オイルが1バーレル63ドルを突破した。こんな急激な上げを持続するのは不可能だ、と口にする人は多いが、取引所で声を張り上げるトレーダーからそんな意見は聞かれない。「値段が高すぎる?そういう見方もあると思いますが、この値動きに逆らうトレーダーはほとんどいません。こんな強気な調子が今週ずっと続いても、全く不思議なことではないと思います」、とあるトレーダーがレポーターに答えていた。
大産油国サウジアラビアのテロ懸念、無理な稼動が原因で6つ以上の製油所が一時閉鎖、アメリカ国内のガソリン不足、差し迫る本格的なハリケーンシーズン、オイル買いの理由なら簡単に見つかる。さらに、イランはヨーロッパ諸国からの反対を無視して原子力プロジェクトを再開した。ついでにもう一つ付け加えれば、週末に発生したSUNOCO石油製油所火災も、オイル買いを誘ってしまったようだ。
オイル業界アナリストのマーシャル スティーブス氏は、「需要の大きな減退、または経済の冷え込みがない限り、オイル価格は上げ続けるでしょう」と述べてはいるが、それらの状況がいつ訪れるかは全く見当がつかない状態だ。株のアナリストなら、株価があまりの急ピッチで上昇すると、正当評価額を大幅に超えたから売れ、などといった推奨を出す。しかし、これだけ急騰するオイルだが、割高を理由に売りを唱える人は見あたらない。まるでオイルには、正当評価額など存在しないようだ。
オイルは生活必需品だから株とは根本的に違う、と言う人たちがいる。オイルには本物の需要供給があるが、株は生活必需品ではないから、アナリストやニュースを使って人工的に需要を作り出さないといけない、というのが彼らの言い分だ。この論法で行けば、どんなに高くても現在のオイル取引値は的確な需給関係を表し、これが現時点における正当評価額であると言うことができる。株の場合でも、意図的に作られた需要であったとしても、現在の取引値はオイルと同様に、買い手と売り手の需給関係を表していることにかわりはない。
ローソクチャートを使った投資の強みは、ニュースや噂を無視して、売買の中核である需給関係に焦点を合わすことができることだ。先週の金曜を思い出してほしい。ナスダック市場にデビューしたBaidu.Comの初取引値は66ドルだった。信じられないことだが、Baiduは123ドルという倍に近い値段で終了した。需給状況が分からなければ、こんな取引の始まったばかりの株をトレードすることはできない。ローソクチャート、それは日本の生んだ最高の投資武器だ。