この落とし前は・・・

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

東証マザーズに12月8日に新規上場したジェイコム(2462)は、わずか30分後に証券史上に記録されるであろうハプニングに巻き込まれた。

ハプニングを引き起こした証券会社は、みずほ証券。そして、それを悪化させてしまったのは、またまた『東証の売買システム』であった。

-12月8日のジェイコム(株)株式の注文取消処理に係る株式・CB売買システムの不具合について-
http://www.tse.or.jp/news/200512/051211_a.html

みずほ証券会社が顧客から受けたわずか1株の売り注文を発行株式数を大幅に上回る61万株の売り注文としてだされた。注文時は気配値を切り上げている最中であったが、買いをはるかに上回る売り注文を受け付けた東証の売買システムは672,000円で初値を付け、残った大量の売り注文は制限値幅の下限である572,000円のみなし売り注文とされた。

この注文状況はあっというまに餌食になるが、異常を検出した東証がみずほ証券に連絡した後も、注文を取り消すことが出来ず、14万株弱が消化された約9分後、残った売り注文に買い注文を当てて、今度はあっというまに制限値幅の上限へ飛んでいった。

東証の売買システムの問題は、売り注文が徐々に買い注文で消化される約定処理中は、売り注文を取り消すことが出来ないようになっていたこと。買い注文は列をなしていたので、取消を受け付ける隙間が取れなかったのだろう。この問題は今のところ みなし注文 のみで起きると東証は発表している。

注文取消を行おうとした時点では数千株が処理されていたが、取消を行うことが出来れば、恐らく初日に抱えた損失は1割以下の10億円程度になっていたのであろう。それでも株式の調達に困難を伴うだろうが、ここまでややこしい事態には陥らなかっただろう。

証券会社の売買取り次ぎシステムの不具合が話題になるが、東証が災いを広げた落とし前はどう付けるのだろう?

 

ところで、マザーズにしろヘラクレスにしろ、新興市場の公募株式数や売出株式数は、圧倒的に少なすぎる。マザーズが創設された当時はインターネット系証券の口座数は未だ少なく、マーケットに占める売買シェアは少なかった。しかし今では個人トレーダーの売買シェアがはるかに大きい。

そこにわずか数千株を投げ込むだけなのだから、腹を空かせた大量の魚がいる池に、わずかな餌を与えて争奪戦になっているようなものだ。上場後も株式分割で再び争奪戦を起こすことが続いてきた。(分割の新株はすぐに売れなかったので、需給バランスが崩れる。ライブドア(4753)のような異常分割を行うと、その度合いが激しくなる。)

来年1月からは株式分割後の新株を即時に売れるようになるので、株価の手頃感による需給が形成されるだろう。その適用第1号がソフトバンク(9984)だ。

しかし少ない公募売出株式数に制限を掛ける気配はなさそうだ。そんなことをすると個人トレーダーのある程度は離れてしまうだろうし、規制緩和に逆行などと揶揄されるだろう。

今のマーケットの活況は海外資本による日本株買いが大きいのだろうが、新興市場における歪んだ需給バランス(餌と魚のバランス)によるものも大きいように思う。