それはまず、真の経済的な自立ではないでしょうか。
経済的基盤を維持するため、「自分の時間を組織へ売る代償として対価を得る」という方法が、一般的に「仕事」と呼ばれ、それが会社という組織との関わり方の原点となっています。
本来は自分の生活を会社という組織に委ねる前に、個人としての権利をどのように考え、組織に対して主張するのかという線引きが、まず自分自身の中で明確に具体化されていなくてはなりません。
それを曖昧にしたままで漫然と過ごしていると、いつの間にか組織の都合のよい方向へ流されてゆきます。
昇進をすれば会社という組織のための利益を優先したポジションで、物を考えざるを得なくなります。
個人よりも組織の利益を優先することで成り立つ仕組みの中では、経済的に自立することは不可能で、組織に依存せざるをえなくなります。
組織に依存した生活をしていればいるほど、つまり会社での地位が上がれば上がるほど、個人の時間やエネルギーは組織のために費やされることになり、皮肉にも真の経済的な自立からはますます遠くなってしまうのです。
そのため多くの人は 自分で会社を経営するという方向へ踏み出そうとします。
なぜなら、組織から自由になりたいからです。
こうした方法は実際にやってみればわかりますが、一見組織から自由になれるように思えるかもしれません。
ですが、よく考えてみると、こんどは自分が組織側になって、人の時間を拘束する側に回るわけです。
拘束する側になっても、程度の差はあれ、時間の自由がなくなるという点では拘束される側と同じことになります。
組織としてのルールのうえで拘束される側との折り合いをつけながら人を拘束するためには、大変な時間と労力が必要になるからです。
そのために、組織から自由になるため、殆どの人はリタイアをするなりして、組織と距離を置いたポジションで、悠々自適の生活を目指す方法を選択します。
トレードという仕事の最も大きな特徴は、時間の使い方を含め、自分自身ですべてをコントロールできるという点にあります。
個人が組織や国とどう関わってゆくのかという点については、 完全に独立した経済的な自由が手に入るようになってはじめて、現実の問題として真剣に、そして初めて対等なポジションで、考えることができるようになります。
ですから、殆どの人はリタイアして年金をもらうようになってから、真剣にこうした問題に直面することになります。
ですが今度は一方で、年金しか収入がないという、今まで経験のない生活スタイルから生まれる「不安」という、今までとは付き合いのなかった、全く違った種類の新しい相手と戦わなければなりません。
平均年齢が高くなってくると、余生が長くなるわけですから、経済的な基盤がよほど強くなければ、個人としての真の独立性を保ち続けることが難しくなります。
多くの日本人は、国と個人との関わりよりも以前に、経済的な基盤を保つための、こうした会社という組織と個人との関わりという目の前の問題への対処に追われてしまっているため、「日本国民」という視点で物を見る機会が殆どないの が現実です。
将来に対して備えるための準備をしたり、考えたりする余裕がないままで、組織に依存する生活を長い間続けていると、客観的にそして論理的に物事を「考える」ということをしなくなり、本来は習慣となるように努力するべき最も大事な能力の低下は、年齢によってさらに加速されてゆきます。
平和ボケの日本の社会の中では、 個人の主義主張が強い欧米人のような考え方 をする必然性はなくなり、何かを主張をする訓練もされていない状態でマスコミの垂れ流す情報を鵜呑みにしていれば、まともな議論ができなくなるのは、当然といえるでしょう 。
アメリカに住んでよかったこと。
それは主義主張の明確な考え方と、いやがおうでも直面しなければならなかったという点です。
さらには「日本国民」という視点から、ものを見ざるを得なくなるケースも多々あります。
これこそが日本人がアメリカに住む大きなメリットではないでしょうか。
ですが、日本に住んでいても、自立をする方法を考えることから、自立への道を開くことはできるはずです。
個人が実現可能な方法で、なおかつ組織と無縁のまま、経済的な自立を得る手段を普段から考え、そしてできることからはじめる。
これこそが、真の自立への道ではないでしょうか。
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