ストレスという言葉は、本来物理学のものだ。
ゴム紐は引っ張れば伸びるが、同時に伸びを元に戻そうとする力が働く。
ストレスとはその力のことなのだが、「応力」でもあるわけだが、物体の内部に生じる力を内力と呼ぶ。
物体の内部に応力という名の内力が生じるのは、その物体に外から外力が働いた結果だ。
その外力を物理学では歪力と呼び、これはストレツサーと命名されている。
ストレツサーが働くとストレスが発生する、というのがストレス学説の考え方だ。
我々のからだに外から加えられるストレツサーは非常に多く、 一つだけではない。
餓えや渇き、高温や低温、心労や筋肉疲労、医薬・農薬・食品添加物などの異常化学物質、活性酸素、放射線照射等があり、それらがストレッサーとして働くのだ。
この多様なストレッサーは、その種類を問わず、体内に同一の現象を引き起こす。
それは、副腎皮質の活動だ。
これこそがストレスの正体ということになるわけだ。
副腎皮質は抗ストレスホルモンとして、コルチゾン、コルチゾール、ヒドロキンコルチゾールなどを分泌する。
そして、ストレッサーのつくり出すさまざまな障害を食いとめようとする。
そのために副腎皮質は肥大して、ホルモンの増産を始めることになる。
これらのホルモンは、分類上ステロイドホルモンに属し、医薬としてステロイド剤として使われる。
これが治療効果を現わす病気は200種を超えるといわれている。
ステロイド剤の投与が必要になるということは、ステロイドホルモンの自家生産が不足していることを意味する。
したがつて、ストレスによる病気の種類は200以上ある、といっていいだろう。
こうした病気は、ストレス病と総称されている。
現代社会で我々は、ストレツサーの海にいるようなものだ。
サラリーマンに例をとれば、まず職場に出勤するためには一時間ほど満員電車に乗らなければならない。
職場では、ギクシャクした人間関係の中に身を置きながら少なくとも8時間は働かなければならない。
そしてくたびれ果てた状態で、また満員電車に乗り込み家へ帰ることになる。
ストレスが重なれば、抗ストレスホルモンの生成と分解とがレベルアップされる。
生成量が不足になれば、ステロイド剤が適用されるような病気に襲われることになる。
それに、ステロイドホルモンが生成されるときも分解されるときも、酸化力の異常に強くなった活性酸素が発生する。
それの傷害作用による病気によって、体質の弱点が狙われることになる。
ストレッサーに強いからだをつくる方法としては、まず適当な運動を行うことだ。
基本は、小さな負荷から始めることだ。
食事はストレスを解消する
犬にはドッグフードがあり、猫にはキャットフードがあるように、人間の食べる食べ物は「ヒトフード」と呼ばれる。
猫はドッグフードを与えられると失明することがある。
タウリンは犬にとっては可欠アミノ酸だが、猫にとっては不可欠アミノ酸になるためだ。
犬はシステインから楽にタウリンを作ることができるが、猫だとそれがうまくゆかないのだ。
この点で人は犬より、猫に近いと言っていいだろう。
われわれの遺伝子には、システインからタウリンをつくる化学反応を受け持つ暗号文があり、この反応を取り持つ酵素という名のタンパク質のアミノ酸配列を、親から受け継いでいる。
我々の体がタウリンを要求すれば、この暗号文が解読され、システインをタウリンに変える反応が進行する。
だが、その反応の速度が遅いために、生産量が不足がちになるわけだ。
タウリンは、日の視細胞に含まれていて視覚に関係している。
さらにまた神経伝達に関係しているために、脳の機能を左右する。
だから、われわれは十分なタウリンの量を確保しなければならない。
だから、タウリンを不可欠アミノ酸の仲間に入れて、食品の形でこれを摂ろうとするのだ。
体が要求する全アミノ酸を過不足のないように揃えたものがタンパク質であり、それにプラスアルファとしてビタミン類を加えた食品が「ヒトフード」ということになる。
つまり「ヒトフード」とは、アミノ酸群プラス水溶性ビタミン群ということになるわけだ。
