シトロエンC3 の試乗記であります。
エンジン
C3のエンジンは、1.2L直列3気筒DOHCエンジン。
82ps/5750rpm、 12.0kg m/2750rpmで、JC08モード燃費は19.0km/L。
何も言われないで乗ったら4気筒と思うようなスムースさの3気筒エンジンだ。
エンジンの振動からは、最初4気筒かと思ったくらい。
82psという数字から受ける印象以上に、よく回りチカラも十分にあるエンジンだ。
最大トルクを発生する回転数が低く、1.2リッターながら、1気筒あたり400CCもの排気量があるためだろう。
さらに可変容量オイルポンプ、BMWのバルブトロニックのように、可変バルブタイミング機構も採用されている。
吹き上がりのフィールもなかなかのもので、快音と呼んでもいいサウンドだ。
レブリミットまで、スムースに回るエンジンで、コツさえ掴めば、軽快で活発な走りができるエンジンだといっていいだろう。
意外に便利で面白いかったのは、後退時には脈を打つような自動アクセルコントロールが行われるという機能だ。
車庫入れなどでバックをする際には、アクセルを踏まなくても、勝手に少し吹かし気味で後退。
するとすぐに、アイドリングクリープ状態へ復帰。
というサイクルを自動で繰り返すのだ。
トランスミッション
5速のマニュアル・トランスミッションを電子制御化したETG5(エフィシェント・トロニック・ギアボックス)は、2ペダルで乗れるオートマチックモード付きのシングルクラッチ5速MT。
コツを掴んで走れば、不満を感じることなく、走らせることができる。
セミAT独特のマナーがあるため、この特性を生かした走りができるかどうかだ。
つまり運転者の技量で、この車の評価は大きく変わることになるわけだ。
このETG5では、TCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)や電動アクチュエーター(ザックス製)も新開発されたという。
だが基本的には最近のフィアット 500(デュアロジック)や、スマートのセミATと同じだと思えばいいだろう。
一般的なトルコン(トルクコンバーター)ATのつもりでアクセルを踏んだまま、2速にシフトアップすると、どうなるか?
「息継ぎ」を起こすのだ。
また、交差点で徐行してから再加速する際には、オートだと一瞬ギアを迷うこともしばし発生する。
ギアチェンジの際にパワーが抜けるかのような挙動を示すのだ。
アクセルを踏みっぱなしで、オートモードでシフトすると、加速中のギアチェンジで失速するかのような状態になってしまう。
3ペダルのMT車の場合、ギアチェンジの際にはクラッチを切り、動力を切り離した後で、ギアを繋ぎかえる。
言い換えれば、このトランスミッションは、クラッチを切る > 動力を切り離す > ギアを切り替える >クラッチを繋ぐという動作をETG5が代行するシステムなのだ。
そのためアクセルをベタで踏みっぱなしだと、特に1速から2速へのシフトアップ時にギクシャクしがちだ。
ギアチェンジに余計なラグが発生するため、加速 > 失速 >加速 > 失速 を繰り返す動作となってしまう。
この変速機では、アクチュエーターの制御で半クラッチ状態にすることでクリープを発生させている。
そのためこのトランスミッションだと、クリープ状態からクラッチを繋ぐまでに若干の時間が掛かるのだ。
そこでガバっとアクセルを踏み込むと、どうなるか?
