分かるように、下向きになると思われた米国製造業が、逆に予想以上の成長を示していること。更に短期的なドル買い理由としては、11月と12月に金利引き上げの可能性を示唆するフェデラルファンズ先物市場が挙げられる。

ドル買いを推奨するアナリストが多いことは言うまでもないが、ブルーンバーグ社の調べによると、47%におよぶ世界の主要銀行や証券会社のストラテジストは円買いを薦め、32%が円売りを薦めているという。特に「持続可能性が高い景気回復」、という3日に発表された日銀総裁の見解は、ディーラーたちの円に対する見方に変化を起こさせたようだ。リーマンブラザースのジェームズ・マコーミック氏は、「円は十分に下げ切ったと思います。日本経済も、順調な回復が始まったようです。あとは非正統的なゼロ金利政策の終わりを待つだけです」、と述べている。

47%の数字で分かるように、円買いは圧倒的主流意見というわけではない。「ここから円が買われたとしても、それは長続きしないでしょう」、とドイツ銀行のトレバー・ディンモア氏は言う。「たぶん円は、このレベルで横ばいすることになると思います。長期的に見れば、円は更に下がるはずです。たとえ一時的に円が上昇したとしても、日本の主要投資機関は米国債に資金を移すことでしょうから、どちらにしても円安方向に動くと思います。」

円買いか、それとも売りかで迷う人たちでも、話題が日本株になると態度は急変する。アイコンアジアパシフィックファンドのスコット・スナイダー氏を引用しよう。「現在の東京株式市場は、台湾に次ぐ割安市場です。株価収益率と金利に注目してください。経済回復の進む日本ですが、日銀総裁の話を聞く限り早急な金利引き上げはありません。現状のゼロ金利が継続されるわけですから、日本株はまだまだ上がります。オイル高が日本市場を崩す、そんな見方もありますが、それは日本の実情を知らない人の意見です。日本ほど節エネが徹底している国はありません。」

最後にスナイダー氏は、こんな注意をしている。「日本株が好調だからといって、日本株だけに投資をするミューチュアルファンドを買ってはいけません。大切なことは、日本も含めてアジアの国々に投資をするミューチュアルファンドを買うことです。これなら日本が下げても、他のアジアマーケットがクッションになります。」たしかに絶好調の東京市場、いつになったら消費者信頼感は上がるのだろう。

オイル高、ガソリン高、ハリケーン・リタ、そんな心配に関係なく、アメリカの製造業は大きな伸びを見せた。9月分のISM指数は59.4と発表され、単に予想の52を上回っただけでなく、ここ13ヶ月で最高のレベルを記録した。これでインフレ懸念が更に高まり、マーケット関係者たちは金利引き上げ政策が続行される、と確信したようだ。

予想外だったISM指数とは逆に、予想どおりの結果だったのは先月の自動車販売数だ。高いガソリンの影響を直接受け、ゼネラルモータースの売上は25%の減少、そしてフォードモーターは19%ダウンとなった。特に不調が目立ったのは、ガソリン消費の激しいSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)だ。実例を挙げれば、フォード社のエクスペディションは、去年の同時期と比べるとマイナス60%という、大きな落ち込みになった。

さて、日本車の売れ行きはどうだったのだろうか。トヨタモーターは10.3%売上増となり、特に良かったのは約2倍の伸びを見せたハイブリッドカーだ。ニッサン・ノース・アメリカは+16.4%を記録し、アルティマの売上が好調だった。SUV不振という業界トレンドに逆らって、パフファインダーは売上を倍増させている。アメリカン・ホンダの自動車販売数は+11.7%と発表され、快調な伸びを見せたのは、36.9%増のシビックセダンシリーズだ。

ヨーロッパの車はポルシェがマイナス9%、BMWグループは+1.6%、そしてメルセデスベンツが1パーセントの上昇だ。パッとしない米国自動車売上の中、二桁成長の日本車は、明らかに米国消費者の心をつかんでいる、と言うことができる。

売上なら、日本車を大きく上回る乗り物がある。四輪ではなく二輪、しかしエンジンは無い。AFP通信の報道によれば、アメリカにおける最近一年間の自転車売上数が、車の売上数を抜いた。もちろん車の総売上金額とは比較にならないが、自転車の売上総額は60億ドルにおよぶという。ツール・ド・フランスで7回の栄冠を勝ち取った、アメリカ代表のランス・アームストロング選手もこの自転車ブームの原因となったと思われるが、やはり急騰するガソリンが大きな原因だろう。通勤に自転車を使う人が増えているというから、これで少しは肥満問題が解決するかもしれない。

