イメージチェンジを狙って、マクドナルドの新しいコマーシャルが放映される。といっても、もっとお客さんに来てもらおう、といった内容ではない。アメリカではマクドナルド=給料が安い、職として将来性が無い、昇給は望めない、などといった見方が大衆に定着してしまっている。だから当然な結果として、長期的にマクドナルドで働く人は少なく、どうしても高校生のパートタイマーが中心になってしまう。こんな企業イメージを変えよう、というのが新コマーシャルの目的だ。
ロイターの報道によれば、このコマーシャルには、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを取った、カール・ルイス選手が起用される。何故カール・ルイス選手なのか?理由は少なくとも二つある。先ず、マクドナルドのM字型のマークだが、あれはゴールデンアーチと呼ばれている。金メダルはゴールドだから、ゴールデンとゴールドを結びつけて勝者のイメージを強調する。カール・ルイス選手が、生まれて初めて働いた場所はマクドナルドだったそうだ。勝者が最初に選んだ仕事はマクドナルド。社会への第一歩は、マクドナルドから始まる、というわけだ。
こんなコマーシャルは、マクドナルドが初ではない。大手小売店、ウォルマートも同様な企業イメージに苦しんだ前例がある。単に給料の不満だけでなく、多くの従業員は、医療保険や年金制度の不十分さを訴えていた。そこでウォルマートはコマーシャルを使った。生き生きと微笑みながら働く従業員の姿が映し出され、見るからに明るい職場、といった雰囲気が伝わってくる。
話をマクドナルドに戻そう。ジョブ(JOB)は仕事や職、という意味だが、マックジョブ(McJob)という俗語がある。マックはビッグマックで分かるようにマクドナルドを指しているが、マックジョブを辞典で引くと、こんな説明が出てくる。「給料の低い出世見込みの無い仕事。」これにはマクドナルドも参ったことだろう。
記者会見の席で、カール・ルイス選手が言ったことを記しておこう。「私がマクドナルドで働いたのは16歳のときです。チームワークと、テキパキと仕事をする重要さを学びました。とにかくスピードが大切です。もし数秒遅れていれば、金メダルは取れないように、ノロノロしていてはお客さんに渡す前に、フレンチフライは冷えてしまいます。」はたしてマクドナルド、スピーディーに企業イメージを一新できるだろうか。