こんなことが起きたのは、アメリカ大恐慌以来2回しかない、とセンセーショナルにニュースが報道されている。いったい何の話だろう、と耳を傾けると、アメリカ国民の個人貯蓄率が0%(6月分)に下落したという。たしかそういえば、昨日も似たようなニュースがあった。これも6月のデータだが、個人消費は0.8%の大幅な伸びを見せ、個人所得も0.5%上がった。これで三つ数字が揃った。少しフトコロが豊かになったアメリカ人は、6月、大いにショッピングを楽しんだ。そして気が付いたら、貯蓄できる金が、全く残っていなかった。
しかし、よくニュースを聞いてみると、0.5%増えた個人所得が、個人消費アップの主な原因ではないらしい。フレディマック(米政府支援の住宅投資機関)の調べによると、第2四半期、消費者たちは590億ドルにのぼる、住宅ローン借り換えをしている。これは単なる残高の借り換えではなく、残高以上の借り換えだ。さらに注目すべき点は、500億ドルに相当する金額が、住宅担保ローンという形で消費者たちの手もとに入っている。もう一つ付け足せば、給料以外のボーナス収入は、6月、170億ドルだった。
値上がりの続く不動産が、アメリカ個人消費好調の大きな理由だ。実際に住宅を売ってしまったわけではないが、住宅ローンを借り換えることで、消費者は値上がり分を現金としてフトコロに入れた。言うまでもないが、不動産が冷え込んでしまったら、こんなことは簡単にできない。アクションエコノミクス社、リック マクドナルド氏は、「7月は自動車販売数が大きく増えているはずです。社員割引セール大成功ということですが、しかしこれで、個人貯蓄率はマイナス0.7%に落ち込む可能性があります」、と述べている。
さて、この貯蓄率0という数字だが、これからのアメリカ経済に悪影響となるのだろうか。クリアビューエコノミクスのケン メリーランド氏によれば、まったく心配におよばないと言う。「貯蓄率0は、消費者の自信度を反映しているだけです。返済する自信がなければ、借金をする人などいません。」また、金融専門家たちは、貯蓄率には不動産が考慮されているが、株や債券などの個人資産が含まれておらず、貯蓄率だけを重要視することの危険性を警告している。
どちらにしても、不動産を担保にして、金を借りることはピークに達したようだ。経済誌エディターのダッグ ヘンウッド氏は「まったく終わりのないパーティーといった状況ですが、もう5年も続いています。こんな状態の継続は無理です」、と率直に語る。前記したフレディマックの予想が出ていたが、今年1620億ドルにのぼると推定される住宅担保ローンは、2006年、690億ドルに減少しそうとのことだ。