ウッディーの愛称で呼ばれる初老デイトレーダー、ケン・ウッド氏のチャットルームには、毎日400人以上の人たちが集まるという。皆の目標は一つ。プロデイトレーダーとしての成功だ。希望に燃える同志たちに、ウッディーは時々こんな話をする。
「最近読んだ記事ですが、これは交通事故で左腕を失った10才の少年が、柔道大会で見事に優勝した話です。日本から来た黒帯の先生が実際に指導してくれたのですが、道場通いが始まって3ヶ月経っても、先生は一つの技しか教えてくれません。とうとう我慢ができなくなった少年は、新しい技を習いたい、と先生に懇願しました。しかし、先生は少年の願いを聞き入れません。理由は、技は一つで十分、というのです。
さらに数ヶ月の月日が流れ、先生は少年を大会に参加させる決意をしました。もちろん、少年が習得したのは、たった一つの技だけです。一回戦、二回戦、三回戦、順調に少年は勝ち続け、ついに優勝の栄冠を勝ち取ったのです。大会の後、少年は先生にこう言いました。先生は僕が、たった一つの技だけで優勝できることを知っていたのですね。
先生は微笑みながら、こう返答しました。確かにたった一つの技だけど、これは柔道で一番難しい技なんだ。君はそれを完璧にマスターした。相手が君の技から身を守るには、君の左腕をつかまなきゃいけないんだ。」
はっきりしたデータが無いから、正確な数字ではないが、デイトレーダーとして生き残ることができるのは、15%程度だと言われている。多数の人たちが挫折してしまうわけだが、ジェイク・バーンスタイン氏(MBHコモディティ社長)は、その理由をこう説明している。
「一般的なトレーダーに共通していることなのですが、皆さん沢山の情報を集めすぎです。毎朝2つから3つのニュースレターを読んで、そして次は大手証券アナリストのコメントをチェックします。もちろんテレビは一日中CNBCがつけられ、絶えず何がホットなのかを確かめます。それだけではありません。チャート分析ソフトも数種類揃え、自分の気に入った結果が出るまで、同じ銘柄を分析(?)し続けるのです。」
最後にもう一度繰り返そう。技は一つだけで十分だ。