チームが勝てないのは監督が悪い。子どもの成績が上がらないのは先生の責任。高すぎる税金は大統領のせいだ。物事はこんなに単純ではないが、この論法でいくと、破綻したデルタ航空とノースウエスト航空は経営陣の責任ということになる。
既に破産保護の下で営業しているユナイテッド航空とUSエアウェイズ(アメリカウエスト航空と合併)は、四年前の9月11日にニューヨークを襲ったテロ事件が、直接的な経営危機に陥る引き金になった。あの日、ユナイテッド航空の二機はテロリストにハイジャックされ、USエアウェイズの主要拠点である、ワシントンレーガンナショナル空港は数週間以上も閉鎖されてしまった。
航空業界のアナリストが口を揃えて言うことは、デルタとノースウエスト航空は正確なデータに基いた判断からではなく、状況は好転するだろう、といった希望的な観測を基盤に営業を続けたことだ。オイル価格は必ず下がる。弱い競争相手は破綻するだろう。低コストを土台にビジネスを開始した航空会社は、遅かれ早かれ致命的な間違いを犯して、業界から消えていくに違いない。下げ続ける航空料金はいずれ上向きになり、企業収益も向上するはずだ。これらの期待は、全て外れてしまった。
「デルタ航空は連邦破産法に基いて、1年半前に会社再生手続きをするべきでした」、と語るのは航空会社コンサルタントのジョン・アッシ氏だ。「デルタは状況を完全に読み間違えました。ライバルのUSエアウェイズとインディペンデンスエアの倒産を予想していたのですが、USエアウェイズは買収され、インディペンデンスエアは現在も安い航空チケットを売り物に飛んでいます。これでは期待していたマーケットシェアを伸ばすことなどできません。」
企業再生手続きが遅すぎた、という見方はノースウエスト航空にも言えるようだ。マイケル・ローチ氏(アメリカウエスト共同創立者)によれば、「ハリケーン・カトリーナは単なる言い訳です。ノースウエストは労働組合との交渉に、あまりにも弱気すぎます。待っていれば自然に事態が良くなる、とでも思っていたかのようです。しかし、最近高騰の続くオイルがノースウエストを現実に直面させました。どちらにしても今まで何もしなかったのですから、残った選択は破産法の適用しかなかったわけです。」
労働組合で思い出したが、ノースウエストの整備士たちは現在ストの真っ最中だ。ある整備士がこんなことを言っていた。「私たちの要求が認められないかぎり仕事には戻りません。たとえこのストが原因で会社が倒産になっても構いません。」どうやら、一つの願いはかなったようだ。