堤防が崩れ、ニューオーリンズ市は大洪水となってしまった。まるで沈んで行く船のようだが、州知事は全住民に対して、ニューオーリンズからの立ち退きを命じた。人口48万におよぶ市民の80%は、既に週末、市を去ったが、まだスーパードームなどの200カ所に6万人以上が避難している。特に2万人を保護するスーパードームでは停電に続いて水洗トイレが故障し、人々の不満が高まっている。
一般的にハリケーンなどの自然現象が引き起こす被害は短期的なものだが、今回のカトリーナは例外のようだ。既にメキシコ湾にある92%のオイル掘削がストップし、いつ正常な操業を開始できるかの見通しがついていない。シェブロン社の話によれば、海底石油掘削装置のダメージを把握するだけでも今週末までかかってしまうらしい。
もちろん、ストップしたのは石油掘削だけではない。10%の製油所も停止してしまった。1ガロン(3.785リットル)2ドル62セントが、先週までの全米平均ガソリン価格だったが、次々と3ドルを突破するガソリンスタンドが現れている。オイル価格情報サービスのベン・ブロックウェル氏は、「ほぼ間違いなく、ガソリンは4ドルに達することでしょう」、と述べている。
1ガロン3ドル50セント以上は、米国経済不景気への引き金になる、との見方があるが、ナリマン・ベラベッシュ(グローバル・インサイト社チーフエコノミスト)の話を聞いてみよう。「最悪のシナリオを想定した場合ですが、ガソリンは1ガロン当たり3ドル50セントほどの状態が、向こう4カ月から6カ月間続くと思われます。そうなると、第4四半期GDP(国内総生産)の伸び率は±0%です。不景気に陥る可能性は20%程です。」
どちらにしても夏休み最後の連休を週末に控え、年間を通してガソリン消費量が大きく増える時期だ。米政府は今朝、備蓄石油の貸し出しを発表したが、これが週末までに間に合うわけがない。一時的にオイル価格上昇を止める効果はあるかもしれないが、今のアメリカには肝心な製油能力が欠けている。そろそろ秋、暖房用の灯油も必要になってくる。エネルギー節約が叫ばれているが、それよりも皆で暖冬を祈った方が良いかもしれない。