選択は二つ、売りと買いだ。模様眺めを含めれば三つになるが、最終的には買いと売りしかない。もちろん株の話をしているわけだが、ウォールストリートに代表される証券業界も、単純に買い手(Buy Side)と売り手(Sell Side)の二つに区分できる。二者の決定的な違いは何だろうか。「一方はとても静かですが、他方はいつも声高々に叫んでいます」、と言うのはロバート・グリーン氏(ブリーフィング・ドット・コム)だ。
株も商品だから、だれかに買ってもらわないことには話にならない。商品を売るためには、それなりの宣伝が必要だ。グリーン氏にウォールストリートのからくりを説明してもらおう。「インベストメントバンカーにとって、株は単なる製品でしかありません。分かりやすい例はIPO(新規公開株)です。IPOの目的は企業を証券取引所に上場させることですが、仕事はそこで終わるわけではありません。
上場後は活発な売買が必要になりますが、ここで役立つのが証券会社のリサーチ部門です。売上の見通し、一株利益の予想だけでなく、経営陣の実績なども評価されるわけですが、決定的なのはアナリストが発表する格上げや格下げです。このようにIPOから始まって、格上げや格下げに従事するのは売り手(Sell Side)証券会社です。ですから営業を担当する証券マンは、Sell Side最前線の仕事です。」
買い手(Buy Side)とはだれのことだろうか。一般個人投資家は株を買うわけだから、私たちが買い手だろうか。ここで言うBuy Sideとは専門家だけに限定されている。だから、ヘッジファンドやミューチュアルファンドが買い手の代表になる。もちろんファンド会社にもアナリストはいるが、彼らは決して「買い推奨」や「売り推奨」などの意見を世の中に表明することはない。一つ付け加えれば、Sell Sideの証券会社にもファンドマネージャー(Buy Side)がいる今日この頃だが、法律で二者の癒着は禁じられている。
Buy SideとSell Sideは敵対しているわけではない。正確に言えば共存することが最も重要だ。もう一度、グリーン氏に説明してもらおう。「ミューチュアルファンドは膨大な量の売買をしますが、これはSell Sideの証券会社を通して行われます。なぜならSell Sideの証券会社には、大口取引を効果的にこなす技術と実績があります。Sell Sideの証券会社は、ミューチュアルファンドやヘッジファンドに株を買ってもらわなければ生存することはできません。二者の共存がなくては、ウォールストリートの繁栄はありえないのです。」
最後に一つ質問しよう。アナリストの数は、どちらが多いと思われるだろうか。Sell Sideの証券会社だろうか、それともBuy Sideのミューチュアルファンド側だろうか。正解はBuy Sideの方だ。数で勝るBuy Sideはいつも沈黙、逆に少ない方のSell Sideは威勢がよい。株は金融商品、株価は動くものではなく、動かされる性質があるわけだ。