September 2005 のトップ・ストーリー一覧

9月も大詰め、あと3ヶ月で2005年度のマーケットが終了する。1月、1213ドルでスタートを切ったS&P500指数は、現在1220ドルを示し、たった0.5%の上昇というアクビの出そうな展開だ。もちろん、11回連続の短期金利引き上げ、高騰するオイル、ガソリンを考慮すれば、マーケットは健闘している、と言うこともできる。

9ヶ月間たいした動きを見せなかったマーケットだが、ポートフォリオマネージャーのジョン・マークマン氏は、こんなことを言う。「S&P500指数は、アメリカを代表する500の企業で構成される指数ですが、今年の状況は去年とよく似ています。2004年、S&P500は1111ドルで始まり、9月の終わりには1110ドルでした。小型株指数のラッセル2000は556ドルで2004年をスタートし、558ドルで9月を終えました。残りの10月から12月ですが、小型株指数は15%の上昇、そして大型株指数のS&P500は9%の伸びを記録しました。」

はたして、今年も去年のようなラリーがやって来るのだろうか。力強い上げは期待できないようだが、マークマン氏は5%程の上昇を予測している。3つの要素が買い材料になるらしいが、さっそく氏に説明してもらおう。

1、予想を上回る企業収益

3ヶ月前、アナリストはS&P500指数に属する企業の収益は、年間ベースで15.1%増、という見方を発表した。しかし、トムソンファイナンシャルが指摘するように、実際はそれ以上の17.9%の成長になりそうだ。エネルギー銘柄、特にオイル会社の収益は+29%から+56%が見込まれ、ハリケーンが悪影響になった保険会社や銀行収益も21%程の上げとなるだろう。

2、更なる上昇が期待できるエネルギー株

高騰するオイル価格は既に織り込み済み、だからオイルなどのエネルギー銘柄は避けるべきだ、といった声が聞かれるが、そう簡単に結論するのは早すぎる。利益を確保するために、オイル会社は顧客と相談して向こう6ヶ月、1年間といった形でオイル価格を設定する。だから今でも40ドル台の安い値段で取引をしている顧客がいるわけだ。現在の高いオイル価格が決算に繁栄されるのはこれからだから、まだエネルギー銘柄には上昇が望める。

3、新投資テーマの登場

アップルコンピュータのiPod nanoでも分かるように、新製品は株価を動かす大きな原動力になる。今、ファンドマネージャーたちが注目しているのは、IPTV(インターネットプロトコールテレビジョン)と呼ばれる新技術だ。テレビ映像シグナルが、ファイバーオプティックを通して各家庭に届くわけだが、これが実現するとテレビ産業は一大改革になる。豊富な番組をいつでも見れるだけでなく、好きな番組を簡単にメールすることも可能になる。企業生命をかけて、電話会社とケーブルテレビ会社は激しく競い合うことだろう。

残り3ヶ月、どうやら勝負はこれからだ。

危険な投資アドバイザー

アメリカンドリーム、という言葉がある。家を買って、良い車を運転し、子どもには最高の教育を与え、そして老後は快適な隠居生活をおくる。そんな夢なら私たち日本人も持っているから、ジャパニーズドリーム、と言うこともできる。こんな統計がある。約50%の働くアメリカ人の預金高は2万5000ドル(282万5000円)以下であり、20%の人たちには全く預金が無い。これではアメリカンドリームを実現できない。

何故このようなことになってしまったのか。「それは間違ったアドバイスに従ったからです」、と言うのは「金持ち父さん貧乏父さん」の著者、ロバート・キヨサキ氏だ。先ず、この間違ったアドバイスを紹介しよう。「一生懸命働いて、こつこつ金を貯め、借金はしないで優良株やミューチュアルファンドに長期投資しろ。」一見すると適切なアドバイスに思われるのだが、キヨサキ氏の話を少し聞いてみよう。

「2000年から2003年の株式市場の暴落で、何百万という多数のアメリカ人は、7兆から9兆ドルの金を失ってしまいました。しかし現実は単に資金を無くしただけでなく、ほとんどの人たちは、二つの経済ブームに乗ることができなかったのです。二つのブームというのは不動産と商品市場ですが、アドバイザーたちは全くこれらのブームを、個人投資家たちに知らせることができなかったのです。間違ったアドバイスを繰り返しただけでなく、現在の投資テーマをつかめなかったのですから、これ以上悪い話はありません。」

今では5年連続でベストセラーリストに入る「金持ち父さん貧乏父さん」だが、元々は自費出版だった。言うまでもないが、どの出版社もキヨサキ氏の本は売れる見込みゼロ、と判断したからだ。何故予想に反してベストセラーになったのだろうか。キヨサキ氏はこう語る。「本の人気の秘密は、金持ちが何故さらに金持ちになるかが説明されているからだと思います。読者の方々は、時代遅れのアドバイスの危険性を理解してくれたことでしょう。」

キヨサキ氏の話を聞いていたら、「人の行く裏に道あり花の山」、という相場の格言が頭に浮かんできた。人と同じことをしていたのでは儲からない。それよりも大衆の逆を行け、というわけだが、こう書いたら「投資苑」の著者、アレキサンダー・エルダー氏を思い出した。チャートと言えば、日足や週足ばかりが利用されるが、何故そうしなければいけないのだろうか。それらを使ったら確実に利益が上げられるからだろうか。チャート無視を勧めているのではない。たまには見方を変えて、45分足チャートなどどうだろうか?違ったものが見えるかもしれない。

アメリカ人が持つ六の心配事

お金に関することで、あなたが最も心配していることは何ですか、とマネー誌は1000人の働くアメリカ人に尋ねた。圧倒的に多かった回答は、自分が死んでしまった場合、残された家族は経済的に大丈夫だろうか、という不安だった。そんな時のために生命保険があるのだが、実際に加入しているのは就業者の約50%ほどだ。

突然の死よりも起きる確率が高いのは、交通事故や病気などが原因となり、働くことが不可能な体になってしまうことだ。こういった事態に備えて身体障害保険があるが、これに加入している人たちは30%にも満たない。長期闘病生活には多額な医療費が必要になる。統計によれば、このような状況に陥った家庭の半数は、破産申告をすることになるという。

株式市場の暴落が、二番目に多かった返答だ。2000年の5132ドルをピークに、現在ナスダック市場は2100ドル台で横ばいしている。90年代の派手な高リターンに慣れてしまった投資者にとって、マーケットの下落はあまりにも大きすぎた。ある年に暴落が起きる確率は2%程度だが、バンガード社の調べによれば、半分以上の個人投資家が、いつも暴落を気にしている。

第三の心配事はアメリカ経済の破綻、四番目は外部委託(アウトソーシング)による失業、そして不動産バブルへと続く。第六番目は個人情報の盗難による詐欺だが、実はハリケーン・カトリーナ以来この犯罪が増えている。洪水の被害を受けた家屋から、クレジットカードの請求書や証券会社からの報告書などを盗み出し、他人の口座から金を騙し取ることが狙いだ。

そろそろ決算シーズンがやってくるが、ハリケーン・カトリーナが、ある言い訳に利用されている。エイボンと言えば化粧品の会社だが、ハリケーンとガソリン高を理由に2005年度の収益を下方修正した。たしかに戸別訪問販売員にとって高いガソリンは痛い。しかし、アナリストのアリス・ロングレイ氏が指摘するように、エイボンの業績不振が始まったのはカリーナ以前のことだ。USAトゥデイの報道によれば、既に78社がハリケーンを理由に収益減少の警告を出している。どうやら今回の決算報告は、注意して読む必要がありそうだ。

三つの罠

トレーダーとして成功するためには、三つの壁を克服する必要がある、と語るのはブレット・スティーンバーガー氏だ。氏は単にトレード心理の研究で有名なだけでなく、20年のトレード歴も持ち合わせる。さっそく、三つの壁について説明してもらおう。

