東京電力福島第一原発事故による首都圏の放射能汚染問題で、本紙は新たに千葉、茨城両県にまたがる水郷地帯の湖沼を調べた。
これまで調べた東京湾や主要河川と比べ、大幅に高い濃度の放射性セシウムが検出された。
水の入れ替わりが少なく、流入したセシウムが抜けにくい地理的な特徴が影響していそうだ。 (小倉貞俊、山川剛史)
調査は一月二十六、二十七の両日、環境省の調査でも高濃度汚染が確認されている手賀沼(千葉県)をはじめ、印旛沼(同)、茨城県内の霞ケ浦や牛久沼で行った。
流れ込む川がどう影響を与えているかに着目し、計三十二カ所で底土や河川敷の土を採取。土は乾燥させた後、測定器で三時間以上かけてセシウム濃度を測った。
その結果、汚染が目立ったのは手賀沼で、沼の中心部や利根川につながる堰(せき)内の底土の放射能濃度は、乾燥させた土一キログラム当たり一〇〇〇ベクレル超を計測。
流入部から流出部まで高い値が出た。環境省の直近の調査では、三二五~三六〇〇ベクレルとさらに高い値も出ている。
手賀沼に流れ込む複数の川の周辺土も調べたが、七一七~四七〇一ベクレルと高かった。
指定廃棄物として特別の処理が求められる基準(八〇〇〇ベクレル超)より低いが、雨などで川に流れ込み、沼に運ばれてたまり続けていく懸念もある。
ただ、放射能が人体に与える影響(放射線量)は採取地点で毎時〇・一〇~〇・一七マイクロシーベルト(マイクロシーベルトはミリシーベルトの千分の一)と都心と大きな差はなかった。
印旛沼や霞ケ浦、牛久沼の河川流入部では二〇〇~三〇〇ベクレル台の地点が多かったが、湖沼の水深のある地点では濃度が高くなる傾向が見られた。
おおむね環境省の調査と同水準だった。
本紙の測定結果について独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「ただちに騒ぐレベルではないが淡水魚は海水魚に比べ(セシウムを含む)塩類を排出する機能が弱く、セシウムを濃縮しやすい。長期的な観測が必要だ」と指摘した。
現実に、水郷で捕れた淡水魚では、いまだに食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超えるセシウムの検出が相次いでいる。
このため手賀沼ではギンブナやコイ、ウナギ、モツゴの出荷制限や自粛が続く。霞ケ浦でもギンブナやアメリカナマズの出荷が制限されており、水郷への放射能の悪影響は収まっていない。
◆調査7回 各地の汚染今も
本紙は昨年五月から、福島第一原発事故による放射性物質の汚染状況を調査しており、今回が七回目。
福島県楢葉町の農地では水源の深刻な汚染を明らかにしたほか、いわき市志田名(しだみょう)地区では表土の除去が遅れ、農地の回復が遅れている現状を報じた。
東京湾や首都圏の主要河川でも要警戒レベルの汚染が続いている。
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