脳科学の観点から、キレやすい人が増えている背景には、「前頭前野の未発達」「セロトニンの不足」「血糖値の乱高下」という3つの原因が考えられます。
キレる原因としてまず大きいのは、「(脳の最前部に位置する)前頭前野が未発達であること」と語るのは聖路加国際病院精神腫瘍科部長の保坂隆氏。
同じく脳科学コメンテーターの黒川伊保子氏も、「前頭前野が不活性であること、最悪は未発達の状態にある」のが原因だと指摘されています。
2つ目の原因は、脳の中にあるセロトニンという神経伝達物質の欠乏です。
これは前頭前野の機能をスムーズに動かすために必要な物質なのですが、「これが現代人には不足しているため、キレる人が増える理由になっている」と東邦大学名誉教授の有田秀穂氏は指摘されています。
「普通のサラリーマンが暴行で検挙されるような事件が、増えていますが、これは社会のIT化が進んだ時期とぴったり重なります」と有田氏は分析されている。
彼らは夜遅くまでパソコンやスマホをいじり、翌日の出社後も1日中、ずっとパソコンの前に座って仕事をするケースは少なくないはずです。
昼もパソコンでインターネットをしながら1人でコンビニ弁当を食べると言うパターンを繰り返していると、夕方になると疲労とストレスでセロトニンの分泌がほとんどなくなってしまうのです。
こうした状態ので帰途につくと、たとえば通りすがりの人とちょっと肩がぶつかったくらいで怒りが抑えられなくなり、暴力沙汰になるというわけです。
人がキレる原因には、血糖値も関係していますが、これが3つ目の原因になります。
炭水化物や砂糖を摂取するという、長期間のよくない食習慣のせいで、血糖値は乱高下しやすくなります。
血糖値が80を下回ると、脳は不安にななり、血糖値が40になると意識混濁、それが数時間続けば脳死となるのです。
それではまずいため体は血糖値を上げるホルモンを分泌します。
その中には人を興奮させるホルモンであるアドレナリンも含まれています。
そのため興奮して攻撃的になりやすくなります。
通常、血糖値は空腹時だと80程度をキープするように制御されています。
それを下回ってしまう低血糖症の人は不安感から攻撃したくなり、キレやすくなるのです。
対策:糖質制限
うつ病の原因は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足であるといわれています。
セロトニンは睡眠や精神安定にかかわる物質で、不足すると睡眠障害や不安感などマイナスの精神症状に陥りやすくなります。
実際、うつ病の治療薬として最も多く使用されるSSRIという化学薬品は、「選択的セロトニン再取込阻害薬」といい、セロトニンの欠乏を防いで神経の伝達機能をよくする効果があります。
セロトニンは、体内で生成できず、食事からしかとることができない必須アミノ酸「トリプトファン」からつくられます。
イェール大学(アメリカ・コネティカット州)の研究では、血中のトリプトファン濃度が減少するとうつ症状の傾向が強くなり、トリプトファンを投与するとうつ症状が改善される、という報告があります。
セロトニンは神経伝達物質で、ある神経から別の神経へと情報を伝達する働きをしている化学物質です。
神経伝達物質は脳内の強力な化学物質で、その存在の有無は私たちの気分を大きく左右します。
ニューロンが適切に放出されているか、もしくは受容されているかどうかを感知するのが、気分のコントロールに関わる問題解決に繋がる最初のステップとなります。
脳内にある約4千万もの細胞が、セロトニンから直接的、間接的な影響を受けているのです。
これは気分、欲求、性的機能、食欲、睡眠、記憶、学習、体温調整、社会的行動なども含まれます。
またこの神経伝達物質は、心臓血管系、筋肉、あらゆる内分泌系の構成要素、その他あらゆる部分にも働きかけています。
セロトニン欠乏の症状は、繰り返される怒りの感情、痛みに敏感になる、炭水化物を異様に欲し食べ過ぎる、便秘、消化障害などです。
