エスコートというフォード社から出されている小型車がある。エスコートは同伴するとか付き添う、といった意味なのだが、フォード社が苦笑いの種になっている。コスト削減対策として、ここ数年間フォードは、社員たちに自発的な退職を勧めてきた。しかし、思ったほど退職希望者の数が集まらない。
言い方は悪いが、自主的に辞めないなら首にしよう、正にこれがフォードの取った態度だった。普通なら解雇通知を社員に渡して会社から去ってもらうが、フォードのやりかたはもっと徹底している。解雇通知を持った警備員が、社員の机に向かう。簡単な事情説明の後、社員は即刻持ち物をまとめるように指示される。数分後、社員は警備員にエスコートされ社外へ送り出される。
苦笑いになっているのはフォードだけではない。オーバーストック・ドット・コム社長、パトリック・バーン氏は、氏の会社株を大きく空売っている機関を告訴した。売り手たちは共謀して、株価の下げを企んでいる、というのが告訴の理由だ。ストリート・ドット・コムのエディター、コリン・バー氏によれば、現在オーバーストック・ドット・コムは収益の170倍まで買われているという。S&P500指数に名を連ねる会社の平均は18倍だから、オーバーストック・ドット・コムは超割高だ。高すぎるものは売る、これがルールなのだが。
あまりにも割高だから売れ、よくアナリストが口にする言葉だが、だからといってそう簡単に売れるものではない。特に昨夜は富士山の夢を見たばかり、きっと良いことがあるに違いない。馬鹿らしい話かもしれないが、結構この迷信じみたものを、真実と受け止めている人が多いのではないだろうか。
たとえば、「満月は人を狂わせる」、というのがある。看護婦は「満月の日に患者が増える」、と言い、警官たちも「満月の夜に犯罪が多い」、と語る。だが、スケプティック誌の調査によれば、満月だからといって、特別なことが起きることはない。編集長の言葉を引用すれば、「満月の夜に急患が多いとか、赤ちゃんが普通の日より多く生まれる、それに犯罪が増えるなどといったことはありません」、ということだ。
「満月は人を狂わせる」、で分かるように、私たちは物事をパターン化しようとして関係のない二つの物を、無理やり関係付けてしまう癖がある。テレビに出演している人だから、この人の言うことは信用できる。医者の言うことだから間違いないだろう。A社は自社株を市場で買っているから、今が絶好の買い時だ。本当だろうか。無関係な二つを、無理に関係付けしているだけではないだろうか。