保育園の前に駐車していたバンから、約75ドル相当のガソリンが盗まれる。配達用に使っていた車3台から、約80ガロン(303リットル)のガソリンが盗まれる。地下タンクからガソリンをサイフォンで吸い取っていた男二人が、現行犯で逮捕される。どれも最近USAトゥデイで報道されたガソリン泥棒記事だが、値上がりの続くガソリンが原因になったことは言うまでもない。
日本ではあまり考えられないことだが、アメリカの車はガソリンが盗みやすい。日本の車なら、ガソリンの入れ口を覆ってある蓋は車内のレバーを使って開ける。しかし多くのアメリカ製の車は、簡単に外から開けることが可能だけでなく、ガスキャップにも鍵が無いから、サイフォンで楽々ガソリンを吸い取ることができる。こんな状況だから、USAトゥデイによれば、鍵付きガスキャップの売れ行きが好調だという。
全米最大の自動車部品店オートゾーンでは、先週1万個以上の鍵付きガスキャップが売れた。広報を担当するレイ・ポールマン氏は、「普通の週を60%以上超える売上です」、と述べている。他の大手自動車部品店、ペップボーイズ、それにアドバンスオートパーツでも、鍵付きガスキャップの販売数が上がっている。
生活必需品のガソリンだけに、消費者にとってこれ以上の値上がりは家計に響く。こんな状況を反映して、ハワイ州は卸売ガソリン価格に上限を設定した。現在ハワイにはシェブロンとテソロのオイル会社があるが、これら二社に対して州政府は、1ガロン2ドル15.78セント(2ドル67セント税込)の上限価格を通達した。もちろんオイル会社がそんな法律を歓迎するわけがない。シェブロン社は「卸売上限価格はハワイに有益でない」、そしてテソロ社は「需給関係を歪める」、と州政府に不満の声を上げている。
「これでハワイに正当ガソリン価格が戻ります」、といったフランク・ヤング氏のような意見も聞かれるが、意外と卸売価格上限設定に批判的な消費者も多い。フェライドゥン・フェシャラキ氏の言葉を引用しよう。「上限価格の設定は、賢いやり方ではありません。このような法律が通ったのでは、ハワイに進出しようなどという企業が無くなってしまいます。それだけではありません。現在ハワイで操業しているオイル会社が撤退してしまうかもしれません。」
はたして政府はどこまでビジネスに介入すべきか。あまりに規制が多いと、企業活動が鈍るだけでなく、上記フェシャラキ氏の言うように、企業誘致が困難になる。値段や価格は需給関係が決めるものであり、政府が人工的に操作するべきではない。卸売上限価格は9月4日から実施される。ハワイの将来はどうなるのだろうか。