Mark to Market マーケットをマークしろ


2000 0512


サムライと子犬とロスカット

僕はトレードを本職とするために学びたい、というたくさんの人から相談を受けたことがある。

彼らは僕の前の椅子に座り、自分にも成功するトレーダーになるための素質があるんだ、ということを確信させる言葉を待っていた。

気持ちはわかるよ。

僕だって、少し前には同じ立場でその席に座っていたんだからね。

そして彼らと同じように、期待と希望に胸を膨らませていた。

トレードで食べてゆく大変さは知っていたけれど、僕には成功するための能力があると信じていたから。

今まで、何かをしようと心を決めたときはいつでも、大抵どんなときでもうまく回ってきたしね。

何が違うっていうんだい?

まぁ、長くなるから簡潔に言えば、僕は完璧に打ちのめされたということさ。
 


今までの僕のコラムを読めば、それがわかるよね。

僕が始めてトレードに関わったフロアで、僕を面接した人や「デイ・トレード」とは何かをセールスした人は、それほど大変じゃないような話をした。

これは空振りのように大した事はないんだよ。

ワンストライク、ツーストライク、スリーストライーク!

ほら、君も空振りだ。

バッターアウトだけどね(笑)
 
 
 
トレードについて相談されるとき、今の僕の役目というのは、大きなバケツ一杯の冷たい水を彼らに浴びせるようなものなんだ。

彼らがあまり期待しないようにね。

アクティブにトレードしようとしたほとんどの人が、「脱落した」ということをはっきりと指摘するのさ。

そんなケースを、僕は何度も何度も繰り返し見てきているからね。

彼らに説明したあとで、彼らがうまく成功するだろうとは、言えるわけはないのさ。失敗するだろうということは言えるけれどね。

彼らがどうやって僕のオフィスの入り口を通ってこれたのかと、不思議に思うくらい、彼らは大きなエゴの塊なんだよね。

彼らは「全部知っている」と思いこんでいるうえに、教育が必要だとか、どうやってツールを使うのかなんてことは、別に気にしちゃいないのさ。

「金」に目がくらんで、教育のための費用や、ちょっと変わったディスプレイの費用なんかを払いたくないんだよ。 それは悲しいことだけれど、でもここまで来たら、もう同情することはないね。

全ての答えを知ってるんだろ?

本当?

じゃぁ、やってみたらどうだい!

勇気を出して。

きちんとした教育を受けるための時間は、もったいないのだろう?

いいよ!
 


だけどマーケットは、僕の小学4年生のときの担任だったギルモア先生よりずっと厳しいよ。

すばらしいセミナーのためにお金を費やしたり、トレーディングシステムの使い方を学ぶために時間を投資したくないんだろ?

問題ないよ、ただ君の持ってる銘柄が急落し、ARCAでその950株を売るために、世界中のほかの人と争って脱出しなくちゃいけないことになっても、僕のところへ泣きついて来るんじゃないよ。

助ける方法はないんだからね。

でも、僕はきつく誰かを非難するため、ここにいるのじゃない。

価値のある「キャッチフレーズ」を言い続けるためにいるのだからね。

勝つということに関して、もし一つだけあるとしたら・・

僕が君に残せるもの、それは・・・
 
 
 
 
「え、それが?それだけなの?」と言われるかも知れないから、こうして書くのは嫌なんだけどね。

でもこれが、ロスを少なくするための助けになり、そして君がこのゲームに残るため、最も大切なことなんだ。

それは「ストップ・ロス」という、とても簡単なことなんだ。

そう。

これだけ。

火事で燃えているビルへ入って行くことを考えてごらんよ。

多分君は、屋根が焼け落ちてくるときに、どこに出口があるのかを、知りたいはずさ。

しちゃいけない。

しちゃいけない。

絶対にしちゃいけない。

しつこいけど、本当にしちゃだめだ。


 

とにかく、どこで脱出するかを知らずに、絶対に、絶対に、絶対に、ぜーーーったいに、エントリーしちゃだめだ。

もしプロのトレーダーになろうと思っていなくても、万が一うまく成功したとしても、絶対にだめ。

君が、一分間で勝負をするトレーダーだろうが、デイ・トレーダーだろうが(OK、マーク。罰金の25セントはきちんと払うからね)、スイングトレーダーだろうが、短期投資家だろうが、不死身の投資家だろうが関係ない。

よく聞いてくれ。

たくさんの人が、マーケットで痛い目にあう理由は、これなのさ。

彼らは買うことばかりを考えて、忘れるのだ。

一つの方向にしか動かないと信じているから、ポジションに加えるのだ。

 

 

そして、ダウンサイドでのロスのことを全く考えずに、ありもしない利益の皮算用をする。

これを何度も何度も繰り返して言ってみてくれ。

私は必ずマーケットで損をするだろう。

私はきっとマーケットで損をするだろう。

私は絶対にマーケットで損をするだろう。

これを理解して受け入れることだ。

よし、言ってみて。

そう、今すぐにね。 ・・・・待ってるからね・・OK?

できた?受け入れた?

よーし!次に行こう。

君はロスをすることになっている。

だから君の仕事はそのロスをマネージメントすることなんだ。

そしてそれは、ストップロスを事前にセットしておくことさ。

ブローカーを通していようが、オンラインサービスやダイレクトアクセスシステムを使っていようが、必ずストップ・ロスをエントリーするうえでの計画の一つとして、決めておくべきだ。

どうすればいいかって?

そうだな、君がどんな分析をしようと、買いとストップロスをワンセットにすることさ。

二つで一つだ。

ルールを決めること。

最初にストップロスを決めない限り買わないとか、トレードをしないとかね。
 
 
 
 
僕が信じているこのことが、どうしてそんなに大事かということについて、短い話だから、この話を聞いてくれ。
 
話を日本に戻すね。

昔々の、サムライの時代のことだ。

彼らは自分の命をかけて戦っていた。恐れを知らない戦士だった。

なぜかって?

なぜなら彼らは、戦に出る前から自分の死を覚悟していたから。

そこに、恐れはない。

もし君が戦場へ行く前に、自分が死ぬことを素直に受け止めることができるのなら、それは恐怖を既に取り払っているといういうことになるからだ。

「恐れ」は、君が冷静に素早く行動するための能力を、麻痺させ邪魔をする。

トレードも同じこと。

もしストップロスをいつでも事前に快く受け入れられるのなら、惨事を引き起こす「感情の引き金」を取り除くことができるのだ。

「このトレードで損をしたくない」という「考えの悪魔」と戦わなくてはいけない。
 
 
 
どうしてみんな、「よく吼える小犬」を怖がるか知っているかい?

なぜなら、子犬が君に噛みつこうとしているとき、君はその犬が考えを変えて「違う方向に行ってしまうことはない」ということを知っているからだ。

それに君は、自分が恐れていることも知っているからね。

犬は君に向かってきて、君の「すね」を狙っている。

もちろん君は、サッカーボールのように犬を蹴り飛ばすこともできるけど、何せ君は不安で、少しばかり怖がってるはずだから・・

犬はその道をただまっしぐら。

一目散にね。

ストップロスを決めて、君はその犬のようになればいいのさ。

無我夢中で、やるんだ。

そして「すね」をかじってやれ。
 


by John H. Jessum

 


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