今の日本では、自分はバランスの良い食事をしている、と思っていらっしゃる方が大半を占めています。
ですが、栄養失調が諸悪の根源?!で書きましたが、実は低タンパクな食事だった、というケースが9割以上にもなるのです。
こうした現実から言えることは、こうした食事を毎日続けていると、低タンパク血症に陥るのです。
血清タンパクが、正常値よりかなり低いのが、この病気の特徴です。
低タンパク血症では、必然的に血液が水っぼくなります。
水っぽい血液の水分は血管から周囲の組織に滲み出してゆきます。
その結果、組織が水膨れします。
すなわち、浮腫(むくみ)ができるのです。
ですが、単純な低タンパク血症は、アミノ酸の静脈注射で、いともたやすく回復させることができます。
つまり、血液中には、適当な濃度のアミノ酸とタンパク質があればいいのです。
タンパク質を飲み始めると、体全体のむくみがなくなるため、引き締まり小顔になってゆきます。
タンパク質の原料は、食物によつて体内に取り込まれます。
そして小腸内でアミノ酸にまで分解されてから血中に入ってゆきます。
タンパク食品は、肉にしても、魚にしても、おいしいものがほとんどです。
これは、タンパク質が第一義的に人体に必要な物質であるための当然の摂理なのでしょう。
ありがたいことです。
アミノ酸の一つであるグルタミン酸が、化学調味料の王様であることは、多くの方がご存じです。
市販の醤油の4分の1は「化学醤油」と呼ばれるものです。
脱脂大豆を塩酸で処理し、そのタンパク質をアミノ酸にまで分解したものを原料としています。
グルタミン酸、グリシン、アラニンなどが、「うま味」を醸し出しているのです。
このような食品が口に入った場合、消化の手続きを経ることなく、そのアミノ酸は血中に取り込まれるのです。
我々成人の場合、すでに体はでき上がっているので、タンパク質が体の基だといっても、今さらタンパク質を食べる必要はないではないか、というような疑間を持たれる方もいらっしゃるはずです。
育ち盛りの子どもや妊婦と比べると、一般成人のタンパク質必要量は少なくて良いかもしれません。
しかし、タンパク質の補給を怠ると、さまざまな障害が起こるのです。
ソビエトのノビコフは、生命をロウソクの炎に例えています。
ここにロウソクの炎があったとします。
炎の中では炭化水素のガスが燃え、炭素の微粒子が熱せられて光を放っています。
そして、炭化水素は酸化して二酸化炭素と水蒸気とになり、炭素の微粒子と共に上昇気流に運ばれて炎の頂点から外に抜けてゆきます。
これが連続的に起こるために、炎の内容は刻々と更新されるのです。
炎の形は不変であっても、常に新しいガスが燃え、古いものは炎と分かれてゆくのです。
ノビコフは、これこそが、生命の実相であると述べています。
我々人間の姿は、そう変化するものではありません。
ですが、その内容は常に更新されているのです。
ロウソクの炎と同じです。
もし、更新されない体があったなら、それは死体です。
生きているということは、常に新しくなる、ということなのです。
良質タンパク
栄養素としてタンパク質を考える場合、良質であるかどうかが問題になります。
良質糖質、良質脂質、などという言葉がないのに、「良質タンパク」という言葉があるのは、なぜでしょうか。
ある人は、動物タンパクより植物タンパクの方が優れている、などと主張しています。
では良質タンパクと植物タンパク質とは、同じ意味なのでしょうか?
すでに、タンパク質というものの正体は知られています。
それは「ポリペプチド」と呼ばれる、アミノ酸を次々とつないだ鎖状分子です。
その鎖状分子が、良質であったり、良質でなかったりとは、どういうことなのでしょうか。
ラットをトウモロコシだけで生活させると、まもなく死んでしまいます。
この場合、ラットにとつて、トウモロコシのタンパク質は良質ではなかったのです。
問題はそのタンパク質を構成するアミノ酸にあったのです。
タンパク質を作るアミノ酸は20種あります。
アミノ酸は、グリシン、ロイシン、アラニン、チロシン、グルタミン酸などがありますが、トウモロコシのタンパク質の場合、リジンやトリプトフアンが少ないのです。
これがラットにとって致命的だったのです。
こうしたことは我々人間でも当然起こります。
白米のタンパク質はどれくらい?