「最初に挙げたいのは完全主義です。これは特にトレードを始めたばかりの人たちに多いのですが、あまりにも非現実的な利益目標を設定する傾向があります。トレーダーたちはよく、「買いのタイミングが遅すぎた」、とか「20セント儲けそこなった」、などと口にしますが、これらの本当の意味は何でしょうか。要するに彼らは、今日の安値で買って、今日の高値で売れなかったことを嘆いているのです。その結果、こんな言葉で自分を責めるようになります。俺はいったい何をしているのだ。トレードの才能が無いのかもしれない。完全主義は捨てなくてはいけません。

エゴはトレーダーに大きな悪影響を及ぼします。株売買の目的は利益を出すことなのですが、エゴに邪魔をされると、自分の正当性が優先され、トレード利益は二の次になってしまいます。本当なら直ぐ損切りをすることが適切な行動でも、自分の間違いを認めたくないために、株を処分することができません。それだけではなく、更に買い足しをして損額をいたずらに大きくしてしまうトレーダーもいます。

もう一つトレーダーの陥る罠は自信過剰です。少し連勝するとウヌボレが生じ、トレード執行がいい加減になってきます。自分の売買ルールを無視してのトレードですから、儲かるわけがありません。どんなに勝ちが続いても、冷静に状況を判断しなければいけません。なぜ買うのか、勝算はどの程度あるのか、どこで損切りをするのか、といったことをトレードの前に必ず決めておくことが重要です。」

スティーンバーガー氏には20年のトレード歴があることを上記したが、最後にトレード成功の秘訣を氏に語ってもらおう。「素早いパターン認識がトレードに最も重要な要素です。パターンを適切に認識できるようになるためには、マーケットと長時間つき合うしかありません。トレーダーが成功できない一番の理由は、マーケットにドップリとつかることができないからです。短期間で成功しようと思ってはダメです。」

静かな買い手、騒々しい売り手

選択は二つ、売りと買いだ。模様眺めを含めれば三つになるが、最終的には買いと売りしかない。もちろん株の話をしているわけだが、ウォールストリートに代表される証券業界も、単純に買い手(Buy Side)と売り手(Sell Side)の二つに区分できる。二者の決定的な違いは何だろうか。「一方はとても静かですが、他方はいつも声高々に叫んでいます」、と言うのはロバート・グリーン氏(ブリーフィング・ドット・コム)だ。

株も商品だから、だれかに買ってもらわないことには話にならない。商品を売るためには、それなりの宣伝が必要だ。グリーン氏にウォールストリートのからくりを説明してもらおう。「インベストメントバンカーにとって、株は単なる製品でしかありません。分かりやすい例はIPO(新規公開株)です。IPOの目的は企業を証券取引所に上場させることですが、仕事はそこで終わるわけではありません。

上場後は活発な売買が必要になりますが、ここで役立つのが証券会社のリサーチ部門です。売上の見通し、一株利益の予想だけでなく、経営陣の実績なども評価されるわけですが、決定的なのはアナリストが発表する格上げや格下げです。このようにIPOから始まって、格上げや格下げに従事するのは売り手(Sell Side)証券会社です。ですから営業を担当する証券マンは、Sell Side最前線の仕事です。」

買い手(Buy Side)とはだれのことだろうか。一般個人投資家は株を買うわけだから、私たちが買い手だろうか。ここで言うBuy Sideとは専門家だけに限定されている。だから、ヘッジファンドやミューチュアルファンドが買い手の代表になる。もちろんファンド会社にもアナリストはいるが、彼らは決して「買い推奨」や「売り推奨」などの意見を世の中に表明することはない。一つ付け加えれば、Sell Sideの証券会社にもファンドマネージャー(Buy Side)がいる今日この頃だが、法律で二者の癒着は禁じられている。

Buy SideとSell Sideは敵対しているわけではない。正確に言えば共存することが最も重要だ。もう一度、グリーン氏に説明してもらおう。「ミューチュアルファンドは膨大な量の売買をしますが、これはSell Sideの証券会社を通して行われます。なぜならSell Sideの証券会社には、大口取引を効果的にこなす技術と実績があります。Sell Sideの証券会社は、ミューチュアルファンドやヘッジファンドに株を買ってもらわなければ生存することはできません。二者の共存がなくては、ウォールストリートの繁栄はありえないのです。」

最後に一つ質問しよう。アナリストの数は、どちらが多いと思われるだろうか。Sell Sideの証券会社だろうか、それともBuy Sideのミューチュアルファンド側だろうか。正解はBuy Sideの方だ。数で勝るBuy Sideはいつも沈黙、逆に少ない方のSell Sideは威勢がよい。株は金融商品、株価は動くものではなく、動かされる性質があるわけだ。

社長は神様?

勤務時間中に会社を抜け出しストリップ劇場へ向かう。しかし運悪く上司に見つかり、首になってしまった。厳しすぎる処置だ、と思われるかもしれないが、この場合ならどうだろう。日曜の午後、ストリップ劇場で二時間ほど暇つぶしをする。翌日出社すると、さっそく上司に呼ばれ解雇を言い渡されてしまった。理由は昨日ストリップ劇場へ行ったからだ。休日に何をしようと会社には関係無い、と反論したのだが、社風に合わない人には辞めてもらうしかない、それが会社の言い分だ。現実離れしたような話だが、実はそれと似た話がアメリカで起きている。

ハワード・ワイヤーズ氏は、(ABCニュース報道)、ヘルスケア関連の会社を経営する、今年71歳になるビジネスマンだ。こんな会社を経営するくらいだから、ワイヤーズ氏にとって健康管理は最大の関心事であり、社員にも健康的な生活スタイルを奨励している。単に自分だけがウエートトレーニングで汗を流すだけでなく、ワイヤーズ氏は社員のためにもトレーニングコーチを雇った。もちろん強制することはしないが、定期的にコーチを訪れて運動する社員には、月々特別に110ドルのボーナスが支払われる。「とても素晴らしいプログラムだと思います。社長自ら率先して、私たち社員の健康面に気をつかってくれているのです。」、とミンディー・ティラボスキさんは言う。

正に健康マニア社長なのだが、ある日ワイヤーズ氏はこんな発表をした。「君たちの中にはタバコを吸う人がいる。会社の出費を調べてみて分かったのだが、喫煙者は余分な医療保険の負担を会社にかけている。言うまでもないが、タバコは非健康的な悪い癖だ。もしこの会社で働き続けたいと思うなら、即刻タバコをやめてほしい。これは勤務時間中だけに限らず、君たちのプライベートな時間も含めてだ。」更にワイヤーズ氏は、ランダムに社員から血液を採取して、ニコンチン検査をする計画があることも付け加えた。

約200人の社員で埋まった部屋は、社長の発表に騒然となったという。「15ヶ月の時間をやるからキッパリとタバコをやめるように。それが出来ないなら首だ。そんなことを言われて騒がない方がおかしいです。明らかに法律違反です!」、とアニタ・エポリトさんは憤慨する。しかし事実は、ワイヤーズ氏の言った事は会社の所在する州の法律を犯していない。年齢、性別、人種、そして身体障害などを理由に社員を解雇するのは違反だが、タバコなら許される。最終的には24人の喫煙者のうち、20人は禁煙に成功した。

タバコをやめることのできなかった4人は、社長の言ったとおり首になったが、上記のエポリトさんもその一人だ。「私は会社に大きな貢献をしてきました。社長は会社の経営者です。神様じゃありません。社長の態度は間違っています。絶対に間違っています。」現在エポリトさんは失業保険で暮らしているが、一方の健康マニア、ワイヤーズ社長の態度は更にエスカレートしたようだ。太りすぎは様々な病気の原因になる。社員食堂の一角には、体重計が設置されたらしい。タバコ、体重計、その次は何だろうか。社員に菜食主義でも押し付けるのだろうか。