ギアを入れ損ね、空転したような状態になってしまうのだ。
そこでエンジンの回転を上がることになり、クラッチが繋がった状態で急に動力が伝わるってしまうのだ。
あたかも3ペダルMTの初心者が、クラッチを乱暴に繋ぎ、ガクガクさせながらスタートするのと同じようなことが起こるというわけだ。
トルコンATだとアクセルをベターっと踏みっぱなしでも、ギアチェンジの際、トルコンが介在するため失速するような感じにはならない。
そのかわり、ダイレクト感は、損なわれることになる。
AT車しか運転したことのない人は、ここが一番ネックになるだろう。
アイドリングストップ
さらにアイドリングストップからの再始動は、ショックがあって、オレ的にはよろしくない印象だ。
だからいつも運転席ダッシュ下の探しにくい場所にある右端にあるスイッチを押し、動作させないようにしている。
だがエンジンを切って駐車し、戻ってきて再始動すると、自動的にアイドリングストップはオンになってしまう。
交差点でエンジンが止まってしまってから、ああそうだった、と慌ててオフにする事になるのがチョット面倒。
メモリを付けてくれると嬉しいんだけどね。^^;
パーキングポジションのないシフトレバー
エンジンON/OFFの際はN(ニュートラル)にすると言う点にも注意が必要だ。
この位置からA(オート)にすることで自動変速モードで走り始める。
Aモードからシフトレバーを左に倒せばM(手動変速モード)に切り替わる。
手動変速モードでは押してシフトアップ、引いてシフトダウン。
パドルシフトだと、右がシフトアップ、左がシフトダウンというレイアウト。
オートモードでも、パドルシフトで手動変速が可能になり、放置していると自動変速を始めるという仕様。
ただしこの場合、右端のディスプレイは、Autoモードの表示のままなので何速に入っているかは分からない。
このクルマを走らせるコツは、パドルシフトを使い、変速の際、必ず一旦アクセルペダルを緩めることだ。
この約束さえ守れば、伝達ロス感のない、あたかもマニュアルシフトのような変速感を味わうことができる。
一旦コツが分かれば、しめたもの。
このエンジンは1000回転以下だとチョット苦しいが、3000回転あたりになると、ターボ付きか?と思うほど俄然トルクフルになる。
つまり、美味しい回転域をうまく使えれば、想像以上に「すばしっこい」走りが可能になるのだ。
2速でレブリミットまで引っ張ると約70キロ、3速で110キロ、4速では130キロプラスまでが守備範囲となる。
このクルマで湾岸線を2回往復したが、ダンピングの効いた乗り味は金属バネのこのクラスのクルマとしては秀逸だ。
つまり足回りと、エンジンのマッチングは非常にナイスな仕上がりになっているのだ。
一度、帰路の湾岸線とハーバーハイウェイの接続箇所が渋滞していたため、中国自動車道を使ったことがある。
ここをよく通る方はご存じの通り、宝塚のトンネルを抜けると、神戸方面への分岐点まで、登坂車線のある、意外に勾配のきつい上り坂が続くルートがある。
剛性アップ作戦で書いたように、以前クーバーSでもってスピード違反で一度捕まったことのある、オレ的にはメモリアルなルートでもあるのだが・・
力のない軽などは100キロがせいぜい、トラックだと荷の重さで這うようにしか走れないというキツい上りだ。
C3の場合、このルートでも4速で130キロまで引っ張ことができる。
そこから、5速に叩き込んでも、加速が衰える気配はなかった・・
よく回るエンジンと、マニュアル変速に近いダイレクト感の高いトランスミッション。
運転が好きな方にとっては、実に「走らせ甲斐」のあるスペックのクルマではないだろうか。
乗り心地
C3でも安い方なのでシートはファブリックだったが、普通に座るだけで、尻に馴染むなかなかの出来だ。
ミニほどのバケットタイプまでもない、ごく普通の形状だ。
だけど骨盤あたりのサポートがしっかりしているので、長時間座っていても疲れない、フランス車らしいシートだ。
ボディや足回りはガッチリとした印象だ。
Bセグでは一般的な、フロントはストラット、リアはトーションビーム。
ダンパーは伝統通り内製らしい。
乗り心地はどちらかというと、フワフワはしていなくて、しっかりとしたダンピングが効いた乗り味。
DS5とは「月とすっぽん」。(笑)
カミサン曰く、前の(DS5)より「分厚い座布団に座っているみたい」だという。
ゴルフのようにソリッドではなく、もう少し柔らか味のある、自然なテイストの乗り味だ。
どちらかというとダンピングは効いているにもかかわらず、リラックスさせてくれる当たりの柔らかさがあるのだ。
路面の不整に逆らわずに足腰を柔らかく使い、ショックをいなすタイプ。
