エクソダス:神と王は、リドリー・スコット監督による歴史スペクタクル大作。
旧約聖書に綴られたモーゼの活躍と「10の奇跡」を最新VFXを駆使し描いた作品だ。
モーゼに率いられたヘブライ人がエジプトを脱出する過程を描写した、チャールトン・ヘストン主演の映画「十戒」のリメイクといえばわかりやすいだろう。
「エイリアン」「ブレードランナー」「グラディエーター」の代表作で知られる、リドリー・スコット監督としては史上最高額となる製作費1億4千万ドルをかけただけあって、とにかく素晴らしい映像美が楽しめる。
ふんだんに盛り込まれた空撮は、壮大なスケール感を醸し出し、エキストラや動物の数も半端ないレベルで、どこからがセットで、どこが合成かは全く分からない。
繰り出されたエキストラはのべ15000人。
美術スタッフは1000人、そして1シーンで使用したカメラは最大17台にも達するという。
実績のある監督が費用を惜しみなく使えばここまでできる!
という、現在のハリウッド映画が持つ特撮パワーを見せつけられる感あり、という作品だ。
とにかく2時間半という比較的長めの上映時間内に、歴史スペクタクル、冒険活劇、ディザスターもの(パニックもの)という3要素がギッシリ詰め込まれている。
一歩間違えば、B級パニックホラー映画になるところを、主役のスター性と膨大な予算を注ぎ込んだ映像によって、超一級の娯楽作品に仕上がっている。
前半の見所は、モーゼも驚く神が下す天誅の場面。
カエルが大量発生し、川が血で赤く染まり、ヒョウが降り、イナゴやアブの襲来、疫病の発生などの天誅が、次々と下されるのだ。
自然災害ではなく、神の怒りによる災害という設定だから、膨大なSFX費用を注ぎ込み、まさに監督のやり放題。(笑)
ナスがまま キュウリがパパ状態。
SFXを駆使し、容赦のないレベルで展開されるため、悪役側が気の毒になるほどのひどい仕打ちを受けるのだ。
「触らぬ神に祟りなし」はこのことだな、と実感できるほど。
とにかく凄まじい。
そのため、モーゼやラムセスなど人間たちのドラマは霞んでしまいがちなのは、仕方ないところ。
そのかわりと言っては何だが、ラストには有名な「海が割れるシーン」が待っている。
科学的根拠に基づいた解釈という、壮大に描かれた場面が最大の見どころ。
何故かシガニー・ウィーバーとジョン・タトゥーロが夫婦という設定で登場している。
ただいつの間にか登場しなくなってしまうのだが、観客は天誅の嵐に目を奪われているため、そうした細かい所は気にならなくなってしまう。
基本的に自然現象に人間ごときは手出しできない。
という観点から描かれているため、映画の中ではモーゼはほとんど何もしないという点が「十戒」とは大きく違っている。
神の奇跡が進行しているとき、モーゼはただ「見ていろ」と言われ、傍観しているだけという設定なのだ。
そういえばラムセスと決別する運命に対する寂しげなモーゼの表情は、最後のエンドロールで2012年に亡くなった弟のトニー・スコットへの献辞が流れることと関係しているのだろうか・・
この映画での主役のモーゼとラムセスの関係は、そうした監督の想いが、感じられるかのような作りとなっている。
主演のクリスチャン・ベールによると、撮影日数はたったの74日間。
これだけの映画にしては非常に短いわけだが、監督は常に敏捷に動き回り、さらに監督は自分が好きなように撮れるということを、よく承知のうえ、撮っていたという。
監督自身が、存分に楽しみながら作った作品ということがよく伝わってくる、誰もが楽しめる娯楽映画に仕上がっている。
おまけ
Ridley Scott's EXODUS - An Epic Scale Story [Making-Of]
Exodus: Gods and Kings (2014) Making of & Behind the Scenes (Part1/3)
Exodus: Gods and Kings (2014) Making of & Behind the Scenes (Part2/3)
Exodus: Gods and Kings (2014) Making of & Behind the Scenes (Part3/3)
Exodus: Gods and Kings | "Locations" Behind the Scenes [HD] | 20th Century FOX
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