イメージチェンジを狙って、マクドナルドの新しいコマーシャルが放映される。といっても、もっとお客さんに来てもらおう、といった内容ではない。アメリカではマクドナルド=給料が安い、職として将来性が無い、昇給は望めない、などといった見方が大衆に定着してしまっている。だから当然な結果として、長期的にマクドナルドで働く人は少なく、どうしても高校生のパートタイマーが中心になってしまう。こんな企業イメージを変えよう、というのが新コマーシャルの目的だ。

ロイターの報道によれば、このコマーシャルには、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを取った、カール・ルイス選手が起用される。何故カール・ルイス選手なのか?理由は少なくとも二つある。先ず、マクドナルドのM字型のマークだが、あれはゴールデンアーチと呼ばれている。金メダルはゴールドだから、ゴールデンとゴールドを結びつけて勝者のイメージを強調する。カール・ルイス選手が、生まれて初めて働いた場所はマクドナルドだったそうだ。勝者が最初に選んだ仕事はマクドナルド。社会への第一歩は、マクドナルドから始まる、というわけだ。

こんなコマーシャルは、マクドナルドが初ではない。大手小売店、ウォルマートも同様な企業イメージに苦しんだ前例がある。単に給料の不満だけでなく、多くの従業員は、医療保険や年金制度の不十分さを訴えていた。そこでウォルマートはコマーシャルを使った。生き生きと微笑みながら働く従業員の姿が映し出され、見るからに明るい職場、といった雰囲気が伝わってくる。

話をマクドナルドに戻そう。ジョブ(JOB)は仕事や職、という意味だが、マックジョブ(McJob)という俗語がある。マックはビッグマックで分かるようにマクドナルドを指しているが、マックジョブを辞典で引くと、こんな説明が出てくる。「給料の低い出世見込みの無い仕事。」これにはマクドナルドも参ったことだろう。

記者会見の席で、カール・ルイス選手が言ったことを記しておこう。「私がマクドナルドで働いたのは16歳のときです。チームワークと、テキパキと仕事をする重要さを学びました。とにかくスピードが大切です。もし数秒遅れていれば、金メダルは取れないように、ノロノロしていてはお客さんに渡す前に、フレンチフライは冷えてしまいます。」はたしてマクドナルド、スピーディーに企業イメージを一新できるだろうか。

プログラムトレード入門

あと5セント下がったら損切るしかない、と半分諦めていると、突然SP500指数が跳ね上がった。何が起きたのだろう。チャートを見ても、別に重要なサポートラインにぶつかり反発しているわけではない。とにかく良かった。この指数の思いがけない回復で、持ち株が上昇し始めた。トレーダーならそんな経験をされた事があると思うが、マーケットを襲ったプログラムトレードに助けられた可能性大だ。

大手証券会社のコンピュータによって執行されるプログラムトレードだが、先ずその定義を説明しよう。プログラムトレードとは、15以上のSP500指数に属する銘柄を同時に買い(または売り)、その総額が100万ドル以上になる取引の事だ。プログラムトレードは、ダウ指数の上げ下げ幅によって執行が制限される。実際の数値は各四半期ごとに調整されるが、ダウ指数が210ポイント以上動いている時はプログラムトレードが出来ない。

HLキャンプ社のハンク・キャンプ氏によれば、ニューヨーク証券取引所の総出来高の約60%は、プログラムトレードによるものだという。特にUBS証券のプログラムトレードが圧倒的に多く、その次がリーマンブラザース、モルガンスタンレー、ファーストボストン、ゴールドマンサックス、そしてメリルリンチと続くようだ。

それでは、23年間プログラムトレードを研究しているキャンプ氏に、もう少し話してもらおう。「プログラムトレードの仕組みがよく分からなくても構いませんが、SPプレミアム指数を理解することが大切です。この指数には先行指数的な要素があり、これを正しく利用することで、マーケットの次の動きを予測することができます。もちろん、プレミアム指数からも、プログラムトレードの入るタイミングを、ある程度読むことができます。ですから、私はプレミアム指数に勝る指数は無いと思います。

プレミアム指数は株価のように証券取引所から出されるものではなく、それぞれのデータ会社が計算し、投資者に配信しています。簡単にプレミアム指数を説明すれば、これはSP500先物指数と、SP500キャッシュ指数の差額です。た易く計算できそうな指数なのですが、データ会社によって数字がまちまちになり、明らかに間違った数値を配信している会社もあります。ですから注意しないといけないわけですが、コムストック社からは良いデータが出されています。」

実際のプレミアム指数の使い方は「企業秘密」、ということで教えてくれないキャンプ氏だがヒントがある。プログラムトレードは、SP500先物指数とSP500キャッシュ指数が離れすぎている時に起きやすい。だから3分足や1分足などのチャートで、SP500先物指数、SP500キャッシュ指数、そしてSPプレミアム指数を監視するわけだ。そんなことをしているヒマは無い、と言われる方なら、下のホームページが参考になるかもしれない。
http://www.indexarb.com/

6時起床、6時15分朝食、そして7時の電車で会社へ向かう。毎日繰り返される日課だが、こんなお決まりの手順を踏むことが株トレードにも重要だ、とマネーマネージャーのブランドン・フレデリクソン氏は言う。同じことの繰り返し、と言うと退屈なかんじがするが、これが生活に一定のリズムをつけることになる。

フレデリクソン氏はデイトレードから長期投資まで手がけているが、氏の一日は先ずニュースをチェックすることから始まる。窓(ギャップ)を積極的に利用する氏のデイトレード方法は、格上げや格下げ、それに収益予想などのニュースに大きく影響される。小さなギャップでは大したトレードはできない。だから当然、大きなギャップになりそうなニュースを中心に探すわけだ。(ギャップトレードなら馬渕氏のGapper’s Eyeを参照してほしい)

長期投資には、収益、売上、新製品、経営陣などのファンダメンタル的な要素も考慮するが、ここでもギャップが大切になる。ギャップは買い手と売り手の極端なアンバランスを表し、ギャップ一つがトレンドの転換点になることも珍しくない。だからフレデリクソン氏は大きなギャップだけに注目するわけだ。

マネーマネージャーという職業柄、どうしてもファンダメンタルズが重要視されてしまうが、チャートについて氏はこう語っている。「頭に拳銃を突きつけられて、チャートを取るか、それともファンダメンタルズを選ぶか、と脅されたらファンダメンタルズを取ると思います。しかし、チャートが無いと売買タイミングがつかめません。ですから両方欲しいのが本音です。」

チャートの利用方法について、フレデリクソン氏は次のような注意点を挙げている。「ストキャスティクス、MACD、RSIなど多種の指標がありますが、これらはトレードの弊害になります。機械的な売買をするなら別ですが、特に初心者は指標利用には気をつけなければいけません。大切なのは値動きと、値動きが作り上げるチャートパターンです。そして出来高も売買プレッシャーを見るために役立ちます。」

指標嫌いの氏だが、氏が一つだけ気にいっている指標がある。それを最後に紹介しよう。リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ、という有名なトレーダーが使っているデイトレード方法に、ショートスカートというものがある。モメンタムを利用したやり方なのだが、これにはケルトナーバンド、と呼ばれる指標が必要だ。ケルトナーバンドは、一見するとボリンジャーバンドに似ているのだが、値動きの勢いを把握するのに便利らしい。

ある大手企業が、20人のファンドマネージャーを使って、会社の資金を株で運用させた。一定期間が過ぎ、途中経過を報告させたところ、一つ腑に落ちない事が出てきた。最も優れた成績を上げたファンドマネージャーは、勝率が極めて低いのだ。ポートフォリオ全体の上昇率は文句無い。しかし、一つ一つ銘柄を調べてみると、下げ銘柄数が上げ銘柄数を、はるかに上回っている。何故こんなことが起きたのか、早速会社側はファンドマネージャーに説明を求めた。

「当たる確率はさほど重要なことではありません。大切なのは、当たった銘柄が、どの程度大きく伸びるかです。4社の株を買ったとしましょう。当然なことですが、3銘柄の損を小さく抑えて、残りの1銘柄で大きく儲けることができれば良いわけです。確かに個々の銘柄だけで見れば、3対1で下げの勝ちですが、ポートフォリオ全体はプラスになります。」

