ポール・アカード氏(36才)、ニューオーリンズ市警官、がピストル自殺した。全く冗談の通じない、超真面目警察官だったらしいが、ハリケーン・カトリーナの犠牲者になってしまった。市民を安全な場所へ誘導するだけでなく、次々に起こる商店の略奪で、警官たちの労働時間は一日20時間近い日々が続いている。
アカード氏もハリケーンで家を失った一人だが、「まるで何年も寝ていない病人のようでした」、とマーロン・デフィロ警部は言う。愚痴をこぼしても始まらない、とにかく今は出来る限りのことをするだけだ。必ず明るい日がまたやって来るさ、と警部はアカード氏をなぐさめたようだが、ハリケーンの傷はあまりにも深過ぎた。
一人一人の力も大切だが、大災害から立ち直るには強いリーダーが必要だ。コラムニストのペギー・ヌーナン女史は、こんなことを述べている。「ルーディー・ジュリアーニ氏(ニューヨークを襲ったテロ事件時の市長)から、政治指導者たちは学ぶことがあると思います。事件後ジュリアーニ市長は何度も記者会見を行いましたが、氏が言ったことはとても具体的なものでした。
たとえば、No.4の地下鉄は11時まで運行停止になる、また土曜日はどの道路が交通止めになる、といった正確な情報です。市長は適切に状況を把握している。これなら市のことはジュリアーニさんに任せておけば大丈夫だ。そんなふうに思った市民が多かったことでしょう。
キャスリーン・ブランコ、ルイジアナ州知事をジュリアーニ市長と比べてみましょう。ハリケーン直後、数回の記者会見で、州知事は動揺を隠すことができませんでした。知事は繰り返し被害者に対しての同情を強調しましたが、これはリーダーとして適切な態度とは言えません。もちろん知事も人間ですから、家を失った人たちを気の毒と思うのは当然です。しかし、知事は具体的な情報、そして州政府はどう問題に対処していくのか、といった肝心なことを人々に伝えることができませんでした。」
ここで話はブッシュ大統領へと進むのだが、ヌーナン女史は痛烈な批判を浴びせている。「大統領は湾岸州に起きた大災害を、本当に理解しているのでしょうか。たぶん大統領は、ペルシャ湾にしか興味がないのでしょう。商店街は一部の市民たちに荒らされ、下水システムの破損で市は伝染病の危機にさらされているのです。とにかく、もっと多数の兵をニューオーリンズに送らなければだめです。」アメリカ、真のリーダーは不在のようだ。