ルー・ロウズ Lou Rawls の声が魅力的。
4オクターヴの声域を持つ、コクと深みのあるスムーズでエレガントな声で歌われると、実に渋く、心に染み入ってくる。
ルー・ロウズの経歴で彼の歌声は「砂糖のように甘く、ベルベットのように柔らかく、鋼鉄のように強く、バターのように滑らかい」と表現されている。
だが日本では、あまり知られていない歌手かもしれない。
1933年、シカゴ生まれ。
2006年1月6日に肺ガンのため逝去。
小さい頃から祖母の影響でゴスペルを歌いはじめたようで、高校時代の同級生がサム・クックで、ともにゴスペルグループの歌手として活動するようになったという。
1958年、トラベラーズとサム・クックと一緒に南部をツアーで回っているときに、自動車事故に巻き込まれ、一週間近く昏睡状態となり生死を彷徨う。
回復には一年を要し、この出来事は彼の人生を変える出来事となったようで、以後ゴスペルからソウルやジャズに転向。
1950年代末に活動拠点をロサンゼルスに移し、Pandora's Box Coffee Shop で歌っているところをキャピトルレコードのプロデューサー Nick Venet に認められ、1961年にデビュー。
それまでのルー・ロウズは、一晩のギャラが10ドル+ピザという条件で歌っていたという。
1966年に「恋はつらいね(Love Is a Hurtin' Thing)」のヒットで、グラミー賞の最優秀R&Bボーカル賞を獲得。ライブ
レコーディングアーティストとしての52年間で、75枚以上のアルバム、3つのグラミー賞、13つのグラミー賞ノミネート、1つのプラチナアルバム(All Thing In Time)、5つのゴールドアルバム、ハリウッド殿堂入りのゴールドシングルを獲得。
ゴスペルからブルース、ジャズ、ソウル、ポップスまで、あらゆる分野をこなすことのできる歌手だ。
1962年2月の2回のセッションで録音された Stormy Monday というアルバムでは、彼が選んだLes McCannトリオと共演し、1962年にリリースされた。
Musicians
Lou Rawls - vocals
Les McCann Trio
Les McCann - piano
Leroy Vinnegar - bass
Ron Jefferson - drums
Additional personnel
Nick Venet - producer
Malcolm Addley - remixing
Billy Vera - liner notes
God Bless the Child はA面の2曲目。
'God Bless The Child' - Lou Rawls
Words and music by Billie Holiday and Arthur Herzog Jr.
Them that's got shall get
持つ者は富み
Them that's not shall lose
持たざる者は失う
So the Bible said and it still is news
それは聖書のことば 今も変わらない
Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own
ママやパパが持っていても
神は自分で持つ子に祝福を与える
Yes, the strong gets more
While the weak ones fade
強者は富み栄え
弱い者はすたれてゆく
Empty pockets don't ever make the grade
空の財布じゃうまくゆかない
Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own
ママやパパが持っていても
神は自分で持つ子に祝福を与える
When you got Money, you've got lots of friends
They all Hanging around your door
金さえあればドアの向こうに友達が沢山群がってくる
But when moneys gone All those spending ends
使い果たして一文無しになってごらん
They just don't come around you any more
もう誰も寄りつかない
Rich relations give
a crust of bread and such
裕福な親戚がパンの耳位はくれるだろう
You can help yourself
But you better not take too much
もらえばいいよ・・
だけど欲張らないことだ
Mama may have, Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own
ママやパパが持っていても
神は自分で持つ子に祝福を与える
サビ>アップテンポ
When you got Money, you've got lots of friends
They all Hanging around your door
金さえあればドアの向こうに友達が沢山群がってくる
But when moneys gone All those spending ends
使い果たして一文無しになってごらん
They just don't come around you any more
もう誰も寄りつかない
Rich relations give
a crust of bread and such
裕福な親戚がパンの耳位はくれるだろう
You can help yourself
But you better not take too much
もらえばいいよ・・
だけど欲張らないことだ
Mama may have, woo Papa may have
But God bless the child that's got his own
That's got his own
ママやパパが持っていても
神は自分で持つ子に祝福を与える
God bless the child that's got his own
神は自分で持つ子に祝福を与える
この歌は、ビリー・ホリディとアーサー・ハーツォグJr.の共作とクレジットされている。
だが二人とも「本当は自分が作った!」と言い張って譲らない。
ビリー・ホリデイの母親は何かにつけて口出しするウザい存在だったようで、やがて娘が人気歌手になると、母は「得意な料理の腕を生かしてソウルフードの店を持ちたい」と言い出した。
「お母さんが仕事を始めたら、私も少し自由になれる!」これは渡りに船!
というわけでビリー・ホリデイはセントラル・パーク・ウエスト99丁目に店を借りてやり、ホリディの母さんの店としてオープン。
だが仲間のミュージシャンのたまり場となり、おまけに母は大盤振る舞い。
そのせいで店は赤字続きで、ビリー・ホリデイは自分の稼ぎで穴埋めしていた。
だがホリディが金欠状態になったとき、現金商売の母の店に行き「お金を融通して」と頼むと、母は断固拒否!
大喧嘩に。
私がこれまでどれだけお金を融通してきたのよ、なんて恩知らずな母親なんだ!
と激怒したホリディは家を飛び出して三週間帰らなかったという。
家出しても腹の虫が収まらないそんなときに、ふと思いついたのがこの歌で、ハーツォグJrのところに行き、曲を譜面に起してもらった、というのです。
一方、ハーツォグJr.は、上のホリディの証言に怒り心頭、'90年代に出たビリー・ホリディ伝「Wishing on the Moon」(Donald Clarke著)で、このように語っている。
"奇妙な果実"で人気を得たホリディのための新曲を書こうとしたハーツォグは白人だということもあって、どうも曲が思い浮かばない。
そこで彼は南部ボルティモア育ちのホリディに、南部らしい新曲のアイデアはないかな?その土地の言い回しとか、何でもいいからヒントになる言葉があったら教えてくれないかと訊ねたのだという。
それを受けて彼女がつぶやいた言葉が「God Bless the Child」だったという。
ハーツォグが、言葉の意味を尋ねるとホリディはこう答えた。
「母さんや父さん、兄さんや姉さんたち、身内が持っていてもだめ、神様は自分で持っている子しか祝福しない、という教訓なの。」
と聞いたハーツォグが作ったのがこの曲なのだという。
歌詞とメロディーは全て自分で創作し、音楽パートナーのダニー・メンデルソーンが譜面に仕立てたという。
にもかかわらず、ホリディは自分の名前を作者として入れるよう要求した、というのだ。
ハーツォグは「ビリー・ホリディに創作の力はない」とまで言い切り、憤懣やるかたない様子だったという。
歌詞は聖書の言葉で、「マタイによる福音書-25章29節」を言い換えたものだ。
これは「タラントンのたとえ」といわれている。