負け数が目立っても株で勝てる。三振が多くても、ベーブ・ルースのようにホームランを重要な場面で打てれば、株の世界で十分生き残ることができる。しかし、このやり方は言うほど楽ではない。1979年、ダニエル・カーンマン氏とアモス・トバルスキー氏は、こんな発表をしている。「利益と損が与える心理的影響は、圧倒的に損が利益を上回ります。比率にすれば約2.5対1です。」違った言い方をすれば、投資者はたとえどんなに損額が少なくても、心理的にはかなり大きなダメージを受けるということだ。

悪い打率で株の世界で勝つためには、強力な精神力が要求される。一つ一つの損で傷ついていたのでは、ベーブ・ルースにはなれない。「ベーブ・ルースは天才、そんな人と自分を比べるのは間違いだ」、と言われるかもしれないが、ベーブ・ルースは714本の本塁打を確かに打ったが、1330回の三振も記録している。一々三振する度に気を落としていたのでは、714本の偉業は達成できなかったはずだ。

スランプで全く打てない時、ベーブ・ルースは記者たちに、こんなことを言った。「相手ピッチャーが気の毒だね。これだけ打てないのだから、そろそろホームランがガンガン出る頃だ。」これが天才と凡人の違いだと思う。トレーダーたちもよく言うが、株は技術2割、精神力8割の世界だ。自分のルールに従って負けたのなら、必要以上に気を落とすことはない。繰り返すが、ベーブ・ルースは1330回も三振をしたのだから。

金人気の秘密、それは日本経済

金に人気が集まっている。ここで言う金とはカネのことではなく、ゴールドのことだ(念のため)。話はいきなりそれるが、昔の学生たちはカネが無くなり困り果てると、「ゲルピン」という言葉を使ったそうだ。ドイツ語でカネはゲルト、危機は英語でピンチと言う。なんと英語とドイツ語の合成語だったわけだが、なかなか上手い表現だ。

下はゴールド指数の日足チャートだ。9月9日にブレイクアウトして、ここのところ3連勝と調子が良い。金は普通の経済状態なら、まず人気化することはない。インフレ対策が主な金を買う理由だから、投資者たちは物価高を予想しているわけだ。

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金が買われる、ある具体的な理由を、アルスタッドキャピタル社のマイケル・アルスタッド氏に説明してもらおう。「10回連続の金利引き上げで分かるように、連邦準備理事はインフレと戦っていますが、ここで日本に目を移してみましょう。第1四半期の日本国内総生産(GDP)は5.3%の成長を記録し、そして第2四半期は3.3%の伸びでした。世界第2位の経済国家は、確固とした二期連続の成長を示したのです。また先日の選挙は小泉首相の大勝利となり、国内改革政策はこれからも進んで行くと思われます。個人消費も順調な伸びを見せ、雇用状況も好転しています。ですから当然、企業も設備投資に力を入れ始めています。

日本=デフレの公式を直ぐ想像する投資者が多いですが、その公式は過去のものになろうとしています。世界的なデフレ傾向の原因となった日本経済ですが、2005年の終わりまでにはインフレの兆しが見えて来るはずです。もう一度言いますが、世界第2位の経済国家がインフレに転ずるのです。それは正に、巨大な焚き木が炉の中へ投げ込まれのと同じです。

日本経済が本格的に上昇を始めたら、どれくらいのオイルを消費すると思いますか。日本はオイル資源ゼロ、という事実をご存知ですか。これが金人気の秘密です。金価格が、ここ17年間の高値をつけましたが、全く不思議なことではありません。日本経済の成長は、世界的なインフレ懸念に結びつくのですから。」

火曜日はFOMC(連邦公開市場委員会)だが、ハリケーン・カトリーナの後とはいえ、11回連続の金利引き上げを信じる人が多い。ジョン・ハンコック社のオスカー・ゴンザレス氏によれば、「高騰するオイル価格は周知のことですが、結果的にはカトリーナはインフレの原因になります。政府は膨大な予算をルイジアナの再建に割り当て、これは建築関連を中心に、アメリカ経済向上材料になります。ですから、やがて物価高という状況へ変わっていくことでしょう。」どちらにしても、FOMCを控えるかぎり、しばらく模様眺め、といったところだろう。

高い買い物

スカイプと言えばインターネット電話会社だが、この買収を狙ってイーベイが本格的に動き出した。買収価格は41億ドルと推定されているが、早くもイーベイはウォールストリートで笑いの種になっている。ルクセンブルグに本拠地を置くスカイプだが、2004年度の売上高は米ドルに換算すると約700万ドルだった。こんな会社に、イーベイは41億ドルまで払おうというのだから、正気の沙汰ではないと思われても仕方ない。

スカイプがイーベイの収益上昇に結びつくかは分からないが、インターネット電話の専門家、ジェフ・プルバー氏はこんな見方をしている。「イーベイで買った品物は、ペイパルを通して代金の支払いが行われますが、スカイプの買収が実現すると、イーベイは次世代のロイターになる可能性があります。」

次世代のロイター?意味不明な表現だが、コリン・バー氏(ザ・ストリート・ドット・コム)はこう皮肉る。「ロイターといえば、度重なるコスト削減にもかかわらず、ここ4年間まったく利益の無い企業です。最近2年間では20%ほど社員を減らしましたが、その効果はまだ見ることができません。株価は2003年の安値から回復ラリーを展開しましたが、5年前と比べれば、まだ半分以下です。」41億ドル、高い買い物になりそうだ。

高くつくのはハリケーン・カトリーナの後始末だが、保険会社は保険金の支払いに積極的でない。雨や暴風が原因なら問題ないらしいが、洪水での家屋破損は保険の対象外になる、というわけだ。「ケシカラヌ!」、と叫んだかどうかは知らないが、ミシシッピ州検事総長事務局のジム・フッド氏は保険会社5社を訴えた。告訴されたのは、オールステート、ステートファーム、ネーションワイド、USAA、そしてミシシッピファームビューローだ。

上記したように、雨や風が引き起こした被害なら、保険金は間違いなく支払われる。ただ、ミシシッピ州の場合、洪水保険は州政府が用意していた。暴風雨が堤防を破壊し、それが洪水となって多数の家屋を襲ったわけだが、保険会社から見れば、これは明らかに洪水の被害であり雨や風が直接原因ではない。しかし、州政府や家屋を失った人々は、「風津波が引き起こした災害だから、これは風が原因。だから保険対象になる」、と主張する。どちらにしても法廷で決着をつけることになるが、はたして被害者たちは判決が出るまで待てるのだろうか。

遅すぎた企業再生手続き

チームが勝てないのは監督が悪い。子どもの成績が上がらないのは先生の責任。高すぎる税金は大統領のせいだ。物事はこんなに単純ではないが、この論法でいくと、破綻したデルタ航空とノースウエスト航空は経営陣の責任ということになる。

既に破産保護の下で営業しているユナイテッド航空とUSエアウェイズ(アメリカウエスト航空と合併)は、四年前の9月11日にニューヨークを襲ったテロ事件が、直接的な経営危機に陥る引き金になった。あの日、ユナイテッド航空の二機はテロリストにハイジャックされ、USエアウェイズの主要拠点である、ワシントンレーガンナショナル空港は数週間以上も閉鎖されてしまった。

航空業界のアナリストが口を揃えて言うことは、デルタとノースウエスト航空は正確なデータに基いた判断からではなく、状況は好転するだろう、といった希望的な観測を基盤に営業を続けたことだ。オイル価格は必ず下がる。弱い競争相手は破綻するだろう。低コストを土台にビジネスを開始した航空会社は、遅かれ早かれ致命的な間違いを犯して、業界から消えていくに違いない。下げ続ける航空料金はいずれ上向きになり、企業収益も向上するはずだ。これらの期待は、全て外れてしまった。