このような問題についての実験を、初めて試みたのはアメリカのトーマスで、1909年のことでした。
彼は実験台になった人を三群に分け、タンパク源として、第一群にはジャガイモ、第二群には小麦、第二群には牛乳を与えたのです。
そして、それらのタンパク質の何%が人体で利用されたかを測定するために、与えた総タンパク量と、尿中に排出された総窒素量を比較しました。
人間の要求するタンパク質の最低量を供給するために与えなければならない量は、3種類のタンパク源で、大きな開きがあったのです。
そこで彼は、あるタンパク質の一定量が、動物のタンパク質に対する要求の何%を満たすか、という数字を問題にせざるを得なくなったのです。
この数字を、トーマスは「プロテインスコア」と名付けたのです。
これは、タンパク価あるいはタンパク質の生物価、と訳されていますが、タンパク利用率、あるいはタンパク点数の方が、ピッタリくるような気がします。
プロテインスコアを実際に算出する時には、この数値を低く抑えているアミノ酸に着目するのがポイントです。
そして、それのパーセンテージを、そのアミノ酸の理想含有量を示すパーセンテージで割って、100倍すれば良いのです。
このようなアミノ酸を一第一制限アミノ酸」と呼びます。
大切なのは配合なのです。
プロテインスコアでは、植物性食品は動物性食品に劣ることがよくわかります。
プロテインスコア100は卵だけなのです。
卵を毎日食べる習慣のない人は、ぜひ卵を!
半熟が最高です。
何と言っても卵は、素晴らしい完全食品なのです。
プロテインスコアが低いタンパク質に依存すると、生命の炎は弱々しいものとなってしまいます。
では、プロテインスコアの低いタンパク質は無価値なのでしょうか?
米食にせよパン食にせよ、副食物と一緒に食べれば、そのタンパク質の利用率は上昇します。
緊急の場合はスコアの高さに関係なく、何でも食べなければなりませんからね。
ただ血糖値の上昇で、インシュリンがドバッと出るため、他の問題が起こります。
ですが、長くなるので、ここでは血糖値の上昇についての問題は取り上げません。
牛乳のプロテインスコアは85です。
これは、硫黄を含む含硫アミノ酸が不足のためで、これを十分に添加すれば、プロテインスコアは100になるのです。
このようにいくつかのタンパク質を適当な比で混ぜることによって、プロテインスコアの極めて高い食品を作ることができるのです。
これを三石先生は「配合タンパク」と呼んでいます。
ただし、配合タンパクなどという言葉は、辞書にありません。
三石先生の造語だからです。
実は、このような配合は、自然にも行われています。
牛乳のタンパク質は、カゼイン、アルブミン、グロブリンの3種の混合物で、それぞれのプロテインスコアは決して高くはありません。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種あるのですが、2種に大別されます。
「必須アミノ酸」もしくは「不可欠アミノ酸」と、「可欠アミノ酸」との2種です。
前者はその名の通り、欠くことができず、必須であるのに反し、後者は欠くことができるのです。
必須アミノ酸は8種あって、残りの12種が可欠アミノ酸です。
人体がタンパク質を作る時、必須アミノ酸も可欠アミノ酸も含めて20種のものが必要になります。
それなのに、なぜ欠くことのできるアミノ酸があるかというと、それは体内で合成できるからです。
良質タンパク、非良質タンパクは目安となるプロテインスコアが、必須アミノ酸の含有量だけで決まるのです。
我々がタンパク食品を問題にする場合、タンパク質の総量、すなわちアミノ酸の総量に着目すると同時に、それぞれの必須アミノ酸の含有率、つまりプロテインスコアにも着目しなければなりません。
トウモロコシには、31アセチルピリジン」という名の化学物質が含まれています。
それはニコチン酸を壊す働きがあるので、「アンチビタミン」といわれています。
トウモロコシだけを与えるとラットが死ぬのは、ニコチン酸が破壊されるために、ただでさえ少ししかないトリプトフアンが回され、結局、プロテインスコアがゼロに近くなるからなのです。
タンパク質の半交代期
ここからは異化と同化との具体的な数字をあげての解説です。
標準的な体格の成人の場合、同化によって一日に固定されるタンパク質の量は、筋肉と皮膚とで32グラム、肝臓で23グラム、血清で22グラム、 ヘモグロビンで8グラムといわれています。
これだけでも合計すると85グラムになるのですが、骨や他の内臓でも相当な量があるはずで、全部では250グラムにもなると推定されています。
この数字を見ると、タンパク質の必要量は意外に多いのですが、現実問題となると、少し話が違ってきます。
というのは、異化で遊離したアミノ酸の80%は、分解されずにそのまま再利用されるからです。
プロテインスコアの低い食事を摂ると、摂取した窒素の量よりも、尿や大便に出ていく窒素の量の方が多くなります。
異化が同化より優勢だからです。
放射性窒素で標識を付けたアミノ酸を持つタンパク質を摂取させる実験で、すべてのアミノ酸は例外なしに体タンパクになることがわかっています。
仮に、摂取したタンパク質にリジンがゼロならば、そこの組織を壊してリジンを取り出し、そのリジンを使って、新しく体タンパクを合成するのです。
プロテインスコアの低いタンパク質は、異化を促進するのです。
結局そこで無駄な代謝が生まれます。
全身的に見れば、1日に0.3%が異化、同化の対象になっています。
この数字を元に計算すると約300日で全身のタンパク質の半分が新しくなる、ということになります。
組織毎の交代の速度は、現在では放射性窒素の餌による動物実験で、かなりよく調べられています。
どの臓器についても、交代の速い組織と遅い組織とがあるので、一律の数字はあげられません。
ですがタンパク質の半分が新しくなるに要する時間が意外に短いことにお気づきでしょうか?
