アメリカでは5月に株を売って、しばらくマーケットから離れることが正しい、と信じる投資家たちが多い。格言に詳しい方なら、Sell in May and go awayを思い出されることだろう。多数のファンドマネージャー、それに機関投資家たちが夏休みでマーケットからいなくなってしまう。だから相場は閑散としてしまうから、無理に投資などしないほうが良い、というわけだ。なんとなく一理有りそうな考え方だが、ここで先月7月のニューヨーク株式市場を振り返ってみよう。
決算報告がなんと言っても7月一番の話題だが、投資者たちは、5つの爆弾レポートに直面した。ゼネラルモータースは3セントの一株収益が見込まれていたのだが、結果はマイナス56セントというショッキングな数字を発表した。さらにシティバンクで知られるシティグループ、半導体関連のマイクロンテクノロジー、大手証券ゴールドマンサックス、そしてフィルムでお馴染みのコダックが次々と予想を下回る結果を報告した。
これだけ大手企業の悪い決算がそろえば、マーケットは下げたと思われるかもしれないが、ダウ指数は7月3.6%の伸びを見せた。一か月間で、これだけの上昇を記録したのは2004年の11月以来初めてだ。好調だったのはダウだけではない。SP500指数も、ほぼダウと同率の3.7%増となり、1997年以来最高の7月となった。注目したいのはナスダックだ。上昇率はダウやS&Pを大きく上回る6.3%の力強さを見せ、2003年12月に次ぐ快挙だ。こんなマーケットの活躍ぶりに、オークブルック社ジャナ サンプソン氏は「本当にビックリさせらる7月でした」、と述べている。
マーケットはこのまま順調に走り続けるのだろうか。度重なる短期金利の引き上げ、60ドル近辺で取り引きされる高価格なクルードオイル、それにロンドン爆破事件などの悪材料を、マーケットは難無く消化してきた。特にロンドンテロ事件直後、売り手たちの必死な空売りにもかかわらず、マーケットは簡単に回復してしまった。悪材料を跳ね返すマーケットは強い。上記のサンプソン氏は、「マーケットは6%から8%の上昇で、2005年を終了するでしょう」との見方だ。
強気論だけでは不公平、と思われる方のために、ニック サンダース氏の警戒論を記しておこう。「買いと売りを比較してみると、今は売りの方が有利だと思う。あまりにも安心しきっている投資者たちが多いが、こんな時に予期せぬ大きな下げが起きやすいものだ。こんなペースで主要株指数が上げ続けるのは無理であり、ここから買っていくための材料も不足している。それに国債市場のブレイクダウンを考慮すれば、ますます株は買いにくい。マーケットは最悪な状況で底を打ち、だれもが自信満々の時に天井を形成するものだ。」