「デルタ航空は連邦破産法に基いて、1年半前に会社再生手続きをするべきでした」、と語るのは航空会社コンサルタントのジョン・アッシ氏だ。「デルタは状況を完全に読み間違えました。ライバルのUSエアウェイズとインディペンデンスエアの倒産を予想していたのですが、USエアウェイズは買収され、インディペンデンスエアは現在も安い航空チケットを売り物に飛んでいます。これでは期待していたマーケットシェアを伸ばすことなどできません。」

企業再生手続きが遅すぎた、という見方はノースウエスト航空にも言えるようだ。マイケル・ローチ氏(アメリカウエスト共同創立者)によれば、「ハリケーン・カトリーナは単なる言い訳です。ノースウエストは労働組合との交渉に、あまりにも弱気すぎます。待っていれば自然に事態が良くなる、とでも思っていたかのようです。しかし、最近高騰の続くオイルがノースウエストを現実に直面させました。どちらにしても今まで何もしなかったのですから、残った選択は破産法の適用しかなかったわけです。」

労働組合で思い出したが、ノースウエストの整備士たちは現在ストの真っ最中だ。ある整備士がこんなことを言っていた。「私たちの要求が認められないかぎり仕事には戻りません。たとえこのストが原因で会社が倒産になっても構いません。」どうやら、一つの願いはかなったようだ。

コーヒーを飲みながら、チャットルームをぼんやり眺めていると、やたらとBIDUの四文字が出てくることに気がついた。BIDU(バイドゥ・ドット・コム、中国のサーチエンジン)はナスダック市場で取引される、第二のグーグルと騒がれた、今年夏一番人気の新規公開株だ。初取引は8月5日、66ドルで始まり、なんと倍に近い122ドル54セントで終了した。正に第二のグーグルにふさわしいデビューだった。

しかし、BIDUに何が起きたのだろう。時間外取引では28%の大きな下げだ。デイトレードネットの代表取締役、馬渕氏も掲示板で「昨日手仕舞いした人は安堵しているはず」、と書き込まれていたが、本当にそのとおり、と言うしかない。こんな下げ方だから、大手証券会社アナリストのコメントが原因になっていることは見当がつくが、はっきり言ってこの暴落は意外だった。なぜなら今日の上げに期待して、昨日一昨日とBIDUを買っていた投資者が多かったからだ。

少し説明しよう。新規公開株の取引が始まった最初の一ヶ月間は、買いや売り推奨を出すことはできない。ほとんどの場合この一ヶ月の時間が切れると、幹事証券会社のアナリストは買い推奨を発表する。だから投資方法の一つとして、買い推薦を期待して取引が一ヶ月に近い新規公開株を買う。先月5日に取引が開始されたBIDUも約一ヶ月が経過し、先週から買い推奨を見込んだ投資者たちが買っていたわけだ。

ところが今朝、ゴールドマンサックスのアナリストが発表したBIDUの格付けはアンダーパフォームだった。underperformだから、平均以下の成長しか期待できない。エリート証券として有名なゴールドマンサックスの言葉だっただけに、完全な売り一色となってしまった。おまけにパイパージャフレーも同様な見方を表明し、BIDUの投資者には痛烈なダブルパンチだ。

しかし、ちょっと待て。ゴールドマンサックスはBIDUが新規株を発行した時の幹事証券会社、そしてパイパージャフレーは準幹事だ。要するに投資者たちは、これら二社の証券会社からの買い推奨を見込んで買っていたのだが、見事に期待を裏切られてしまったわけだ。幹事証券が買いを薦められないのだから、そんな株に手を出す人はいない。最後にゴールドマンサックスとパイパージャフレーからのコメントを記しておこう。「たとえどんなに前向きな見方をしても、現在のBIDUの株価はあまりにも割高です。正当な株価は45ドルです。」今BIDUは89ドル75セントで取引されている。

ノースウエスト航空の整備士がストに入ってから、約3週間が経った。会社側も今日から、新規従業員を雇って、スト中の整備士を入れ替える方針だ。これで整備士たちは完全に職を失う可能性が出てきたが、AP通信によれば、今のところ職場に戻ったのは、たった5人だけだという。

話し合いが駄目なら、人々はストのような強硬策を使って、相手側に自分たちの要求を呑ませようとする。ガソリン高がアメリカの消費者を悩ませているが、こんなメールがMSNBCに宛てられていた。

国民一同でガソリンのボイコットをするのはどうでしょうか?ある程度の期間ボイコットすれば、オイル会社はガソリンを値下げするしかないと思います。(カリフォルニア在住、マーク)

この質問に回答したのは、シニア・プロデューサーのジョン・ショーエン氏だ。「短期間のボイコットでは、ガソリン価格に長期的なインパクトを与えることはできません。たとえ全ての人が、数日間ボイコットに参加したとしても、ボイコットが終わってしまえば、またもとの需給関係に戻ってしまうわけです。」

更にショーエン氏の話を聞いてみると、ボイコットは逆にガソリン高に結びつくと言う。「大々的な規模でのガソリンボイコットを考えてみてください。明日からボイコットが始まるなら、あなたは今日中に車のガソリンタンクを満タンにすることでしょう。そうするのは、はたしてあなただけでしょうか。皆が一斉にガソリンスタンドに押し寄せることでしょう。これは一時的にガソリン不足を生む原因になり、1ガロン(3.785リットル)10ドルなどという事態になってしまうかもしれません。」ボイコットするよりも、節約を心がけた方がよさそうだ。

物が豊富にある時代だから、はたしてどのていど節約精神に期待できるか分からないが、食料品は豊富な物の一つだ。あまり食べ過ぎるから、アメリカ人の4割近くは肥満だ。この肥満は大人だけの問題でなく、幼稚園や小学校の子どもにまで広がっている。そんなわけで子どもが太るのはハンバーガーやフレンチフライが悪い、ということでマクドナルドを批判する大人たちが多い。別に子どもを太らせようとして、マクドナルドは商売を始めたわけではないが、ボイコットなどされてはたまらない。そこでマクドナルドは、こんなことを発表した。

約31000の公立小学校を対象に、マクドナルドは体育プログラムのスポンサーになる。参加するのは3年生から5年生が中心になるようだが、「地域社会に貢献することは、マクドナルドのイメージアップにつながります」、とマーケティングを担当するビル・ラマー氏は言う。そうかもしれないが納得できない。正しい食生活や、適度な運動の大切さは親や学校が子どもに教えるべきことだ。自分で食事の用意もせず、子どもに小銭を持たせて、「マクドナルドで何か買って食べなさい」、と命令するのは、いったいだれなのだろう。

水は水、コマーシャルの威力

蛇口をひねれば水はタダで飲める。しかし、わざわざ金を出してボトル入りの水を買う人が圧倒的に多くなった。以前はぺリエしか名前が浮かんでこなかったが、今日コンビニでは、少なくともアクアフィナ、ダサニ、クリスタルガイザー、エビアンなどのボトル入りの水が売られている。

ABCニュースの質問に、高校生くらいと思われる女生徒は、こう答えた。「いつもダサニを飲んでいます。とても自然な味がしておいしいです。水道の水ですか?飲みません。下水のような匂いがしますから。」ある中年の男性は、少し照れたように、こんな返答をした。「私は家で水道の水を飲んでいますが、家族の者たちはだれも水道の水を飲みません。水道の水は汚染されているから危険だと言うのです。」

本当に水道の水は人体に悪いのだろうか。早速ABCニュースは調査に乗り出した。対象になったのは、アメリカで人気のボトル入り水5種類と、ニューヨーク市内の水道の水だ。実際のテストは、ニューハンプシャー大学のアーロン・マーゴリン氏(微生物学者)によって行われた。

テスト結果は、どの水からも有害なバクテリアは発見されなかった。コマーシャルを見ると、ボトル入りの水はとても健康的だが、これは単に作られたイメージだったわけだ。マーゴリン氏は、「ボトル入りの水と、ニューヨークの水道の水に、何の違いも見つけ出すことはできません」、と語っている。マーゴリン氏に限らず、アメリカでは他の科学者によって同様なテストがされているが、結論はマーゴリン氏と同じだ。

それでは販売されているボトル入りの水は、本当に水道の水よりもおいしいのだろうか。マンハッタンの街角で、通行人を集めてABCニュースは味見テストを実施した。水はマンハッタンの水道水、ボトル入りの水には、エビアン、アクアフィナ、ポーランドスプリング、アイスランドスプリング、そしてアメリカンフェアが使われた。

さて結果だが、一番人気のあったのはアメリカンフェアだ。あまり聞いたことのない名前だが、これは日本で言う100円ショップのようなところで売られている最も安いボトル入りの水だ。2位はアクアフィナ、そして3位はマンハッタンの水道の水。次はアイスランドスプリング、そしてポーランドスプリング、最下位は最も値段の高いエビアンだった。水は水だ。コマーシャルの力は恐ろしい。

グーグルの弱点?

