練習試合ではガンガンと長打を飛ばすが、本番になると全く打てなくなってしまう選手がいる。既にそれなりの技術はマスターしているが、精神面の弱さが成功への道を阻んでいるわけだ。株や先物指数のトレーダーにも、同様な症状に悩む人たちが多い。ペーパートレード(実際の資金を使わない売買練習)の時は素晴らしい成績を上げるが、実トレードに移ると正反対なことをしてしまう。損が重なり資金が減ると、どうしても自信喪失となる。
アリ・キエフという有名なトレードコーチがいる。氏はプロスポーツ選手の精神面コーチとしての経験を生かして、現在はヘッジファンドマネージャーや、証券会社のトレーダーたちをコーチしている。特にSACキャピタル社はキエフ氏の指導の結果、2500万ドルの資金を5億ドルに増大させた。さっそく氏の話を聞いてみよう。
「成功しているプロスポーツ選手とトレーダーには、いくつかの共通点があります。絶えず自己分析を行い、より優れた成績を上げるために、何をどう改善するかを検討します。練習復習、練習復習を繰り返して、平均的な結果に満足するのではなく、常に最高なレベルを求めるわけです。
株や先物トレードがうまくいかない、と悩んでいる人の多くは明確なゴールを持っていません。漠然と儲けたい、と言うだけでは、目的地の無いマラソンのようなものです。これでは正しく売買を分析できません。トレードで失敗が重なる大きな原因は、あまりに感情的になるからです。勝つ度に大はしゃぎ、負ける度に絶望に陥る。完全に感情に支配されています。大切なのはゴールに焦点を合わせることであり、トレードのスリルを味わうことではありません。」
もちろんキエフ氏は、感情を殺せ、と言っているわけではない。どんなに嬉しい時でも冷静に、第三者的な立場で自分を見ることが大切であり、これが成功への鍵になる。氏の話を続けよう。「私たちは常識で物事を見る習性があります。言い換えれば、私たちは一般の人たちと一緒に箱の中に入っているわけです。画期的な発明やアイディアは、この箱の中からは生まれません。毎朝トレーダーたちはインターネットで情報を集め、皆同様な売買を試みるのですから、失敗しても当たり前です。」どうやらコーチは大衆の逆を行くことを薦めているようだ。