ストレツサーが強すぎて、自前の抗ストレスホルモンではどうにもならないと、ストレス病が始まる。
糖質を摂取して血糖値が高くなると、自前のインシュリンではどうにもならなくなり、そこから糖尿病が始まるのだ。
ストレッサーの海にいる現代人は、ある程度ストレッサーに強いからだを持っていると圧倒的に有利になる。
時間にプラスの価値を与えることができなくなれば、幸福に生きることができなくなるからだ。
ストレツサーが強ければ強いほど、毎日の生活に、高価値を与えることが難しくなる。
物事を気にし過ぎると、その物事が精神的ストレッサーとして、自らを攻撃することになる。
だから物事を、あまり気にしない人はストレスを受けにくいと言っていいだろう。
物事を気にする傾向のある人は、細かいことを気にしないようにすることで、ストレスから解放される。
からだには健康になろうとする力が働いている
石などが自分に向かって飛んでくれば、まぶたは咄嵯に閉じてくれる。
ストレツサーがあれば、それによる被害を大きくしないために抗ストレスホルモンがつくられる。
ウイルスが侵入すれば、それに対抗するためにインターフェコンが分泌される。
このようなフイードバックの過程は人体に無限に存在している。
米を食べればデンプン消化酵素がつくられる。
尿がたまれば尿意を催す。
物を考えようとすれば脳に電流が流れる。
どれもがフイードバックの過程として起こる現象だ。
だが、これらの反応は、エネルギーや物質が必要になるわけだ。
だがタンパク質が不足すると、こうしたフィードバックがうまく働かず、トラブルの元になるわけだ。
病院でベッドに寝たきりの生活を続けていると、足が痩せてくる。
足の筋肉は歩行のためのものなので、歩かない足に筋肉は不要になるからだ。
筋肉にも栄養の補給が必要になるが、使わない筋肉のために栄養物質を配給するのは無駄というものだ。
そう考えると、寝たきりの足が痩せて行くのは、生体の合目的性にかなった現象なのだ。
だが病院から退院して歩着始めると、足の筋肉は元のように太くはずだ。
アイソメトリックスで筋肉の衰えを防ぐ
筋肉を鍛えるという発想があるが、これの正体は何なのだろうか。
筋肉は筋細胞、つまり筋肉の細胞の東で構成され、筋細の中には筋原繊維という細い束が並んでいる。
筋原繊維のなかにはフィラメントという細い糸のようなものが並んでいる。
足の筋肉を使わないでいると細くなるのは、フィラメントの数が減るからだ。
フィラメントの数を増やす方法は二つある。
ひとつはアイソメトリックス、もう一つはストレッチという方法だ。
アイソメトリックスとは、目的の筋肉が全力で収縮した状態を六秒間続けるという方法。
これを数回くり返す。
筆者の場合L字懸垂やスクワットを導入しているが、CS60の効果を高める方法でもあるのだ。
アイソメトリックスを繰り返すとフィラメントの一部が壊れてしまう。
筋肉が収縮するときフィラメントの滑りこみが発生する。
その筋肉の最高の力が生じる場合には、全部のフィラメントが力を出す仕組みだ。
また、最高の力の三分の一の力が生じる場合には、半数のフイラメントが力を出す。
そして、このとき休んでいたフイラメントは五秒ほど休んで、働いたフィラメントと交代する。
こうしたメカニズムの場合、筋肉が最高の力の半分を要求された場合、いつも半分は休んでいるからこそ力の持続ができるわけだ。
だが半分以上の力が要求された場合、交代要員が不足するため、頑張り続けなければならないフィラメントがあり、これが無理となって、壊れてしまう。
80キロの物を両手で持ち上げられる人は、半分の40キロの物を持ち上げるとき、フイラメントは半数交代で体むため、無理は起きない。
ところが、50キロに挑戦すると半数交代ができないため、フィラメントの一部が壊れることになる。
そして生体は、フィラメントの数を増やして要求に応えようとする。
その結果、筋肉は太くなり50キロの負荷に耐えられるようになるというわけだ。
この方法は、アイソメトリックスと呼ばれている。
これは、ドイツのマックスープランク研究所(プランクはドイツの理論物理学者)の業績の一つとして知られている。
参考文献