ユナイテッド航空が、会社更生手続きの申請をしたのは2002年の終わり頃だった。毎日2千万ドルの赤字を出しながら飛んでいたというから、連邦破産法第11章に基いて、会社の再生手続きをするのは当然な結果だったわけだ。そして先週水曜、最高経営責任者は記者会見で、こんな発表をした。「ユナイテッド航空は2月1日までに、現在の破産保護状態から抜け出せると思う。そして2006年中には利益が出せるはずだ。」力強い言葉なのだが、一つ問題がある。この見通しは、1バレル50ドルのオイル価格が基準になっている。オイルは今、65ドル近辺で取り引きされているのだが、、、、、

オイル高原因の一つとなったハリケーン・カトリーナだが、被害者救済を名目に詐欺師たちが大活躍している。FBIの調べによれば、現在約2300のハリケーン災害救援ホームページがあり、そのほとんどは偽物だという。家を失った人々を利用して、善良な市民から金を盗み取ろうとするのだから悪質だ。大きく分けると、手口は三つある。

1、フィッシングと呼ばれるやり方だが、これはクレジットカードの情報を盗むことが目的だ。あたかも合法的と思われる組織の名前を使って作られたウェブページには、クレジットカードでの募金が呼びかけられている。騙されていると知らない被害者は、クレジットカード番号だけでなく、住所や電話番号なども記入してしまう。正に個人情報が盗難され、悪用されてしまうわけだ。

2、メールは詐欺に最も多く使われる手口の一つだが、このメールにはウイルスが付いている。破壊された家屋や、悲しむ人々の写真などが添付されてくるのだが、これを開けてしまったら大変だ。コンピュータはたちまちウイルスに感染し、ハッカーにコンピュータ内の情報を読み取られてしまう。これも1の手口と同様に、個人情報盗難が目的だ。

3、これもメールが利用される。「あなたのお知り合いや、親戚の方がハリケーンで行方不明になっていませんか?」、そんな書き出しで始まることが多いらしい。要するに人探しのプロと偽って、捜査料金を騙し取ることが目的だ。もちろん、捜査料金の支払いにはクレジットカードが利用される。

人探しなら警察や私立探偵だが、インターネットで何か探すならサーチエンジン、グーグルが便利だ。さてこのグーグルだが、結果の公表されない判決があった。相手は自動車保険のガイコという会社だが、判決後は両社とも勝利を表明している。この裁判を簡単に説明しよう。ガイコの保険に加盟しようとして、グーグルで検索すると、自動的に競争相手の会社も出てくる。これはガイコに損害を与える結果になるだけでなく、ライバル会社に客を奪われてしまうことも起きえるわけだ。上記したように判決内容は分からない。しかし両社とも勝った、と断言している。ひょっとしたら、これは将来的にグーグルにとって大きな問題になるのだろうか。

こんな会社辞めてやる!サラリーマンなら一度は考えることだ。仕事がつまらないから、そんなことを言うわけではない。問題は職場での人間関係、特に上司とうまくいかないのだ。そんな悩みを持つ方々に、フォーブス誌は上司のタイプ別による対処方法を紹介している。

1、マキアベリ的な上司:目的のためには手段を選ばない、策略にたけたタイプだ。会社のトップを目指して、冷酷に部下を道具あつかいする。よく「君に対して反感はないが」の前置きで、部下に対して平気で屈辱的なことを言う。

対処方法:最も危険なタイプだけに、常に慎重な行動が要求される。他の課への移動も考えよう。

2、サド的な上司:部下が泣いたり、喚いたり、そして歯ぎしりをして口惜しがる姿を見て喜びを感じる、心の曲がったタイプ。厳しく部下を注意し、がっくりと肩を落として机に戻る部下の姿は、この上ない光景だ。

対処方法:どんなことがあっても、泣いたり不平を言うな。それは相手を喜ばせるだけだ。冷静な態度を身に付けたい。

3、マゾ的な上司:やっかいなタイプだ。既に自分の会社での将来に見切りをつけ、毎日の仕事が苦痛でたまらない。自分の苦しみを部下にも分けてやろうとばかり、無意味な仕事を部下に言いつける。

対処方法:こんな上司の下で働いていたのでは、絶対に昇進できない。早急に他の部門、または転職を推薦する。

4、被害妄想的な上司:全ての部下は自分の椅子を狙って陰謀を企てている、常にそんなことを心配する猜疑的なタイプだ。

対処方法:「重要な話があります」、と言って上司と二人だけで話せる時間を作ろう。「実は、あなたを失脚させようと陰謀を企ている人たちがいるのですが、、、」、と切り出してみよう。たぶん望むセクションへ移れるように計らってくれるだろう。

5、親友的なボス:部下たちが野球を観に行く計画をしていると、誘われてもいないのに自分も仲間に入れてしまう。ひどくなると、クリスマスだといって勝手に部下の家に押しかける。

対処方法:顔を舐めることの好きな大きい犬を上司にプレゼントしよう。犬の愛に包まれて、上司の外出は減るはずだ。

明らかに冗談と思われる対処方法もあるが、ほとんどの場合、喧嘩をして負けるのは部下の方だ。心理学者、ジョン・フーバー氏の言葉を引用して終わろう。「嫌いな上司は、どんなことに興味があるかを調べてみることです。ひょっとしたらアイスホッケーファンかもしれません。別にホッケーの話をする必要はありません。アイスホッケーで使うパックを、自分の机に置いてみるのです。そんなことがキッカケで、上司との会話が始まるかもしれません。とにかく自分に危害を加える上司の態度を中和することが先決です。」

アメリカは実力主義社会だと思っていたが、こんな数字をつきつけられると、少し考えてしまう。先ず下の月足チャートを見てほしい。

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低迷というよりも、正に株主の悪夢だ。シエナ社のチャートだが、ここ4年間で90%も下げている。余談になるが、これで下がったところで買い足す、難平買いの怖さが分かっていただけると思う。

もしあなたがこのシエナ社の大株主だったら、必要な票を集めて、株主総会で最高経営責任者(CEO)を辞めさせるのではないだろうか。株主に利益を分けることができないようでは、経営者として失格だ。しかしシエナは、最高経営責任者のギャリー・スミス氏を首にするどころか、逆に過去4年間で4120万ドル(約45億円)の報酬を支払っている。

こんな例はシエナ社だけではない。サンミナ社の株は最近4年間で78%の価値を失ったが、最高経営責任者、ジューラ・ソーラ氏には2640万ドルが報酬として払われた。呆れてしまうのは、この報酬のうち1990万ドルは実績ボーナスという名目だ。

他にもサン・マイクロシステムズ社のスコット・マクニーリー氏には1310万ドル。(株価は4年間で76%の下落)大手スーパーマーケット、アルバートソンズ社のラリー・ジョンストン氏の報酬は7620万ドル。(株は4年間で39%の下げ)そして、過去4年間で株価が半分になったブリストル・マイヤーズ社のピーター・ドーラン氏には、4100万ドルの報酬が支払われている。ファンドマネージャー、ドン・ホッジス氏の言葉を借りれば、まるでロックスター並の金額だ。