速度が遅くても、あるいは速くても、妙なザラつきや、ヒョコヒョコ感のない、気持ちのいい乗り味だ。
車内で聞こえてくる音は、フツウなのだけれど、印象で言えば静かな部類のクルマだ。
路面からのショックやタイアなど音や振動の籠りは、C6まではゆかないが、このクラスとしては非常に少ない。
というか「厭な」音がしないクルマなのだ。
新型プリウスのように、30分も乗っていると、余り気持ちよくなくなってくる感じは皆無。
このあたりの最終的なデキは、かなり丁寧なチューニングがされているからではないだろうか。
ブレーキは、踏みはじめがスムースで、リニアに反応するので、同乗者に優しいタイプ。
奥の方というか、止まる前になると、少しサーボが強くなる傾向にある。
だが、高速からのブレーキングでは、この特性が安心感に繋がることになる。
パワステは全くの電動タイプなのだけれど、ナチュラル。
かすかに制御が入っている痕跡はあるが、直進状態でも左右に壁を無理に作らず、真っ直ぐ走らせることができるタイプ。
旋回時の手応えも、ほぼ気になる所はない、とはいっても皆無ではないけれど、高速コーナーでも安心して飛ばせるデキとなっている。
まとめ
自然体という言葉がピッタリの、毎日の足として使いやすいクルマだ。
それでいて、走らせると運転好きの人が、フムフムと頷けるところが多い作りなのが嬉しい。
欠点といえば、運転席助手席用の手が届きやすいカップホルダーがないことくらいだろうか。
対策として、オートバックスで適当なモノを買えばいいだけのハナシなのだが・・
カップホルダーがついていないクルマはイヤだ、という人には向かないかもしれない。
だがそんな、些細なことはどうでも良くなる魅力を持っている車だ。
たとえば、助手席にチャイルドシートを取り付ける際、エアバッグの展開をキャンセルできる機構が採用されている。
状態はメーター内の表示ランプで確認できるようになっている。
スピードリミッター機能付クルーズコントロールもあるし、後方の障害物との距離をアラーム音とマルチファンクションディスプレイの表示で知らせるアシスタント機能もついている。
乗っているウチに、その良さがジワジワと伝わってくるというタイプ。
たとえれば、嫁にすれば幸せな気分で過ごせる、といえばいいだろうか。
しかし、シトロエンの日本仕様では一番安い215万円弱のC3が、こんなに乗り味のいいクルマだとは思わなかった。
まだ5千キロ台のクルマだったので、1万キロを超えると、乗り味はさらによくなるはず。
中古車なら、たとえば、C3セダクション レザー・未使用車・走行距離99キロ・の支払総額が189万円。
現行バージョンでは、安い方のセダクションでも、シートは革製になっている。
DS3は基本的にこのC3と同じで、すでにアイシン製の6速オートマが搭載されているという。
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おまけ
2015年の輸入車販売トップ20
順位 メーカー モデル名 2015年実績台数
1 VW GOLF 25,635
2 BMW MINI 21,083
3 Mercedes-Benz C Class 21,031
4 VW POLO 12,271
5 BMW 3 series 12,050
6 Audi A3 series 10,604
7 BMW 2 series 8,182
8 BMW 1 series 8,080
9 Mercedes-Benz CLA 8,054
10 Volvo 40 series 7,026
11 Mercedes-Benz A Class 6,752
12 Mercedes-Benz E Class 6,097
13 Mercedes-Benz S Class 5,844
14 Volvo 60 series 5,316
15 Mercedes-Benz GLA 5,241
16 VW The Beetle 5,043
17 VW up! 4,514
18 Fiat 500/500C 4,370
19 VW PASSAT 4,136
20 BMW 4 series 3,910
※JAIA年代別トップ20
PSAグループで見ると、2011年にプジョーが207で19位に入ったのを最後に、トップ20に入った車種は一つもない。
日本でのトロエン+DS合算販売台数
2011年 3,092台 (+22.32%)カッコ内は前年比。
2012年 3,795台 +18.52%)
2013年 2,947台 (-28.78%)
2014年 2,407台 (-22.43%)
2015年 2,904台 (+17.11%)
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