1930年8月、ニューヨーク州クイーンズ市に全米初のスーパーマーケットが開店した。約1000種類の商品が店内に並び、消費者たちを驚かせたわけだが、スーパーマーケットの成功には二つの物が必要だった。どんなに品数が豊富でも、お客さんたちが手に持てる数は、たかが知れている。ここで登場したのが、ショッピングカートだ。もう一つは、食品の新鮮さが問題になる。腐った肉など店内に置いては、店の評判を落とすだけだ。そんなことを防ぐために、冷蔵システムが用意された。
そして75年の年月が経過した。USAトゥデイ紙によれば、自宅で料理をする家庭が大きく減り、1980年には25%の家庭がレストランやマクドナルドのようなファストフードチェーンを朝食や夕食に利用していたが、その数は現在50%に達しているという。フードマーケティングインスティチュートのタッド ハルトクイスト氏は「たとえ外食をしなくても、食卓に乗るほとんどの食べ物は、家庭で料理されたものではありません。既に出来上がった物を、コンビニなどから買ってくるわけです」、と述べている。
全米の食料品ビジネスは9500億ドルにおよぶ巨大産業だが、その約63%はスーパーマーケットだ。しかし、コスコやウォルマートなどの大手スーパーセンターの積極的な食品ビジネスへの参入は、確実にシェアをスーパーマーケットから奪い始めている。スーパーマーケットが、競争に打ち勝つためには素早く消費者のニーズをつかまなくてはならない。下手に値下げをしても、大企業のウォルマートにはかなわない。
はたしてスーパーマーケットは、どう戦っていくつもりなのだろうか。三つ手段がある。先ず第一は、商品にValue(価値)を付けることだ。肉を例にあげれば、単にステーキ用に切るだけでなく、胡椒などで味付けして直ぐ料理できるようにする。価値の次に大切なのはConvenience(便利さ)だ。店内に薬局や花屋を設置して、便利な店というイメージを定着させる。三番めはExtras(おまけ)だ。前記の便利さと似ているが、少し説明しよう。一番分かりやすい例は、店内にATM(現金自動支払機)を置いて、買い物以外の目的を持った人たちを店に引き込む方法だ。来たついでにミルクでも買っていこうか、そんな人が多いらしい。
最後に皆さんに質問しよう。1930年8月、ニューヨーク州クイーンズ市に開店した、全米初のスーパーマーケットの名前をご存知だろうか。正解はキングクレン(King Kullen)、もちろん今日も商売繁盛だ。