野球やバスケットボールを引き出す必要もないが、高給を取るには、着実に実績を上げるだけでなく、チームに大きな貢献をしないといけない。成績に関係なく、最高経営責任者に高額な報酬を払う会社には、一つの共通点があるとホッジス氏は言う。「シエナやサンミナを調べて分かることは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の貧弱さです。私の運用するファンドは、今年35%の利益が出ていますが、納得のできない報酬を最高経営責任者に払っている会社には投資しません。」

最後に上記企業とは逆の、優良企業を紹介しよう。

・セレダイン社:過去三年間、最高経営責任者の年俸は76万6000ドル(約8千426万円)。株価は+924%。
・ホールフーズマーケット社:最高経営責任者は過去4年間、平均年俸は64万5000ドル。株価は306%増。
・ディジ・インターナショナル社:年俸74万ドルが最高経営責任者に過去3年間払われた。株価は320%の上昇。

練習試合ではガンガンと長打を飛ばすが、本番になると全く打てなくなってしまう選手がいる。既にそれなりの技術はマスターしているが、精神面の弱さが成功への道を阻んでいるわけだ。株や先物指数のトレーダーにも、同様な症状に悩む人たちが多い。ペーパートレード(実際の資金を使わない売買練習)の時は素晴らしい成績を上げるが、実トレードに移ると正反対なことをしてしまう。損が重なり資金が減ると、どうしても自信喪失となる。

アリ・キエフという有名なトレードコーチがいる。氏はプロスポーツ選手の精神面コーチとしての経験を生かして、現在はヘッジファンドマネージャーや、証券会社のトレーダーたちをコーチしている。特にSACキャピタル社はキエフ氏の指導の結果、2500万ドルの資金を5億ドルに増大させた。さっそく氏の話を聞いてみよう。

「成功しているプロスポーツ選手とトレーダーには、いくつかの共通点があります。絶えず自己分析を行い、より優れた成績を上げるために、何をどう改善するかを検討します。練習復習、練習復習を繰り返して、平均的な結果に満足するのではなく、常に最高なレベルを求めるわけです。

株や先物トレードがうまくいかない、と悩んでいる人の多くは明確なゴールを持っていません。漠然と儲けたい、と言うだけでは、目的地の無いマラソンのようなものです。これでは正しく売買を分析できません。トレードで失敗が重なる大きな原因は、あまりに感情的になるからです。勝つ度に大はしゃぎ、負ける度に絶望に陥る。完全に感情に支配されています。大切なのはゴールに焦点を合わせることであり、トレードのスリルを味わうことではありません。」

もちろんキエフ氏は、感情を殺せ、と言っているわけではない。どんなに嬉しい時でも冷静に、第三者的な立場で自分を見ることが大切であり、これが成功への鍵になる。氏の話を続けよう。「私たちは常識で物事を見る習性があります。言い換えれば、私たちは一般の人たちと一緒に箱の中に入っているわけです。画期的な発明やアイディアは、この箱の中からは生まれません。毎朝トレーダーたちはインターネットで情報を集め、皆同様な売買を試みるのですから、失敗しても当たり前です。」どうやらコーチは大衆の逆を行くことを薦めているようだ。

ポール・アカード氏(36才)、ニューオーリンズ市警官、がピストル自殺した。全く冗談の通じない、超真面目警察官だったらしいが、ハリケーン・カトリーナの犠牲者になってしまった。市民を安全な場所へ誘導するだけでなく、次々に起こる商店の略奪で、警官たちの労働時間は一日20時間近い日々が続いている。

アカード氏もハリケーンで家を失った一人だが、「まるで何年も寝ていない病人のようでした」、とマーロン・デフィロ警部は言う。愚痴をこぼしても始まらない、とにかく今は出来る限りのことをするだけだ。必ず明るい日がまたやって来るさ、と警部はアカード氏をなぐさめたようだが、ハリケーンの傷はあまりにも深過ぎた。

一人一人の力も大切だが、大災害から立ち直るには強いリーダーが必要だ。コラムニストのペギー・ヌーナン女史は、こんなことを述べている。「ルーディー・ジュリアーニ氏(ニューヨークを襲ったテロ事件時の市長)から、政治指導者たちは学ぶことがあると思います。事件後ジュリアーニ市長は何度も記者会見を行いましたが、氏が言ったことはとても具体的なものでした。

たとえば、No.4の地下鉄は11時まで運行停止になる、また土曜日はどの道路が交通止めになる、といった正確な情報です。市長は適切に状況を把握している。これなら市のことはジュリアーニさんに任せておけば大丈夫だ。そんなふうに思った市民が多かったことでしょう。

キャスリーン・ブランコ、ルイジアナ州知事をジュリアーニ市長と比べてみましょう。ハリケーン直後、数回の記者会見で、州知事は動揺を隠すことができませんでした。知事は繰り返し被害者に対しての同情を強調しましたが、これはリーダーとして適切な態度とは言えません。もちろん知事も人間ですから、家を失った人たちを気の毒と思うのは当然です。しかし、知事は具体的な情報、そして州政府はどう問題に対処していくのか、といった肝心なことを人々に伝えることができませんでした。」

ここで話はブッシュ大統領へと進むのだが、ヌーナン女史は痛烈な批判を浴びせている。「大統領は湾岸州に起きた大災害を、本当に理解しているのでしょうか。たぶん大統領は、ペルシャ湾にしか興味がないのでしょう。商店街は一部の市民たちに荒らされ、下水システムの破損で市は伝染病の危機にさらされているのです。とにかく、もっと多数の兵をニューオーリンズに送らなければだめです。」アメリカ、真のリーダーは不在のようだ。

夏休み最後の連休が終わり、明日から本格的な秋の相場が始まる。今日もハリケーン・カトリーナの被害が中心に報道されているが、簡単に先週のマーケットの様子を復習してみよう。

買われたセクター

1、ユティリティ(電気ガス)指数
2、日本指数
3、ヘルスケア指数
4、オイル指数
5、エネルギー指数

売られたセクター

1、ケミカル(化学)指数
2、航空会社指数
3、保険指数
4、銀行指数
5、ディスクドライブ指数

今週注目される経済指数

9月6日

ISMサービス業指数

ハリケーン・カトリーナと言うと、直ぐに高騰するガソリンに話が行ってしまうが、意外に話題にならないのが被害を受けたルイジアナの港だ。この規模はニューヨークやロサンゼルスの港を上回り、全米ナンバー1の貿易港というタイトルを持っている。全世界を見渡すと、ルイジアナは香港、上海、ロッテルダム、そしてシンガポールに次いで大きな貿易港だ。

約15%の米国輸出品は南ルイジアナ港を通るわけだが、中西部で生産されるトウモロコシ、大豆、麦などの農産物のほとんどはルイジアナ港に集まる。いつ正常に港が操業できるか分からないが、こんな状況がいくつかの投資チャンスを生み出した。

全米一の港に起きた災難で恩恵を受けるのはどこか。ここで俄然と注目を浴びたのがカナダだ。オイル、材木の輸出で知られるカナダだが、先ず下の日足チャートを見てほしい。

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カナダ・インデックスファンド(EWC)と呼ばれる、カナダの株に投資をするファンドだ。普通のミューチュアルファンドと違い、EWCはアメリカン証券取引所に上場されているから、株と同様に売買することができる。

約1週間ほど横ばいしていたが、刻一刻と報道されるハリケーン被害のjニュースが、EWCをブレイクアウトさせたようだ。貿易国カナダとしての魅力もあるが、やはり何と言ってもオイルが一番の買い材料になっている。アメリカはサウジアラビアから最もオイルを輸入していると思っている人が多いが、実際はカナダがナンバー1だ。地理的に見てもカナダは隣国、中東のような政治不安も無い。今回のハリケーンで、カナダからのオイル輸入は更に増えることだろう。

