85日目
それは去年の12月半ば過ぎの頃でした。
私のWEBサイトには Kobe Walk という神戸のうまいものや、印象に残ったところを記録しておく、いわゆるガイドのようなページがあります。
その中で2件の手打ち蕎麦の店を紹介しているのですが、この2店は神戸でも甲乙つけがたいうまい蕎麦屋さんなのです。
その一軒の十割蕎麦・さくら へ行ったときでした。
カウンターに座ると、店主が壁の方を指すのです。
そこには、「年内で営業を終わりしばらく休業する」旨が書かれていました。
まさに「青天の霹靂」。
理由を聞くと「腱鞘炎」のため医者からは一年ほど休業してカラダを休めるしかないと言われたとのことで、これ以上続けられなくなったというのです。
カウンターへ座った際に彼の口から語られた数々の試行錯誤や工夫から伝わってくる彼の蕎麦作りに対する情熱が、並々ならぬものであることは、供される蕎麦の味わいからも十分に伝わってきていたこともあって、この事態には大きな衝撃を受けました。
帰り道に一緒に行ったトレーダーと、これはもう「マイクロバブル風呂」しかないよね、とお互いに激しく同意して頷きあったのですが、かといって藪から棒に、こうした話を持ち出すワケにもゆかず、不完全燃焼の気分で帰路についたのでした。
お店は年内で終わることでもあり、食べ納めというわけではないのですが、その後数回訪れたときにも、状態は悪くなる一方でした。
というわけで、30日に年越し蕎麦を受け取りに行ったのが、この店を訪れた最後となったのです。
こうした事態が勃発する少し前に、実はご両親がご近所で「蕎麦ドーナツ屋」さんを開かれていたのです。
蕎麦屋さんを止めた後のことについて、店主の彼に訊ねたところ、腕への負担はドーナツの方がはるかに少ないため、しばらくはご両親の「蕎麦ドーナツ屋」さんを手伝われるということだったのです。
たまたま、私が時々お世話になっている指圧屋さんが偶然にもこのドーナツ屋さんのすぐそばで、しかもここのドーナツが、なかなかおいしいこともあって、お土産として持ち帰るために、時々立ち寄るようになったのです。
彼の様子も何となく気になるので、様子を伺いがてら指圧の帰りには必ず蕎麦ドーナツを買って帰るようになったのでした。
ですが彼の姿は年末以来、ドーナツ屋さんの店先でも一向に見かけないのです。
ご両親から様子を伺うと、どうも状態が良くないとのこと。
これは何とかしなければ、という気持ちなのはやまやまでしたが、いつどういうタイミングで切り出そうかと、まさに思案橋ブルース。
しかもドーナツは安くて美味しいため、店にはお客さんがひっきりなしに訪れるという状態のため、なかなか話すきっかけが掴めなかったのです。
そこで「面白い本があるのでぜひ読んでください」と、たまたま妹さんがレジにいらっしゃったときに「マイクロバブルのすべて」の本を置いて帰ったのです。
その後何度か訪れたときは、ご両親だけのことが多く、どうも本は読まれていないかのように、私が顔を見せても全く反応なし。
ですが、チャンスは先週末に訪れました。
たまたまドーナツを買いに訪れた際、偶然にもお客さんが全くいない状態になったのです。
この機会を逃してはなるものかと、ドーナツを持ち帰るための用意をされている間、単刀直入にマイクロバブル風呂を勧めてみたのです。
10分ほどの立ち話でしたが、ご両親は少なからず興味を示されたようなので、資料をお持ちしますと言い残して、店を後にしました。
変な客だなと思われたかも知れませんが、背に腹は変えられません。(笑)
帰宅後「マイクロバブル旅日記」の要所と私の日記をプリントアウト。
かなりの枚数で少なくとも100ページはあったはずです。
翌日「ゆうパック」で郵送。
昨日ポストに配達記録郵便が来ていました。
やるだけのことをやったのだからこれでダメなら仕方ないという想いと、何とか買ってくれないかな、という願望が入り交じり、気分はマイクロバブル風呂装置のセールスマン。(笑)
カミサンに顛末を話したら、呆れていましたが、仕方ありません。
それはともかくとして、とにかくやるだけのことはやったという、さっぱりした達成感って、結構いいものですね。