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0917 Mon.
ブレイン・マシン2
行動は人間が考えたプランに基づくため、その結果はプランの質の高さに依存します。つまり「考え」の質を高めれば、それなりの結果を得られることになります。
トレードを始めて「先行き」がだんだんと見えはじめたとき、漠然とですが脳裏に浮かんだのが、考えを生み出すもとになる「頭の中」を鍛えられないかという点でした。
考え方というソフトウエアのバージョンアップのために役立ちそうな本として、ビジネス書というジャンルで様々なモノが売られています。
そこから得られる結果の効果を保証しているわけではないにもかかわらず、またその効果のほどの検証がなされることはなくても、多くの人が買い求めているということは、そうしたニーズが確実にあるからなのでしょう。
ですが脳というハードウエアの性能を上げるための本は、何故か見つけることができません。これが事の発端でした。
「ブレイン・マシン」という日記では、日本ではこうした情報が、ほとんどないことについて触れましたが、それには理由があるはずです。
調べてみると、脳の科学的解明とテクノロジーの発達は、現在も相互作用をもちながら現在も進化し続けているのですが、一般的にはポピュラーとは言えず、とくに日本ではその傾向が強いのです。
脳研究に関心のある科学者たちは、脳波記録法、生物物理学、神経内分泌学、神経化学、神経解剖学、生体電気学、精神医学、精神生物学、心理学などの分野におよび、今この瞬間もその新しい概念や将来性に興奮し、ブレイン・マシンの可能性を熱心に探っています。
このブレイン・マシンに関する研究者たちの方向性は、二つに分かれています。
ひとつは精神分裂病、抑うつ、不安、パーキンソン病、てんかん、アルツハイマー病、精神遅滞、ダウン症候群といった病気治療目的で、正常な脳機能を回復させるためです。
もう一つは、健康体で心理的にも健康な人々に、ブレイン・マシンを用いる可能性を研究し、普通の人を「より賢く」するという心的能力の向上にあります。
「与えられた仕事をすばらしく行う能力」を発展させ「情報処理、記憶、集中などの高度な脳の働き」をより向上させる道具の開発に結びつくものです。
ただしこうした研究には莫大な費用がかかります。
心理学の研究に回される資金は実質的にすべて、医学的価値のための研究計画にのみ向けられます。
したがって、国立精神衛生研究所のような機関に属する科学者たちが、驚くべき心的能力を
引き出す方法の発見に個人的には興味をもっていたとしても、より社会に役立つとみなされる「治療目的」に向けられます。
しかし社会のためには、知性を向上させ、最も優れた知性人たちの、独創的で創造性に富んだアイデアを育てることも重要で、そうしたアイデアは、よい意味で社会を刺激し、様々な社会問題を解決し、安全で不安のない社会をつくり出す手助けになるからです。
ですが残念ながら治療目的ではなく、普通の人の知能を向上させるための研究をしている多くの研究者たちは、資金不足に苦しんでいます。
公的研究所や大学で研究を行う精神生物学者たちには資金調達の道があるのですが、脳の向上について研究する研究者たちの多くは、何とか資金をかき集めているのが現状です。
そのためブレイン・マシンの企業家たちは、公的研究機関からの資金援助が期待できないため、マシンを一般に売って資金を集めることになります。
トーマス・エジソンは電球を発明し、実用化して販売することで「人類社会に役立つ発明に、商業に対する理解が備われば裕福になれる」というアメリカの伝統が生まれたのです。
ブレイン・マシンの企業家たちは「自分たちのマシンは人類社会に役立つ大きな可能性を秘めている」と考えています。
彼らのほとんどは、ドクターの学位を持ち、科学者として学術経験を積んでいます。
また彼らは皆、脳に関する最新の研究に熟知し、マシンの根拠を示す主流派の脳科学者によるたくさんの研究論文を提示し、どの人物も他との比較を交えた正確な研究を通し、自分たちのマシンの効果を実証しようとする熱心さを持ち合わせています。
ですが、現実には科学とは異なるルールで動いていることが多いのです。
真の科学研究は、科学界の研究者たちによって厳しく吟味され、客観的な論考に基づき、他の研究者でも再現可能なものでなければなりません。
そのためほとんどの研究では、たいていの場合、二重盲検法が採用されています。
二重盲検法では、被験者と研究者の両方が、どちらが対照群でどちらが研究中の現象を受けているグループかわからないようにセッティングされ、被験者や研究者の予想が結果に影響することがないような仕組みとなっています。
研究の大半は多数の被験者を用い、研究前と後で様々な検査が行われ、長期におよぶ追跡調査が行われます。
しかしブレイン・マシンの企業家たちは、時間がかかる研究にかけられるような資金や資源
が十分ではないことが多いうえ、マシンに対するテストで二重盲検法を用いることは不可能なのです。
被験者が実際に体感できる装置を装着しているため、それを研究者や被験者に気付かせずに実験する「二重盲検法」が使えないからです。
また、研究対象となっている創造性、直観、知性、落ち着きといった脳の性質は、簡単に計測できるものではないことも立証を難しくしています。
マインド・マシンの企業家の一人であり、「ヘミシンク」と呼ばれる特許取得済みプロセスで、脳をシンクロナイズさせるシステムを開発したロバート・モンローは、こう述べています。
「純粋な科学は、ただ発見・解明することだけを好み、その発見を応用しようとはしません。
私にとっての一番の喜びは、このような発見から価値あるものをつくり出すことです。私は現象が存在することは知っていますが、どこまで作用するものなのかは知りません。真の科学を追究するのは他の人の仕事です。」
「なぜヘミシンクは作用するのだろう? と時には悩むこともありますが、何か効果があるのなら、使ってみることが大事なのです」
ほとんどの場合、マシンを使った被験者に強力な何かが起こったことを、研究でははっきりと示しています。
マシンを使用したユーザーたちも、体験によって驚くような変化が表れたと述べ、マシンの効果を証明しています。
しかし、それらは科学的証拠にはならないのです。
「ユーザーによる主観的な事例証拠」がどれだけ魅力的でまた印象的であっても、さらには膨大な量が備わっていたとしても、客観性と再現性を厳しく求める科学では、有効な証拠にはならないのです。
脳が何らかの形で豊かになれば、かつてない発達が脳細胞や心的能力に起こると深く信じて
いる「純粋な」科学者たちでさえ、脳の発達を促すと称されるマシンが広く使われるようにな
ることには、乗り気ではないのが現実です。
そうした科学者たちは、科学的証拠によって、脳の働きに対するある種の具体的かつ重要な効果が示されることがあっても、必要なのは確固とした科学的事実だと考えています。
これらのマシンの一つでもし何かが起きれば、技術全体が水泡に帰すのではないか?
そうなれば人々は疑いの目で見るようになり、この分野は世の中に受け入れられなくなるかもしれない。
減点を嫌う日本の社会では、こうした心理的な恐れがより高い壁となって立ちはだかっているのです。
2007年
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