もう一つ覚えておきたいのは、大豆製造加工業のジャイアント、Bunge社だ。広報担当のデブ・サイデル氏の話によれば、Bunge社のルイジアナにある大豆処理工場が受けた被害は最小限だが、停電のため操業できない状態だという。しかし、問題は肝心な労働者たちが、いつ工場に戻ってくるのかが全く分からないことだ。秋の収穫も近い。港周辺の回復が大幅に遅れるようなら、大豆だけでなく農産物の値段が大きく上がることだろう。オイル高、ガソリン高、次は食料品、嫌な秋になりそうだ。

アメリカの失業率が4.9%に下がった。ここ4年間で最低の水準と報道されていたが、そんなことを聞くと、アメリカ経済は絶好調のように思えてしまう。そこで、もう少し詳しく4.9%の内容を見てみよう。先ず性別の失業率だが、男性は4.3%、女性は4.4%だ。人種別なら、白人は4.2%、黒人9.6%、そしてヒスパニック系は5.8%になる。最悪なのは10代の若者たちだ。なんと16.5%を記録している。

今回発表された失業率には、まだハリケーン・カトリーナの影響が含まれていない。エコノミストやアナリストに言われなくとも、報道される映像を見れば、多数の人たちが職を失ったことが分かる。あそこまで建物が破壊されてしまったのだから、一週間や二週間で職場に復帰するのは無理だ。ジョージア州立大学のラジーブ・ダーワン氏は、「ニューオーリンズは前例のない経済的ダメージを受けました。人々が実際に仕事に戻るまでには少なくとも三ヶ月、長ければ9ヶ月以上の時間がかかることでしょう」、と述べている。

グローバルインサイト社、フィル・ホプキンス氏によれば、ハリケーン前のニューオーリンズ地域失業率は4.9%だったが、この数字が25%に跳ね上がっても全く不思議でないと言う。被害のあった三州、ルイジアナ、ミシシッピ、そしてアラバマを総合すると、約100万人の失業者が予測されている。

ハリケーンが直撃した州の経済的大惨事は明瞭だが、アメリカ全体の経済に、どの程度の影響を及ぼすのだろうか。第3四半期のGDP(国内総生産)は+3.9%から+3.6%に減る、というアナリストの見方が一般的だが、金利動向になると簡単に意見が一致しない。マーケットストラテジストのリズ・アン・ソンダース氏は、「9月20日の会議でまた金利が引き上げられることは、だれもが予測していたのですが、このハリケーンで金利据え置きの可能性が出てきました」、と語る。

さて、9月5日(月)はレイバー・デー(労働者の日)でアメリカは連休になるが、最後にCNNからのニュースを紹介しよう。1100人を対象に調べたところ、42%はレイバー・デーを返上して働くという。約半分の人たちが職場へ向かうわけだが、なぜわざわざ祭日に仕事をするのだろうか。答えは、上司に言われたからではない。少しでも昇進昇格を早めたい、というのが理由だ。

眠る巨大睡眠薬マーケット

8時間は要らない。せめて6時間、いや5時間でもいいから毎晩ぐっすりと寝てみたい。バロンズ誌によれば、アメリカには6千万人の不眠症に悩む人たちがいる。およそ三分の一が医師に診てもらっているが、実際に処方せんが出ているのは、そのうちの半分だ。

「不眠症治療の処方薬マーケットには大きな可能性があります。正に眠れる巨人です」、と経済記者のヨアンナ・ベネット氏は言う。ベビーブーム世代の人たちが、次々と不眠症に苦しむ年齢に達し、処方薬の需要は2010年までに倍以上になる可能性が高い。証券アナリストのディーパック・カンナ氏も、「現在20億ドルほどの不眠症処方薬マーケットですが、向こう3、4年間で40億ドルに届くと思われます。安全そして効果的な新薬が開発されるなら、その製薬会社は大きく成長することでしょう」、と述べている。

不眠症患者には睡眠薬が処方せんとして出されるが、睡眠薬の問題はカンナ氏が指摘するように安全性だ。常用性の強い睡眠薬は規制薬物の一つに分類され、多数の医師もこれを患者に与えることを好まない。現在アメリカで最も使用されている睡眠薬は、サノフィ・アベンティス社のアンビエンだ。1993年から販売が開始されたアンビエンは、従来の薬より副作用が少ない。IMSヘルス社の話によれば、2004年、アンビエンの売上は19億ドルを記録し、これは米国睡眠薬マーケットの9割を占めている。

しかし、「来年アンビエンの特許が時間切れになります。ノーブランドの安い薬品に門戸が開かれるのです」、とベネット氏は強調する。さらにアナリスト、トリシア・ベーリー氏の言葉を付け加えよう。「アンビエンが特に優れた薬だったわけではありません。ただ他社が無視していた患者のニーズに応えただけです。」次のアンビエンを目指して、多くの製薬会社がこのマーケットに参加してくるわけだが、どの会社が有望なのだろうか。ベネット氏の意見を聞いてみよう。

「二社あります。まず武田薬品のロゼレムです。先月米国FDAから許可が下りましたが、不眠症治療薬として初めて規制薬物に属さない薬品です。もうひとつは、セプラコア社(SEPR)のルネスタです。データの不足が原因ですが、米食品医薬品局(FDA)はアンビエンの使用期間を10日間までに限定しました。しかし、ルネスタには6ヶ月間という長期服用が認められたのです。」

武田が勝つか、それともセプラコアか。もちろん、大手メルクやファイザーも黙っているはずがない。安全で常用性の無い睡眠薬、そんな薬を浅い眠りの中で、不眠症患者たちは夢みていることだろう。

不景気に陥る可能性は20%

堤防が崩れ、ニューオーリンズ市は大洪水となってしまった。まるで沈んで行く船のようだが、州知事は全住民に対して、ニューオーリンズからの立ち退きを命じた。人口48万におよぶ市民の80%は、既に週末、市を去ったが、まだスーパードームなどの200カ所に6万人以上が避難している。特に2万人を保護するスーパードームでは停電に続いて水洗トイレが故障し、人々の不満が高まっている。

一般的にハリケーンなどの自然現象が引き起こす被害は短期的なものだが、今回のカトリーナは例外のようだ。既にメキシコ湾にある92%のオイル掘削がストップし、いつ正常な操業を開始できるかの見通しがついていない。シェブロン社の話によれば、海底石油掘削装置のダメージを把握するだけでも今週末までかかってしまうらしい。

もちろん、ストップしたのは石油掘削だけではない。10%の製油所も停止してしまった。1ガロン(3.785リットル)2ドル62セントが、先週までの全米平均ガソリン価格だったが、次々と3ドルを突破するガソリンスタンドが現れている。オイル価格情報サービスのベン・ブロックウェル氏は、「ほぼ間違いなく、ガソリンは4ドルに達することでしょう」、と述べている。

1ガロン3ドル50セント以上は、米国経済不景気への引き金になる、との見方があるが、ナリマン・ベラベッシュ(グローバル・インサイト社チーフエコノミスト)の話を聞いてみよう。「最悪のシナリオを想定した場合ですが、ガソリンは1ガロン当たり3ドル50セントほどの状態が、向こう4カ月から6カ月間続くと思われます。そうなると、第4四半期GDP(国内総生産)の伸び率は±0%です。不景気に陥る可能性は20%程です。」

どちらにしても夏休み最後の連休を週末に控え、年間を通してガソリン消費量が大きく増える時期だ。米政府は今朝、備蓄石油の貸し出しを発表したが、これが週末までに間に合うわけがない。一時的にオイル価格上昇を止める効果はあるかもしれないが、今のアメリカには肝心な製油能力が欠けている。そろそろ秋、暖房用の灯油も必要になってくる。エネルギー節約が叫ばれているが、それよりも皆で暖冬を祈った方が良いかもしれない。

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