青天の霹靂で書いたように、素のボクスターはエンジンのフィールが実に良くなかった。
冷静になって考えてみると、いままで乗ったボクスターはすべてS。
その印象を元にした期待と違っていたわけだ。
なのでボクスターSならエンジンの回り方が違うかも知れない・・
というわけで、良さそうな個体を探すと、豊中のオーラッシュにあった。
オーラッシュはポルシェを高く買い取ってくれる優良業者の一つだ。
経営母体は豊田通商で、売っているタマを見ると、他店に比べ安目な気がする。
というわけで中国道を一路大阪へ。
ディーラーの駐車場にはこういうのもいた。
こういうのもね。
まず、その辺を15分ほど試乗し、気に入ったら新神戸までの中国道を含めて試乗。
カミサンを乗せて、ディーラーへ戻って一件落着というという筋書きをオファー。
ただそのためには、見積りを作成、そのあとチョイ乗り試乗で問題なければ買う。
という条件が必要だという。
で、見積もってもらうとすべてコミコミの総額で666万円ちょい。
走行距離は2万8千キロ。
下取りはミニかBMW。
どちらを売るかは、カミサンと相談のうえ、ということで全員合意。(笑)
というのは、カミサンが2005年の誕生日プレゼントで贈ったミニを気に入って売り渋っているからだ。
走行距離は8万キロ。
ここまでのプロセスで2時間近くかかってしまった。
そして待望の15分試乗。
室内にはモノを置くスペースがないので、重いカメラ入りの鞄はフロントのトランクへ。
歩道から車道へ降りたときの、サスの感触はなかなかナイス。
エンジンを掛けてブリッピングをしたところ、素のボクスターとは大違い。
走り出すと、エンジンの回転落ちが早い!
エンジンは911譲りだからね。
気分と期待感は、レンジアベレージ越えあたりまでアップ!(笑)
だが15メートルほど走った時点で、ん?
なんだか、乗り味がヒョコヒョコと落ち着かないのだ。
今のBMWの方が圧倒的にいい。
一体どうしたというのだ。
予想外の展開だ。
BMWはテスラパープルプレートとSEVでチューンしてあるとは言え、雲泥の差。
サスは電制PASMは装着されていない金属バネ。
乗り心地は、素のボクスターもSも、PASMなしだと、こんなものだという。
PASMとは?
電子制御ダンパーシステムであるオプションのポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)
路面状況やドライビングスタイルに応じて、各ホイールのダンパーの減衰力を無段階に調節。さらに、車高が10㎜低く設定される。
だが、PASMだと、全体的にもっと堅くなるという。
エンジンはM235のような緻密で密度の濃いフィールではなく、少しラフだけど力強さがある。
これはこれで魅力的。
ただその辺の一般道では、上まで回す機会が無いのが残念だった。
走り出すと、室内は決して静かではないが、アイドリング時とは違い、それほどうるさくは感じなかった。
それと、踏んだときのエグゾーストサウンドも、それほど魅力的ではない。
M235は、踏むとかなりいい音がするからね。
というわけで、エンジンに惚れて買いたくなる、というほどの魅力はなかった。
行程の3割ほどを走った時点で・・
「乗り味の点でこれはちょっと・・」と、助手席のセールスの方へ正直に告白。
「それだったら、やめた方がいいですよ」とセールスの方も意外に素直に同意してくれた。
こうした部分というのは理屈じゃないからね。
その後、バイパスを含めた一般道を走り、Uターンしてディーラーへ。
帰路、珍しく女性がドライブする220カブリオレと遭遇。
すっかり買う気で試乗したのに、想定外の展開が、ちょっとショックだった。
すっかり買うつもりでいたのに・・
だが帰路の中国自動車道でBMWをドライブしていると、気分は吹っ切れ、心は軽くなっていった。
M235i は実にバランスの取れた、素晴らしいクルマだ。
緻密で密度の濃いストレート6エンジンの回り方は、唯一無二。
踏んだときのパワーのデリバリーの案配が、実に気持ちいい。
しかも、乗り味やブレーキも、ポルシェに全く引けをとらない。
足回りの剛性感も文句なし。
こうしたことは今回の試乗をしたからこそ、よくわかったわけだ。
言い換えればポルシェが教えてくれわけだ。
自宅へ戻ると、カミサンは「楽しみに待っていたのに・・」と言ってくれた。
試乗のほとぼりが醒めてから、改めて M235i・試乗記その2 を読み返してみた。
市街地と高速道路を走らせると、3台中M235iがもっとも快適な乗り心地であることがわかる。
かといって刺激に欠けるということはなく、心を揺さぶるキャラクターであることは間違いないうえグランド・ツアラーとしての資質にも不足はない。
恋人を乗せるも良し、長旅に出るも良し、峠を攻めるのも良し、だ。
エンジンの力強さと、すべての入力操作がもたらす密度の濃さが、うまく組み合わされている好例である。
味わいとコミュニケーションの観点においてはM235iの勝利である。
コーナリングを楽しめる、という向きにはM235iを推す。TT Sも負けてはいないが、ドライビングに対して飽くなき探究心があるドライバーにとっては、M235iとじっくり向き合う方が楽しいはずだ。
繰り返しコーナーを攻め、やっと思い通りのコーナリングができた時の、クルマとのぴったりとした一体感、あるいは絆の深さを感じられるのはM235iの方である。
よって、運転する楽しさに価値を置くAUTOCARの琴線に触れたのはM235iの方だった。
ちゃんと、市街地と高速道路を走らせると、3台中M235iがもっとも快適な乗り心地であることがわかる。
と書いてあるではないか。
今回の試乗後、改めて読み返すと、書かれていることが実感として伝わってくる。
というわけでこうした顛末を経て、今は全く迷いなし。
あたかも悟りを開いた高僧の心境 < (知らないけど)(笑)
一つも馬鹿なことをしないで生きている人間は、彼が自分で考えているほど賢明ではない
- ラ・ロシュフーコー
という言葉で最後を締めてみました。たはっ!
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