今の栄養学に関連する分野において、間違って流布されている6つの神話があります。
カロリー神話
血糖値とカロリーには、何の関係もありません。
それなのに、カロリー制限という、カロリー神話が大手を振って堂々と主張されています。
低カロリーに体力が落ち、生活に支障が出るうえ、低カロリーなものには炭水化物が多いのが現実です。
カロリーではなく、糖質量に注目して食事の管理をすれば、血糖値を管理できるのです。
バランス神話
バランスの良い食事を摂取していると自負している人は、炭水化物を60%も摂取しているのが実態です。
そして肝心のタンパク質、脂肪は、それぞれ20%しか摂取していないのです。
こうした栄養比率は、何ら根拠がないのにです。
この比率は、金科玉条となってすべてを拘束しています。
コレステロール神話
必須栄養素を完全に満たすには、肉や卵やチーズは、最適な食品です。
ですが、肉や脂肪は、今まで「コレステロールが上がるから食べ過ぎないように」と教えられてきました。
厚生労働省は2015年4月改訂の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、食事からのコレステロールの摂取抑制目標値を撤廃)しています。
ですが、ほとんどの医師や栄養士は、いまだこれを理解していません。
脂肪悪玉説(肉・動物性食品悪玉説)
炭水化物善玉説(野菜・植物性食品善玉説)
肥満は脂肪が原因だと、ほとんどの人がそう信じています。
これこそが大きな間違いなのです。
肥満は糖質過剰摂取で起こるのです。
ケトン体危険説
ケトン体は危険な物質であるというのは、20年前の知識で、もはや前世紀の遺物です。
今やケトン体は胎児、新生児のエネルギー源であって、健康と、アンチエイジングのエネルギー源なのです。
これらの大きな間違いが相互に補完しあい、炭水化物・糖質が中心の低カロリー食が推進されてきたのです。
今やますます、肥満、糖尿病、成人病、小児糖尿病が増え、それを膨大な薬剤で治療しようという馬鹿げた医療が進行中なのです。
農耕文化が始まって以後の食生活
これまでの定説では、農耕が始まったのは、約1万年から1万4000年前だと言われています。
紀元前8000年.7000年ごろに、現在の北シリア、ヨルダン川のあたりにおいて組織的農耕が始まったとされています。
そして組織的農耕が、さらに世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。
ですからそれ以前のヒト属はみな、狩猟・採集を中心に生活していたのです。
農耕が始まる前の700万年間は、人類はみな糖質制限食でした。
ヒトは進化に要した時間の大部分で、狩猟・採集生活をしていたことになります。
人体には本来、穀物に依存して生きるような遺伝的システムは存在しないのです。
血糖値の上下とインスリンの追加分泌が始まる
農耕文化が定着し、小麦や米のデンプン(糖質)を摂取するようになると、血糖値が急激に上昇するようになります。
糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素の中で、血糖値に直接影響を与えて上昇させるのは糖質だけだからです。
人類は、狩猟・採集民から農耕民になったとき、単位面積あたりで養える人口が50倍60倍へと大幅に増えました。
同時に、穀物を食べることによつて血糖値の上昇や、インスリンの追加分泌も引き起こすことになりました。
こうして人類は膵臓に大きな負荷を与え始めることになったのです。
農耕開始以後の1万年間は、人類の膵臓のβ細胞は、それ以前に比べて大きな負荷を負い、働き続けなくてはならなくなりました。
血糖値の変動幅は、狩猟・採集民だったころに比ベると、少なくとも2倍以上にはなっていたはずです。
精製炭水化物の登場以後の食生活
18世紀には欧米で、小麦の精製技術が発明されます。
日本では、江戸中期には白米を食べる習慣が定着し、精米技術も向上します。
すなわち、ここ200年から300年間で、世界各地で精製された炭水化物が摂取できるようになったのです。
現在では世界中の多くの国の主食が、白いパンか白米などの精製された穀物となっています。
精製された炭水化物は、未精製のものに比べて、さらに急峻に血糖値を上昇させます。
これらを食べると、仮に空腹時血糖値が100として、食後血糖値は1 60から170まで上昇します。
血糖値上昇の幅は60から70にもなるのです。
これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、700万年の人類史上、類を見ないものでした。
追加分泌されるインスリンも、未精製の穀物を摂取したときに比べて、さらに大量に分泌せぎるをえません。
とくに近年のインスタント食品(カップ麺など)や、 コーラなどの清涼飲料水(単に砂糖が大量に入っただけの飲み物)はインスリンの過剰分泌を生じさせています。
インスリンを大量に分泌し続けて50年が経過し、膵臓が疲弊すれば、インスリン分泌能が低下し、糖尿病になります。
インスリン分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満となります。
これがメタボリックシンドロームです。
しかも糖質は、中毒性があり、脳がおかされてしまい、やめることができなくなってゆきます。
江部康二医師によれば、700万年間ほぼ一定に保たれていた人類の血糖値変動幅は、農耕開始後に約2倍となり、精製炭水化物摂取が始まったここ200年は、その幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せぎるをえなくなったと言います。
お寿司屋さんやパスタの料理人、ラーメン店店主などに重症糖尿病が多いのも、職業柄避けられないからなのです。
しかもこうした激しい労働を強いられる方たちは、「低カロリー食」を要求されると、バテてしまって仕事になりません。
そのため糖尿病治療からは脱落することになり、一層重症化し、悲劇を迎えてしまうのです。
ケトン体は、ヒトが糖質を摂取しなかつたときに、脂肪を分解して栄養にする代謝に変わって、そのときに出てくるものです。
ケトン体は小児のてんかんの治療に始まり、おそらくは多くの小児の食欲不振やアトピーなどの治療にも関与し、また認知症、アルツハイマー病、歯周病、低血糖症やアンチエイジングの治療にも役立ち、がん治療にも応用され始めています。
砂糖や炭水化物などのごはん、パン、麺類、お菓子やケーキ、タピオカなどは、中毒性が高く、止めることができない危険な食べ物です。
これからの時代はブドウ糖ではなくケトン体をエネルギーに変えることが、健康な毎日を過ごすための秘訣なのです。
こうした考え方は、増え続ける多くの病気に対する、大きな武器になるはずです。
参考文献
宗田 哲男 著 ケトン体が人類を救う から一部引用しています。