胃や腸などの消化管の内壁などはもっと短く、一日程度です。
プロテインドリンクなどで、数宇時間おきにタンパク質を補給することの重要性が、おわかりになるはずです。
一方、赤血球のように127日というように寿命の決まった細胞もあります。
酸素カプセルで良質の酸素を毛細血管の隅々にまで届けることができると、体調は驚くほど良くなり、自然治癒力が向上します。
タンパク質の半交代期
肝臓 10-140日
腎臓 11-180日
筋肉 16-180日
骨 16-240日
つまり、良質なタンパク質を毎日摂取することで、カラダの細胞を良質で強靱に仕立て上げることができるのです。
関節痛やギックリ腰を防ぐタンパク質
関節の痛みは、自己免疫病に属する慢性関節リューマチで、溶連菌の毒素によっても起こるのですが、それらと無関係にも起こります。
寒くなると膝が痛む、というような症状は、名前の付くほどの病気によるのではありません。
こういう関節痛は、高タンパク食で治りますし、ビタミンEでも治るのです。
ビタミンEは、主として血行改善によって治療効果を上げるのです。
関節痛がある場合、何はともあれタンパク質とビタミンCとが必要になります。
痛みはストレッサーになるからです。
痛みを取るには、バイオマットによる温熱療法は非常に効果があります。
そのあとCS60で、腰のカナメに一撃を加えると、速攻で完治・・というケースに遭遇し、驚いたことがあります。
基本的に関節痛とタンパク質との関係は、とても重要です。
タンパク質が足りないと、骨層板の材料が不足するので、弱い骨層板しか作れません。
さらに弱い骨は、折れやすいばかりでなく、痛みを発しやすいのです。
骨の神経は守られていますが、骨層板がしっかりしていなければ、神経も痛めつけられるのです。
骨の仲間に軟骨があります。
軟骨の組織は硬骨とは違いますが、ごく大ざっぱに見れば、硬骨からカルシウムを抜いたようなものです。
軟骨は、長骨の骨端にはカバーとして、椎骨と椎骨との間にはショツクの吸収体として存在します。
後者は椎間板と呼ばれています。
これは、椎間板ヘルニアという病気と結び付いてよく知られている軟骨です。
ヘルニアとは、はみ出した部分が、元に戻らなくなった状態を指します。
椎間板が、椎骨の間からはみ出して、そのままになれば、椎間板ヘルニアとなるわけです。
この突出部が脊髄神経を圧迫すれば激痛が走ります。
腰痛には、椎間板の突出によるものが少なくないのです。
椎間板がヘルニア状態になれば、痛みは続きます。
そのため痛みが持続しない場合は、完全なヘルニアを起こしていないということになります。
椎間板は、まだ弾性を失わず、突出したり、引っ込んだりしている状態なのです。
このような場合でも軟骨を治す方法はあるのです。
それは、タンパク質による強化と、ビタミンCの服用なのです。
そして真打ちはCS60でしょう。
医師はこれらを治す方法として、牽引か手術か、どちらかを選択します。
このように手術を要する椎間板ヘルニアでも、ビタミンCで治るのです。
ですが治療後にビタミンCの摂取を止めれば再発すると、ポーリング博士は述べています。
そういうときはCS60ですね。
参考資料
三石巌 著・高タンパク健康法から一部引用しています。