勤務時間中に会社を抜け出しストリップ劇場へ向かう。しかし運悪く上司に見つかり、首になってしまった。厳しすぎる処置だ、と思われるかもしれないが、この場合ならどうだろう。日曜の午後、ストリップ劇場で二時間ほど暇つぶしをする。翌日出社すると、さっそく上司に呼ばれ解雇を言い渡されてしまった。理由は昨日ストリップ劇場へ行ったからだ。休日に何をしようと会社には関係無い、と反論したのだが、社風に合わない人には辞めてもらうしかない、それが会社の言い分だ。現実離れしたような話だが、実はそれと似た話がアメリカで起きている。
ハワード・ワイヤーズ氏は、(ABCニュース報道)、ヘルスケア関連の会社を経営する、今年71歳になるビジネスマンだ。こんな会社を経営するくらいだから、ワイヤーズ氏にとって健康管理は最大の関心事であり、社員にも健康的な生活スタイルを奨励している。単に自分だけがウエートトレーニングで汗を流すだけでなく、ワイヤーズ氏は社員のためにもトレーニングコーチを雇った。もちろん強制することはしないが、定期的にコーチを訪れて運動する社員には、月々特別に110ドルのボーナスが支払われる。「とても素晴らしいプログラムだと思います。社長自ら率先して、私たち社員の健康面に気をつかってくれているのです。」、とミンディー・ティラボスキさんは言う。
正に健康マニア社長なのだが、ある日ワイヤーズ氏はこんな発表をした。「君たちの中にはタバコを吸う人がいる。会社の出費を調べてみて分かったのだが、喫煙者は余分な医療保険の負担を会社にかけている。言うまでもないが、タバコは非健康的な悪い癖だ。もしこの会社で働き続けたいと思うなら、即刻タバコをやめてほしい。これは勤務時間中だけに限らず、君たちのプライベートな時間も含めてだ。」更にワイヤーズ氏は、ランダムに社員から血液を採取して、ニコンチン検査をする計画があることも付け加えた。
約200人の社員で埋まった部屋は、社長の発表に騒然となったという。「15ヶ月の時間をやるからキッパリとタバコをやめるように。それが出来ないなら首だ。そんなことを言われて騒がない方がおかしいです。明らかに法律違反です!」、とアニタ・エポリトさんは憤慨する。しかし事実は、ワイヤーズ氏の言った事は会社の所在する州の法律を犯していない。年齢、性別、人種、そして身体障害などを理由に社員を解雇するのは違反だが、タバコなら許される。最終的には24人の喫煙者のうち、20人は禁煙に成功した。
タバコをやめることのできなかった4人は、社長の言ったとおり首になったが、上記のエポリトさんもその一人だ。「私は会社に大きな貢献をしてきました。社長は会社の経営者です。神様じゃありません。社長の態度は間違っています。絶対に間違っています。」現在エポリトさんは失業保険で暮らしているが、一方の健康マニア、ワイヤーズ社長の態度は更にエスカレートしたようだ。太りすぎは様々な病気の原因になる。社員食堂の一角には、体重計が設置されたらしい。タバコ、体重計、その次は何だろうか。社員に菜食主義でも押し付けるのだろうか。