お菓子やチョコレート、フルーツキャンディ、フライドポテトなど甘いものやでんぷんを多く含む食べ物は、セロトニン値に大きな影響を与えます。
そのためセロトニン値が低くなると炭水化物を多く含んだものを異常に欲するようになるのです。
これらは一時的にセロトニン値を上げ気分を向上させますが、その後すぐにその数値が急激に下がってしまうのです。
この急激なセロトニンの減少は眠気、怒り、不安感、鬱を引き起こします。
セロトニンはメラトニン生成にも深く関わっています。
セロトニンの値が低いとメラトニンの値もまた低くなります。
こうなると、体が自然な睡眠のリズムを維持する事が非常に難しくなります。
特に眠りに落ちる、そして途中で起きることなくぐっすり眠るという事ができなくなってしまうのです。
セロトニンの分泌には、トリプトファンを含む食品を積極的に摂取することです。
トリプトファンを含む食品としては、玄米、豆類、アブラナ科の野菜、卵、乳製品、肉類、ブラックチョコレート、バナナ、クルミなど多くが挙げられます。
アブラナ科の野菜は、具体的にはブロッコリーやカリフラワー、芽キャベツ、ケール、大根、かぶ、キャベツ、コールラビなどがあります。
トリプトファンヒドラキシラーゼの補因子は、ビタミンB9、B3、鉄分、カルシウムです。
ビタミンB9は葉酸のことで、ほうれん草、アスパラガス、枝豆、春菊などの野菜のほか、果物、レバー、豆類に多く含まれます。
またビタミンB3はナイアシンとも呼ばれるもので、魚介類や肉によく含まれています。
セロトニン値が低くなったときの対策
薬に頼らず自然療法でセロトニンの値を上げる事も大事です。
体を動かすため好きで楽しめるエクササイズを毎日続けてください。
腹式呼吸によって、腸内の筋肉も同様に動きます。
その時、腸内が刺激されて腸内セロトニンの分泌が良くなり、それに伴い脳内のセロトニンの分泌が良くなるのです。
トリプトファンを含む、タンパク質が豊富なものを食べましょう。
野菜、ドライフルーツ、豆類、全粒粉など炭水化物が豊富なものも必要です。
脳内のトリプトファンの分解に糖類が必要だからです。
マーガリンやショートニングなどの飽和脂肪酸や砂糖を摂らないようにしましょう。
脳が適切に機能するために、オメガ3が豊富な食材を食べましょう。
カフェインの摂りすぎに注意してください。
十分な睡眠をとりましょう。
ビタミンB群、特にB6を多く含む食材を摂りましょう。
B6は、脳内のセロトニンの分泌や機能に重要なものです。
外に出て太陽の光を浴びましょう。
太陽の光が目の中の網膜を刺激し、そのまま脳へ伝わりセロトニンの分泌を促します。
起床後の太陽の光で、脳は「起きた」と認識し、身体を覚醒させるためにセロトニンを分泌させ活発に動けるようになります。
瞑想やマインドフルネスをしましょう。
このようにセロトニンは私たちの健康にとても重要な役割を果たしています。
セロトニンの不足は感情や睡眠に大きな影響を与えます。
悲しくて泣くことだけではなく「笑いすぎて泣く」 「怒りすぎて泣く」 「嬉しくて泣く」という状態で、セロトニンを分泌させることができます。
自分が好きなことをする時間、つまり趣味などに使う時間を持ったり、またはリラックスを目的とした時間を作ることは、セロトニンを増やすのに効果的な方法です。
自分の好きなことをすると、脳が幸福感や満足感を得て、セロトニンの分泌を促します。
家族、恋人、友達、ペットや動物などと触れ合うと、セロトニンの分泌が活発になります。
好きな香りのリラックス作用で、セロトニンが分泌され、休息の神経と言われる「副交感神経」が優位になります。
セロトニンの活性化を促す「一定のリズムを刻む運動」を、日常的に行いましょう。
リズム運動には、腹式呼吸やウォーキング、ジョギング、などの他に、「よく噛む」という行為も含まれます。
こうして考えると、毎日の生活習慣の重要性がよくお分かりになるはずです。
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