第4四半期のマーケットが始まる。ここまでを振り返って、アメリカの一般投資家たちは、あることに気がついたことだろう。二つのハリケーン、値上がりの続くオイル、ガソリンが大きな話題になった第3四半期だが、アメリカ株に投資をするミューチュアルファンドは平均で4.3%の伸びを見せた。しかし、米株以外に投資をするインターナショナルファンドは11.7%の上昇だ。

先週発表されたデータによれば、アメリカ株中心のミューチュアルファンド総額は3兆1800万ドルにおよび、インターナショナルファンドは8180億ドルほどだという。圧倒的に米株ファンド投資額が、国際株ファンドを上回り、一般投資家たちは海外マーケットの成長を十分につかんでいない。

「これからは多数の個人投資家が、海外株式市場へ資金を移すことでしょう」、とリッパー社のドン・キャシディ氏は言う。第3四半期、最も優秀だったのは、+28.5%の伸びを見せた中南米諸国に投資をするラテンアメリカファンドだ。次は金鉱銘柄を狙った国際ゴールドファンド(+20.9%)、そして+19.7%の好結果を出した日本株ファンドへと続く。アメリカ市場を復習すると、第3四半期ナスダックは+4.6%、ダウ指数は+2.9%だ。ファンド別なら、成長企業を中心に買うグロースファンドは+6.1%、そして中型株ファンドが5.5%増となっている。

個別ミューチュアルファンドの成績を見てみよう。トップの座に輝いたのはプロファンズ・ウルトラジャパン。+41.5%という高リターンだ。2位は+36.6%のINGロシアファンド、そして+35%のプロファンズ・プレシャスメタルズが3位につけている。成績が最も悪かった3つのファンドは、全て米国株ファンドだ。アメリカンヘリテージグロースファンドはマイナス16.7%、フロンティアエクイティがマイナス13%、そして11%減のインターネット・インフラストラクチャーホールダーズへと続く。

さて、あなたがアメリカ人投資家なら資金をどこへ移すだろうか。私は日本へ資金が向かうと思う。最後に経済コラムニスト、ジョン・ワゴナー氏の意見を紹介しよう。「時間はかかりましたが、小泉内閣は着実に銀行の建て直しに成功しています。デフレの解決はまだですが、最近15年間で初めて東京の不動産が値上がっています。東京株式市場も活気が戻り、予測される企業利益を考慮すれば、まだ一般アメリカ人投資家が東京マーケットに参加できる余地は十分に残っています。」

ハリケーン・リタとインド

アウトソーシングと呼ばれる外部委託が当たり前の時世になった。おかげで職を失った、と憤慨する人たちが増えているが、企業側から見れば経費削減につながる重要な一対策だ。外注の行き先は、何と言ってもインドが圧倒的に多いが、AP通信からこんな報道があった。

テキサスに本拠地を置く、イフェクティブテレサービス社は、インドにコールセンターを設けて顧客サービスを行っている。コスト削減の一環として、米国企業は顧客サービス部門を、イフェクティブテレサービスのような会社に外注することが多い。

インドのイフェクティブテレサービスに勤務するマドハビ・パテルさんは、米国クレジットカード会社の顧客サービスを担当している。こんな物を買った覚えはない、請求書は間違っている、カードを失くしてしまった、そんな苦情や相談に応じるのがパテルさんの仕事だ。そしてハリケーン・リタが起きた。

ハリケーンに備えて、上陸が予想される州民のために、ハリケーン情報センターが急きょ設置されたのだが、何とその仕事を任されたのはパテルさんの所だった。総勢240名が働くパテルさんの職場へ、遠いアメリカから助けを求めて電話が殺到する。「救助隊はいつ来るのですか」、「近くの避難場所をおしえてください」、「近所のガソリンスタンドは、どこも売り切れでガソリンがありません。どこに行ったら手に入りますか」、「妹が行方不明です、、、」

もちろん、アメリカ人たちは電話がインドにかかっていることなど知らない。正確な情報さえ提供できれば会社の場所など問題ない、と言われる方もいると思うが、はたして何の支障も無かったのだろうか。ハリケーン情報センターの責任者の話によれば、2時間におよぶ説明会で、従業員には十分な情報が渡されたという。

突如のハリケーンで残業の続いたパテルさんだが、最後に彼女の言葉を記しておこう。「とても良い勉強になりました。チームワークの大切さをあらためて学んだだけでなく、困っている人々を助ける喜びも感じることができました。しかし世の中の人たちは、こんな私たちの働きがあったことなど全く知りません。」

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